北原みのりのレビュー一覧
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『なぜ、男たちは彼女の『毒牙』に次々とかかっていったのか?―』本書は「稀代の婚活詐欺師」「平成の毒婦」と呼ばれた木嶋被告の100日間にも及ぶ裁判の傍聴記録を筆者からの『女性からの目線』で綴った物です。
彼女の事件については朝や夜のニュース番組で断片的に少し知るくらいでありました。裁判のイラストでの木嶋佳苗の着ている服ですとか彼女の赤裸々なまでの『ヰタ・セクスアリス』についてですとか、『男性からお金をもらうのが、当たり前だと思っていました』などの発言を聞くくらいで、特に関心は払っていなかったのが正直なところでございました。
しかし、こうしてまとめられたものを読むと事件の裏にある男女の深い『業』といいますかなんと言うのか…。ノンフィクション作家の佐野眞一氏は『名前以外は全てがウソ』と切り捨てつつも『東電OLを超える存在』とうなっていた理由がなんとなく判るような気がしました。
事件のあらましは肉体と結婚をちらつかせて男たちから1億円以上もだまし取り、3人の男を練炭で殺害したとして死刑判決を受けた木嶋佳苗被告。本書は彼女の100日間の裁判の様子を傍聴した記録です。
「稀代の婚活詐欺師」「平成の毒婦」と呼ばれた木嶋被告とは、どんな人物なのか。それを同じ女性からの視点を軸として裁判の様子と彼女の故郷である北海道別海市への取材を重ねた上でかかれており、すらすと読めはするのですが、男女問わず誰かもが思っているであろう疑問『決して美人とはいえない容姿で、何人もの男を手玉に取れた理由』は結局わからずじまいでありました。
しかし、彼女に『籠絡』された男たちには同じ男として大いにシンパシーを感じつつも、まるで蟷螂の交尾よろしく『がんばって』いるオスを頭から食い殺すがごとく、自分の性をはじめとして料理のスキルからなにから使える武器は全て使い、『自分を大切にすることとはカネを出すことだ!』といわんばかりにキャッチセールスのクロージングのように自分と交際を迫る(お金を引き出す)手練手管の数々には、正直言って度肝を抜かれました。
さらに、北海道別海市に飛んで木嶋香苗被告家族及び18歳までの生育暦になると、『保守的で排他的で閉鎖的な環境』からなにが何でも抜け出したいという叫びにも似た欲求と家族や周囲との不協和音。そして早熟な彼女の『性』に関するうわさ…。
心底彼女は生まれ故郷が嫌いだったんだなと。そこから抜け出して二度とそこへ戻らないために自分の『性』を商品化して「デイ・トリッパー」よろしく男から男へ…。というなりふり構わない人生へと突入したのではなかろうか…。
彼女がとった手段に関して決して同調できませんが、おそらくはこういうことなんだろうなというのが現段階の彼女に対する『思い』です。
そして、驚いたのが『東電OL』のときもそうだったように彼女の生き方に『共感』を覚える女性が一定数存在してこと。これにはしばらくの間腕組みをして考え込まざるをえませんでした。本書の最後の方で、フェミニストで有名な上野千鶴子女史が彼女の事件を評して
『援交世代から思想が生まれると思っていた。生んだのは木嶋香苗だったのね』
とおっしゃっていたのがとても印象に残っております。
彼女の起こした事件は今後も繰り返し扱われると思いますが、彼女への理解は別として、この本にはぜひとも一度は資料としても目を通す価値はあるかと思われます。
※追記
本書は2017年9月13日、講談社より『佐藤優対談収録完全版 木嶋佳苗100日裁判傍聴記 (講談社文庫 き 63-2)』として文庫化されました。 -
Posted by ブクログ
とても引き込まれたのに、感想を書くのがとても難しい本だと感じた。
著者が言うように、被害者が女性であったなら全然違う取り上げられ方をしていただろう。女性がホテルにいけばついて行った本人も悪いと言われるのに、そう言われない男性。男性の純情を弄んだとばかりに責め立てる男性検事も、被害者が女性であれば女性の純情を弄んだ、と同じように攻め立ててはくれないだろう。
佳苗のことを擁護するつもりはないし、罪は罪だと思うが、どこか責め切れない気持ちがある。
そして、美人ではないが多くの人間が引き込まれてしまうということは、きっと人を惹きつける魅力のある人間なのだろう。
仮に売春が自分を大事にしない行為として定義されるのであれば、佳苗は売春していない。佳苗自身、自分を大切にしており、自虐的なものではなくあくまで金銭の対価としてセックスをしていた。
裁判官が女性が大半だったら判決は変わっていただろうか。裁判員裁判とのことだが、もっと質問がしやすい環境だったら佳苗の本心に近づくことはできただろうか。色々なifを考えてしまう。
感情が見えず冷静で、闇に取り込まれそうな目をもつ佳苗だが、田舎者と呼ばれ態度を変えるなど、内面はいろいろな感情を持った人間なのではないかと思った。佳苗の手記があるとのことなので、読んでみたい。 -
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読むか迷っていたのだが、佐藤優の「はじめに」を3行読んだところで、これは面白そうだな、と悟る。
おおよそ3時間で読めます。
10代のの頃に読み漁った北原みのりを久々に見かけて買った本。2016年刊行とのことで、ある程度古いのだが、状況はそう変わってはいない。
慰安婦問題から現在の性風俗の、状況や語られ方についての対談。
矯風会、矢嶋楫子、広岡浅子、市川房枝のことが語られているものを、何か読みたいなと思った。坂本龍馬みたいに、もっと、エンタメになっていても良いのに、ってことでもあるよな。
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その恐怖と屈辱感。この屈辱感を味わわされることが、そもそも差別の正体だなって。
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ボスニアヘルツェゴビナの被害者と、日本軍慰安婦の女性の痛みに、10代の女性が「これは私のことだ」と共感できる社会ってなんでしょう。女の子にとっては戦時中なんですよ。
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買う、買わないと言うことがこれほど日常化されていたら、私なんかはそれが自分とは違う世界の話だとは到底思えないんですよね。自分がこの社会で、性を売らされる1歩手前のところにいて、見えているのに見ないふりをしているような感覚がある。
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ふつうに、フロイトきもい、バタイユこわい、ヘーゲルひどいってなりますよ。 -
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社会学者の上野千鶴子さん、心理学者の信田さよ子さん、女性向けアダルトグッズの店をやっている北原みのりさんの対談本。テーマは「毒婦」(と呼ばれた女たち)。木嶋佳苗や角田美代子、東電OL、畠山鈴香など。
その事件だけにはとどまらず、女性を取り巻く社会について、さまざまな視点から描かれている。私が1番衝撃を受けたのはここ。
P143-144
『彼女たちは、誰かの性的対象になることで、自分のアイデンティティを復活させようとする。アイデンティティって言うのもおかしいんだけど、性的対象にならなければ自分というものが存在しないっていう自分、を持っている人たちが一定数いるわけですよ。…中略…自分が性的な女性としてセクシャルな身体をもつことによって、自分をボコボコにしていた父親が私を認めてくれるんだ、と感じる。こうやって、娘は性的な眼差しの中であれば自分も生きられるんじゃないかと思うようになるんです。』
私は父にボコボコにされていたわけではないけど、近いことが起こっていたのだと思う。そして母がそういうセクシャルな女性ではなかったから余計に、私はそちらに行きたかったんじゃないかな。 -
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ネタバレメロスのようには走らない。女の友情論。
そりゃ走らないよなー。だって女ってそこまで友情に対して義理堅くないもん。
女同士の友情で命かけるわけないじゃーん。
って思って読み始めたら、全然違った内容だった。
私はどちらかっていうと、女同士の友情だとかそういうの、まったく信じてないし、まったく興味がない。
専業主婦か働く主婦か。とか、既婚か未婚か。とか、はたまた美人かブスか。というふうに、女性の人生をなんでもかんでも二極化したがるこの世の中。そして、「女の敵は女」とばかりに執拗にけし掛けるようなこの風潮。
それって、なんか間違ってるよ。って言い切る北原さんの文章が、なんだかとても清々しかったな。
でも、だからってすぐに、誰かに素直に心を開けるわけでもないのだけれど、女友達の存在って大事なんだなー。っていうの、すごく伝わってきました。
でも、やっぱり私は、メロスのようにもメロ子のようにも走らないかなー。ってことを思いながら読んだ一冊でした。 -
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検事の発言や判決など、すごく男性的だなと思った。
殺人は悪いことなのはもちろんだけど、容姿を叩くのはおかしい。
美人だったらどういう反応だったんだろと思うし、彼女の所作や文字のきれいさ、料理の腕、声など、他の魅力を考慮せず、デブとブスだけで批判し過ぎ。
被害者男性の詳細を初めて知ったけど、結婚相談所やアプリにいそうな未婚の非モテ男性で、女性からTwitterで非難される男性像そのままでびっくり。
端的にいうと、バカで変な人多いなという印象。
木嶋佳苗自体はよくわからない人だなと改めて。
でもすごいな。
殺すのは悪いけど。
犯罪レベルではないけれど、ころっと騙されて上手いこと転がされてる人は多いんじゃないかなと思った。
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この事件は、「よくある」結婚詐欺事件を超えている。
木嶋被告は相手からお金を引き出すだけでなく、次々と殺人を犯していく。
それも、愛ある手料理を振る舞い、まめにメッセージを送り、相手の心を魅了しながら…
連続殺人事件という点ではなく、「なぜこの女が?」という、被告の容姿や言動に注目して集まった。
だいぶ前の事件であり記憶が薄れていたが、本書を手に取り、事件を知った際に受けた衝撃が蘇った。
事件の詳細だけでなく、裁判における被告の言動や、開設していたブログの内容、子どもの頃の作文の内容や後から公開された手記についてなど、被告の人間性に迫る記録となっていて、大変興味深かった。 -
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北原さんの本も佐藤さんの本も読んだことがない。そんな二人の対談。論を闘わすというよりは、共感のなかで話が進んでいく感じ。二人の話にほぼ私も共感。
自分のなかでは曲者的な印象だった佐藤さん。ちょっと読まず嫌いだったかなと思った。2015年の日韓合意が見直されることになると看破していたのはさすが。
なるほどなと思ったのは、北原さんが話していたんだと思うが、女性が性暴力と隣り合わせであることに、男性に思いを寄せてもらおうとするときの「自分の妻や娘がそういう目に遭ったらと想像してみろ」という常套句を突いたところ。自分の妻や娘がでなく、自分がそういう目に遭ったらと想像して対せるようでないと駄目なんだ。妻や娘のこととして感じた思いは、結局父権的でそこにまたジェンダーが宿っているから。 -
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フェミニズム的な価値観を多少なりとも持ちながら、オタク(二次元やサブカルチャーを好む人という意味でのオタク)でもある女性には、ジレンマがあるんじゃないだろうか。
AKBや美少女アニメのような「ロリコン文化」を(異性愛者でマジョリティに属する)男性に近い目線で好み、そこにいる女の子たちを値踏みしたり、応援したりすることを楽しんでいる。一方で、それが少女たちを支配し消費する暴力的な行為だという認識もあって、同じ女性である自分が荷担してしまっていることに罪悪感を覚えてもいる。少なくとも私はそうだ。
常に頭の隅にそういう思いがありながら、二次元やサブカルチャーを娯楽にしている。そこでこの本を見かけて手に取った。
タイトルに入った「オタク」という言葉からイメージしていたより、実際の内容は多岐にわたっている。最も紙幅を割いているのは性売買と性暴力の話題で、そこから政治の方向にも話を広げている。例として挙げられる個別の作品や商品は少ないので、オタク論のつもりで読むと当てが外れるかもしれない。
しかし言われてみると、世の中は本当に男権主義に押し込められていて、何と居心地の悪いことだろう。現代日本においてフェミニズムが流行らなくなってしまったのは、経済が衰えてしまい、女性どころか優位にあるはずの男性すら生きづらくなってしまったせいが大きいと思っていたけれど、当の女性たち自身が目を背けたい話だからというのも大きい気がする。実際、読んでいてつらい。自己決定していると信じている振る舞いや仕事やパートナーとの関わり方を、「男性に主体を奪われている」と指摘されれば、反発したくなるのは仕方がない。だけど鈍感に、あるいは割り切ったつもりで男性に迎合していたとしても、知らないうちに心を踏みにじられて傷ついてしまうことが多いのだ。やはり無視していることがいいとは思えない。
全体を通しては香山リカさんの後書きにあるように、「しかし、『ありとあらゆる場面、表現、文化であってもそれは絶対にダメなのか』と言われると、うなずいてよいかどうかがわからなくなる……」(p.246)というのが、オタクとして最も共感する感想。
オタクであるからには、全部がダメとは言えなくて、これは大丈夫だと言いたくなってしまう。その見極めが難しい。自分の勝手で決めている気がして、自信がもてない。結局、まずは暴力的なものへの感度をあげて、精査する目をもつ努力しかないのかもしれない。
どこまでが正解なのかは誰も示せない。けれど、どこにも暴力を向けることなく「性」を「愛」を、あるいは「生き方」を描き、多くの人が楽しめる作品・商品が増えていくことを祈っている。そしてなによりも、現実社会での女性への価値観が変わっていくことを諦めたくない。
【おまけ】
「オタク」という題材を取り上げているからには、BL(※)を好む「腐女子」たちや、アイドル・アイドルもののアニメを好む女性たちのことも分析して、女性オタクが性と表現をどう捉えているのかという話も読んでみたかった。
※BL(ボーイズラブ)には、フェミニズム的な価値観が見え隠れする。女性のままでは対等で安全な性愛を楽しめないという現実からBLを読む人は、自覚のあるなしを問わずいるだろう(もちろん、BLを読みたい理由は人によって様々)。最近だと溝口彰子さんの『BL進化論』が面白かった。
表現の世界は鈍感に「女性から主体を奪う」ものばかりではない。作品を通して少しずつ世間の価値観を変化させるのではないかと希望をもたせてくれるものもある。
たとえばアニメなら『魔法少女まどか☆マギカ』は一見「萌え」を狙っているようで、「少女にしか価値がなく、かつて少女だった女性は世界を呪う魔女になる」という男権社会の価値観に封じ込められた女性の苦しさを描いているし、ドラマなら放映中の『監獄のお姫さま』は、コミカルな表現で女性の怒り、男性に分断されない連帯を描いていて素敵だと思う。 -
Posted by ブクログ
北原みのりさんと同じく、木嶋佳苗はじめ、女性が起こした事件に興味を持っていて、ついこの手の本を読んでしまう。
あたしは壇蜜と同い年のエンコー世代で、毒母持ちであり、男と同等の評価が欲しいと社会で苦しむ、結婚をゴールとしない独身女である。
…このお三方の研究分野にすっかり当てはまってしまった。
しかし、あたしはエンコーコギャル世代ど真ん中でしかも比較的都会にいたのに、その時期、人生で最も輝く10代を、みっともない脂肪にまみれて暮らしていて、誰からも性的に求められなかった。現実から目を逸らして暮らしていた。
大人になって、ああ、あれは肥っていたからだ、そう思っていたのだ。
木嶋佳苗には、だから驚いて興味を持ってしまったのだと思う。
人から求められない理由に、容姿は関係ないのだと。
木嶋佳苗を知れば知るほど、魅力的に思えてくる。
たしかに、これはモテるかも。
なんだこの、負けた感は。
みんながだからざわつかされたのだ。
本書にも出てくる似た事件の犯人は、背景がわかりやすい。だから誰も興味をもたない。同じようだが、魅力的ではない。教育も、お金もなかったのだろう、と思うだけだ。
10代で自分を無価値と位置づけたあたしは、オンナを上手く使うことも、そこに飲み込まれることもなく、誰にも興味を持たれない、その他大勢の時間を過ごしている。
堂々と生きている木嶋佳苗がすこし羨ましい。