井上里のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
幼い姉妹が行方不明になった街。連作短編のように語られていく、そこで暮らす12人の“彼女たち”の人生、生活。解決しない問題やこびり付いて剥がすことの出来ない思い悩み、不安、悲しみ。小さな喜び。世界、社会が押し付けてくるままならなさ。傷と痛み。それぞれの小さな物語。それらは少しづつ重なり合い紡がれて、大切に掬い上げられた彼女たちの小さい物語をたしかに残したまま、ひとつの街、土地の、あるいは女性たちの物語として先へと伸びて行く。その先はページが尽きても開かれているけれど、希望の光は見えている。たしかに。
彼女たちの人生、生活、物語に共感し、多分感情移入もしている。もしかしたら身近にも感じていたかも -
Posted by ブクログ
これは完全にカッコいい表紙とタイトルにやられた。アメリカの作家なんだけどロシア文学に惹かれカムチャッカの街…あんなところに街があるって個人的には凄く意外だった…に実際暮らしていたという冷戦期には考えられない経緯を経て産まれた作品なんだとか。物語の入口は凄くシンプルで海岸に遊びに来た幼い姉妹が何者かに拐われるところから始まる。この作品が普通でないところは誘拐に続く章がどれも事件には直接タッチしない形で進んでいくところでいずれも女性を主人公にした物語がいくつかポツポツと進んで行って、それらはなんとなく誘拐事件に触れたりはするのだけれども基本的には独立して読める短編であったりする。そして気がつくと序
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Posted by ブクログ
非常に評判の高い作品。
とてつもなく閉塞感が強くて、人生が重くて、どないしようかと思ったけど、それでもどんどん先を読まされてしまうリーダビリティはすごい。これは翻訳の力によるところも大きいだろうと思う。
カムチャツカ半島というのは、そうなのか、ロシア本土とは陸路がないんだ! そもそも閉ざされた土地なんだね。それは知らなかった。ゆるくつながった連作短編のなかで、人々は、ここではないどこかへ行くことを夢見ながらも土地にしばりつけられ、そのなかで、あるいは愛する者を失い、あるいは失うことにおびえ、それでも生命力をかきあつめるようにして生きている。
すごく好き、とか、感動とかいうことではなく、から -
Posted by ブクログ
ネタバレ装丁と同じ、全体的に灰色の雰囲気の物語だった。でもただ暗い話っていうわけではなくて…いや明るくはないけど、なんだろうな。色がない?寒いからかな。
静謐?どこか淡々と描かれる喪失と孤独。閉塞感の中で生きる…というか息をしていく…みたいな。
姉妹の失踪を背景にしながら語られる「消えてしまうには理想的な場所」での女性達の日常。
各話ももちろん面白いけれど、それぞれの物語を読んでいると浮かび上がってくる、差別意識や社会情勢、特に印象的だったのはソ連崩壊後に資本主義へと転換した影響みたいなものかな。
各話が緩やかに繋がっていくのはもうお見事という感じ。ラストはちょっと急展開に感じたけれど、嫌な感じでは -
Posted by ブクログ
3月のサヴァブッククラブでの選書作品。
自分では手に取って読まないであろう物語に今月もまた出会えました。
すっごく面白い作品!
まずはGoogleマップでカムチャツカ半島を検索して、どんな土地なのか想像しながら読む。これがまた物語に深みが増して良い。
ロシアの文化と歴史にあまり明るくないが、これを機に学んでみたいなと思うほどに興味深い。
習慣とか先住民への差別とか田舎独特の閉鎖的な空気とかどこかわたしたちの国にも通じるものがあって、女性の生きづらさもあって、遠い国(実際にはカムチャツカ半島は日本からさほど遠くないが)のことなのに身近でもある。
『近くにいる人を愛するのは難しい』みたいな -
Posted by ブクログ
「カムチャッカ」については、「若者がきりんの夢を見ている」イメージしかなく、何も知らなかった。
カムチャッカは広いロシアにおいて陸路では本土に行けない陸の孤島で、自然が豊かで、白人とは別にいろんな先住民がいるが、ソ連からロシアになり、地域性や連帯は少しずつ失われつつある。
先住民差別、女性差別、同性愛、世代間格差、経済格差、発達障害、田舎社会、シングルマザー、偏見、噂話、生きづらさのミルフィーユ。
そこに暮らす女たちの話。
地理的にも経済的にも人種的にも土地に縛られて、ミルフィーユの中でいろんなことをいろんなふうに思っている女たち。
日本とは全然違う歴史と文化の国なのに、女の抱える生き