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Posted by ブクログ
最後の二章はもう夢中で読んで、読み終わってから、大きな大きなため息が出た…
読みながら、映画「ウインドリバー」のことを思い出していた。
本作もウインドリバーも、先住民がどんな思いで生きてきたか、垣間見ることができる。
ああ、でも、あまりに感情が揺さぶられ、いろんな感情が浮かんで来ては、また別の感情に上書きされ、とても感想を書ききれない。
先住民だから、白人だから、同性愛者だから、地元の人じゃないから、若いから、女性だから、病気だから、母子家庭だから、子供がいるから、いろんなレッテルを貼られてそれぞれが苦しんで、何かを失っている。
これはカムチャツカ半島に限らず、地球上で広く起きてることだから、消失の惑星というタイトルなんだろうな。
やっぱり感想は書ききれない。でもこんなふうに強く感情が揺さぶられたことを絶対に覚えておきたい。
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2人の少女の失踪をきっかけにカムチャッカ半島に住む女性たちの虚しさや悲しみが11カ月に渡って語られる。カムチャッカ半島には本土との陸路はなく、島を出るには飛行機か船という閉鎖的な空間。そして女性の立場の弱さや先住民に対する差別的意識もあり登場する女性たちの生きづらさが伝わる。これから先生活がましになることはないと確信しながらも、生きていかなくてはならない人々。最後の章では少女たちが助かったとも取れるし、読み手に任せているところが良かった。リリヤが自分から失踪したのでなければ、心が救われる人もいるとおもう。
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カムチャツカ半島で起きた幼い姉妹の失踪事件。そこから波紋が広がっていくように周囲の女性たちの暮らしが描かれる。みんな何かを消失していて、でも何を失ったのか分からないままずっと何かを探しているよう。日常の中に溶け込んだ悲しみと刺すような痛みが淡々と描かれていて、それが美しいほど涙が出てくる。5月と6月は読んでて特につらかった。2月も。9月と12月は描写がとても美しいと思った。
スラブ系と先住民の間にある不信感、偏見。偉大だったソ連時代を懐かしむ声。社会に根強く残る腐敗。都会と村の格差。少しずつ、何かを削り取られる女たち。これらが何気なく、でもきちんと織り込まれていて、あとがきを読むと、筆者が被害者の描き方にも慎重な姿勢を取っていることも分かる。大陸の孤島、すぐに何かを見失ってしまうような半島にいつか行ってみたい。
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読んでるうちにどんどん息苦しくなって一回本を閉じてしまった。女性としての自分に突き刺ささりすぎる内容だった。ラストについては、色んなサイトのレビューを読んで、人によって解釈が違うんだと驚いた。自分と同じ解釈の人もいたけど、まったく違う解釈もあって面白い。
二月のレヴミーラの話が個人的に一番刺さる話だった。夫が愛しくなった。
女性にお勧め
二人の姉妹の誘拐事件から始まるオムニバス形式の物語。
性差別や人種差別、都会と田舎の隔たりなど、誰もが少なからず感じたことのある差別意識や劣等感を
描いた作品です。
友人の勧めで読み始めました。
とても面白いのですがどこか暗く重たい雰囲気でなかなか読み進められませんでしたが、大変面白かったです。
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「生きてゆく」ということは、
「いくつもの大切なものが失われてゆくのを見届ける」
という、絶望との戦いだ。
あり得たはずの未来が失われ、
見つけられなくなってしまう、
そんな毎日のつらさに抗い、
目を瞑らずに立ち向かう、
究極の強さだ。
それでもどうにか進んでゆく。
それこそが人生だ。
と認識させられた。
カムチャッカに生きる人たちの物語。
その薄暗くて、寒くて、過酷な土地で暮らす女性たちの物語。
幼い姉妹が消えた8月に始まり、
月ごとに紡がれてゆくストーリー構成もおもしろい。
慣れないロシア名前の登場人物たちもそれぞれに描かれているため、すっと入ってくる。
そしてループのように繋がり結末へとむかう。
美しくて、切なくて、悲しい物語。
最後はにすこし、希望が。
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途中までは登場人物や街の名前、場所を何度も最初のページに戻って確認しながら慎重に読み進める。夏休みから始まった物語は年を越し、お互いに接点のなかった彼女、彼等が少しずつ重なり始めてからのスピード感と驚き。
米国生まれの著者がロシア留学時代に訪れて着想を得たという景色を想像しながら、訳者あとがき、「カムチャッカ半島案内」を堪能しました。おもしろかった。
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2人の子供の誘拐事件からカムチャツカ、ミステリー、ロシア、自然、閉塞感、民族、女性、家族、様々な要素が全体的に静かなトーンで語られていく。少しづつ異なる視点の登場人物が広大な半島の中で少しづつつながり合いながらそれぞれの悩みに向き合いなんとか日々を生き残っていく。単純な幸せなんていうものは誰にも存在しない。厳しい自然の力の中では肩を寄せ合って生きていくしかないはずの人間たちなのにその中でも隔たりは大きく本当は近くで支え合うはずの家族でさえも気持ちは近くにとどまることができない。それでも先住民の伝説のように太陽は生まれ変り世界は続いていく。
とても重層的で奥行きの深い作品。犯罪を軸に話が展開するのはロシアが舞台であることもあってドストエフスキーを思い起こさせたけど、先住民の多い登場人物はもっと気持ちが内側に向かっていくようにも感じた。
Posted by ブクログ
二人の少女が誘拐事件がバタフライ効果のようにさまざまな女性の生き方に変化を与えます。登場する女性たちは、みんなそれぞれの形で苦しみを抱えています。カムチャッカの豊かでありながらも過酷な環境の描写や女性たちの心的描写がとても丁寧に書かれていると思います。本の手触りがとても良いのでそれも含めて星5つです!
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幼い姉妹の失踪から始まる物語。だけどその事件のことはあまり語られず一章ずつ語り手を変えながらその人物の生活、不安、怒り、悲しみが描かれていく。失踪のことは語られないけれど常にその空気は感じられて読み手も不安なまま読み進めていく。その緊張感に圧倒される。何かを、誰かを失うということの痛みや悲しみが迫ってくる終盤は苦しくなるほどでなかなか冷静には読めないほどだった。久々に深く入り込んで読んだ感覚があった。
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幼い姉妹の失踪から始まり、まずはみっしりとした不安感に覆われる。しかし読み進むうちに、それも物語の断片であって、登場人物の誰もが、さびれた極寒の地で閉塞感や失望や喪失感を抱えて生きていることがわかってくる。群像劇から浮かび上がってくる、民族や貧困や女性の現況。
被害者が「消費されやすいことを警戒」する筆者の姿勢は、失踪や犯罪の物語とは明らかに一線を画している。
暗く陰鬱なトーンでありながら、遠い奥底に、人の強さも感じられる気がする。
私は『二月』に最も掴まれた。
Posted by ブクログ
言い回しや表現が素晴らしかった。訳者によるものか作者によるものか不明だが。
カムチャッカ先住民とロシア人、女性と男性、田舎と都会。排他的な差別が描かれていた。
様々な女性のオムニバスのような形で話が進み、それぞれが抱えている孤独がうまく表現されていた。
Posted by ブクログ
誘拐事件の解決ドラマと思いきや、事件が起こった町で生きる人々の話
ソ連時代と現在の世代間の分断、先住民族と白人との分断
とても作者が同年代と思えないほど、語り手一人ひとりの生活が丹念に描かれている
Posted by ブクログ
小説を読んでこんなに心が痛むのははじめてだった。ある意味ではハッピーエンド的な終わり方かもしれないけれど、リリヤ、ソフィヤ、アリョーナその後のことを考えるとまた苦しくなる。3人の母親だってきっと手放しには幸せを謳歌できない。犯罪の被害に遭うこと、そのことで残る痛みまで想像させる。
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良い点。題材にしている部分が面白い。ロシアの半島が舞台で、民族差別や性差別があり、それといなくなった姉妹に対する周りのリアクションを描く、という目線が面白い。
悪い点。デビュー作なので、少し何を書いているか分かりづらい部分はあった。また、登場人物が年寄りは小言が多く、男は下品かアホで、女はそれなりに聡明で自立しているみたいな感じで、幅が少なかった。それもあり、少し途中でダレていた。
”異常”といい、こういう作品のスタイルが流行っているのかな。何か事件があって、それを囲む複数の人間の人生を描く的な。
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家族や隣人、社会に対するささやかな不満、不安、疑惑など、日常生活を快適に送るにはあまり直視したくないネガティブな感情を、ナイフで抉るように真正面から几帳面にほじくり返した作品。
みんな同じことにイライラしているんだな、しょうがないな、とっとと諦めたほうがいいのかな、と変な意味で救われたような、そんな読後感。「この心理描写がすごい」大賞。
Posted by ブクログ
性別や人種の産まれもった苦しみ、集団への不満、そこで働く人々の苦悩、性的マイノリティ、消失と絶望の決して終わらない日々、などなど私たちに呪いのように付き纏う生きづらさ。
群像劇チックではあるが、
特に交わらない登場人物がほとんどだし、全ての章にオチを持ってこないという構成が永い時間の残酷さと希望を表している。
ただ、その締め方が後半になるまで予想できず、
半端なままにどんどん増えてくるばかりの登場人物に少しストレスを感じてしまったので、2周目以降が1番楽しめそうではある。
日本も地震と島国という点で、この舞台と通ずる何かがあるはず。
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カムチャッカを舞台に、複数の女性を月ごとに主人公にした小説。
とっかかりは幼い姉妹の失踪事件だが、事件の解決とかはあまり重きは置いてなく、土地ならではの閉塞感が女性の視点で描かれる。原住民、有色者への蔑視も見え隠れして、重厚だった。
Posted by ブクログ
これは完全にカッコいい表紙とタイトルにやられた。アメリカの作家なんだけどロシア文学に惹かれカムチャッカの街…あんなところに街があるって個人的には凄く意外だった…に実際暮らしていたという冷戦期には考えられない経緯を経て産まれた作品なんだとか。物語の入口は凄くシンプルで海岸に遊びに来た幼い姉妹が何者かに拐われるところから始まる。この作品が普通でないところは誘拐に続く章がどれも事件には直接タッチしない形で進んでいくところでいずれも女性を主人公にした物語がいくつかポツポツと進んで行って、それらはなんとなく誘拐事件に触れたりはするのだけれども基本的には独立して読める短編であったりする。そして気がつくと序章に繋がる最終章に突入する、という形で実験的といえばそのとおりの極めて奇妙な物語になっている。作者の凄みは実験臭を感じさせずに純粋な物語として読ませてくるところであっさりしてるように見えてこれはかなり試行錯誤を重ねた結果なんだろうな、と思わせられた。気になってカムチャッカのことを少し調べてみたのだけれど山と深林に阻まれて陸続きに半島から出ることができず水路か空路を使うしかないらしい。不凍港があるため昔からソビエト海軍が基地を置いていたこともあってロシア人の入植者も多かったのだけどソビエト崩壊でかなりの人口流出があって、というかなり特殊な環境であるらしい。そんな特殊な環境も物語に反映されているのだろう。非常に面白く興味深い作品でした。
Posted by ブクログ
非常に評判の高い作品。
とてつもなく閉塞感が強くて、人生が重くて、どないしようかと思ったけど、それでもどんどん先を読まされてしまうリーダビリティはすごい。これは翻訳の力によるところも大きいだろうと思う。
カムチャツカ半島というのは、そうなのか、ロシア本土とは陸路がないんだ! そもそも閉ざされた土地なんだね。それは知らなかった。ゆるくつながった連作短編のなかで、人々は、ここではないどこかへ行くことを夢見ながらも土地にしばりつけられ、そのなかで、あるいは愛する者を失い、あるいは失うことにおびえ、それでも生命力をかきあつめるようにして生きている。
すごく好き、とか、感動とかいうことではなく、からみつくように頭に住みついてくる小説だった。
Posted by ブクログ
すごかった、と思う。
すごくずしっと来たものもあるけれど、ロシアという国の中の人種の関係性に無知なので理解できていないところもあるかと思う。
でも、それでも女性という立場だからこその何かを感じる。わかる、とは、私の知識では安易に言えないけれど。私の語彙力ではうまく言葉にできないのがもどかしい。
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装丁と同じ、全体的に灰色の雰囲気の物語だった。でもただ暗い話っていうわけではなくて…いや明るくはないけど、なんだろうな。色がない?寒いからかな。
静謐?どこか淡々と描かれる喪失と孤独。閉塞感の中で生きる…というか息をしていく…みたいな。
姉妹の失踪を背景にしながら語られる「消えてしまうには理想的な場所」での女性達の日常。
各話ももちろん面白いけれど、それぞれの物語を読んでいると浮かび上がってくる、差別意識や社会情勢、特に印象的だったのはソ連崩壊後に資本主義へと転換した影響みたいなものかな。
各話が緩やかに繋がっていくのはもうお見事という感じ。ラストはちょっと急展開に感じたけれど、嫌な感じではない。好きなのは二月かな。突き落とされたけど。
「すぐそばにいるものを愛するのは難しい」
この言葉がこの作品を象徴しているわけではないけれど、なんかもうこの言葉に出会えたってだけで、この作品を読んだ価値はあったと思える一文だった。
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3月のサヴァブッククラブでの選書作品。
自分では手に取って読まないであろう物語に今月もまた出会えました。
すっごく面白い作品!
まずはGoogleマップでカムチャツカ半島を検索して、どんな土地なのか想像しながら読む。これがまた物語に深みが増して良い。
ロシアの文化と歴史にあまり明るくないが、これを機に学んでみたいなと思うほどに興味深い。
習慣とか先住民への差別とか田舎独特の閉鎖的な空気とかどこかわたしたちの国にも通じるものがあって、女性の生きづらさもあって、遠い国(実際にはカムチャツカ半島は日本からさほど遠くないが)のことなのに身近でもある。
『近くにいる人を愛するのは難しい』みたいな表現にすごくハッとさせられました。
これがデビュー作なんて嘘でしょ!?と驚愕です。
世の中には才能溢れる人がたくさんいるのね…
ラストがまたいいんですよ。このラスト好きだなぁ。
Posted by ブクログ
去り際に振り返る女性の顔は半分見えない。
こちらを向いた悲しそうな目、
向こう側の目は何を見ているのか……。
モノクロのカバーの絵が雰囲気をすでに物語っている。
カムチャツカ半島、シベリア極東部から突如として南へ飛び出しオホーツク海とベーリング海に囲まれた北の果ての半島。
作者はアメリカ人。よそ者としてカムチャツカ半島に住み、この本を書いた。
先住民族とロシア人。
登場人物の職業(勤め先)は、先住民族が行う狩猟やトナカイの牧畜以外には、警察、火山研究所、海洋研究所、看護師、教師など。
どこか無理のある人工的な生活圏。
二人の少女が行方不明になった時から1年。
そこに住む女性たちの悲しみ、痛みは、軋むようにして漂っている。
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幼女誘拐事件を扱った小説となると、どんな内容を想像するだろうか?なぜその少女が狙われ、どんな方法で誘拐され、どう監禁されていたか?犯人はどうしてそのような事件を起こす人物になったか?その他諸々のことを書くとしても、読書としての私が興味を抱く点はそういったことだと思う。
しかし、この本の著者ジュリア・フィリップスはほとんどそういったことを書いていない。著者は、大衆にとって、この手の事件が娯楽のように扱われるのを忌み嫌っているようだ。
グロテスクな描写や異常犯罪者等のストーリーは、個人的に割と好きな方なので、その手の本を読んだ後、面白かったと思うと同時に、こんな自分で良いのだろうか?と罪悪感を感じることもしばしばある。これはフィクションなんだからという意見もあるだろうが、実際の事件でも被害者のことをマスコミが執拗に取材したり、それを見て視聴者が楽しんだりしている面がないとは言い切れないと思う。
この本では、事件がそういった好奇の目で、たとえそれが小説であっても、扱われることがないようになっている。では、何が書かれているのか?
この小説の舞台はカムチャツカ半島。ロシア東部の街で、幼い姉妹が行方不明になる。この半島に住むそれぞれの人生を背負った女性たちの生き様を描きつつ、それが少しずつつながり事件が動く。
カムチャツカ半島の風土や、先住民とロシア人との確執も描かれて、私にとっては全く想像もできていなかった異世界が、朧げながらも像を結び始めた。
カムチャツカと言えば、谷川俊太郎さんの詩がまず浮かび、そして、それ以外は何も浮かばない謎の地だった。そこを舞台にした、こんな壮大なものを読むことになるとは…
きっとこれからも、グロテスクなものを読み続けてしまうと思うけれど、この著者の思いしっかりと受け止めたいと思う。
Posted by ブクログ
みんな何かを失いながら生きてるんだな。
それでも緩やかにつながっているのだ。
そんなことを考えさせられる、カムチャッカ半島に住むロシア人と先住民の女性たちの物語。