井上里のレビュー一覧
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シェイカー・ハイツという計画的に造られた町に住み規則を重んじる人や、型を破りながら人生を歩んでいく人達が交錯する物語。じっくりと読んでいるうちにいつの間にか物語に引き込まれていた。両親の理解を得られぬまま芸術の道を選択し放浪するミア、恵まれた家庭に生まれながらも規則に縛られることを嫌い両親に理解されないイジーら、自身の中に燃える火を信じて生きていくことは大事。一方で、ミアの両親らがその生き方を理解しないことを責めるような表現は少なかった。育ち方や環境、時代が違えば、許容できる範囲も変わり、考え方が異なることは無理もないという表現だった。ある小さな町の物語に没入したような満足感のある本だった。
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Posted by ブクログ
母と子、異なった生活歴、職歴を持つ回想が異なる二組の「家」そして女性の対立。
筆者イングは中国系移民2世・・これまで読んできた同じ流れにいる作家とはまた一味異なった作品だった。
読み始めは、なかなか流れに乗れず、正直だれるドラマ。
次第に 背景となる時代、社会風景に生きていくティーンの男女の性愛、セックス、妊娠、そして異人種の代理母など様々な愛の形と「母と子」のモデルの裏が描かれて行く手法が染みわたってきた。
舞台となるオハイオ州シェイカー・ハイツは実存するんですね。
完璧な場所、完璧な暮らし・・そこに住んでいるリチャードソン一家はまさにそう、そして母エレナは常にりそいうの家庭像を追い求める -
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面白かった。さりげなく、しかし確実に意図的に物語に登場する様々な家族の「かたち」。なかには、非難を呼び得る選択の結果形成されたものもある。しかし著者は決してそれをジャッジしない。ただ、人生として描いている。
そしてそれぞれのヒストリーや勃発する事件の中で描写される、ジェンダーや人種を巡る尽きぬ問題。特に、作者の実感の滲む、米国社会におけるアジア系移民の立場やそのアイデンティティを巡る議論については、新たに気付かされる視点もあった。
何よりサスペンスとしての物語の織られ方が上質だ。裕福な、絵に描いたような美しい家庭と思春期の子供たちの生活に、ある日訪れる根無し草の親子─というやや古典的な導入から -
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母と子のアンバランスな愛情… 情緒がリアリティに満ち溢れ、ジワリジワリと染みわたる #密やかな炎
■あらすじ
オハイオ州シェイカー・ハイツに住むリチャードソン一家。母エレナは子どもたちに規律を重んじるよう厳しく接し、理想の家庭を追い求める女性だった。
ある日、一家の借家に母娘ミアとパールが引っ越してくる。有色人種で芸術家のミアは経済的に苦しい生活を送っている。安定した暮らしに憧れているミアは、裕福なリチャードソン一家の子どもたちと交流を深めていく。
やがてこのリチャードソンの大きな邸宅が、火事になってしまうのだが…
■きっと読みたくなるレビュー
ダークでやたら現実味あふれるホームドラマ -
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ネタバレ失ったものはもう戻らない。
何を得て、何を諦めて失うのか。
2つの家族はまったく違う環境下で生活している。どちらの家族が正しいなんてことはない。しかし子供達にとって、どちらの方が生きやすいかと言われるとまた違ってくるのだろう。
出てくるキャラクターたちはみな魅力的で、
描写がこと細かく、まるでキャラクターたちが自分の友人のように見えてきました。
そんな彼らが選ぶものは何なのか。
家族なのか、友情なのか、恋人なのか。
はたまた、、、?
火事を巡って、その原因は、犯人は誰なのか。
過去に遡って真実を探していくミステリー。
私は特にミアの過去シーンに驚き、
息を呑んでしまいました。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ父は病死、母は刑務所に入って今は更生施設にいることで、17歳のキアラは兄のマーカスと2人で暮らしていたのだが、兄はラッパーを夢みてばかりで働かない。アパートの家賃も滞りがちで、おまけに値上げするという。
同じアパートに住む9歳のトレバーもネグレクトを受けていて、食べるものもない様子。
キアラは、職を探すも雇ってくれる店はどこもなく、追い詰められた果てに思わぬことから売春を始め…。
誰に救いを求めたらいいのかわからずに、ただ生きるためにしたことが大きな事件となる。
このようなことがある世の中では駄目なはずなのに誰も気づかずにいることが、どうしてもやるせなく思う。
著者が、ティーンエイジャ -
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17歳女の子キアラの物語… 黒人女性が何故こんな酷い扱いを受けなければならないのか #夜の底を歩く
■あらすじ
17歳の女の子キアラは、定職にもつかない兄と暮らしていた。父は既に病死し、母も刑務所に収監されているため、誰も彼女を守ってくれない。さらに同じ地区に住む9歳の少年トレバーがネグレクトを受けていた。彼女は自身の生活とトレバーを守るために求人を探すも、まだ未成年のために仕事にありつけない。ついに彼女は自身の身体を売り始めるのだが…
■きっと読みたくなるレビュー
やるせない気持ちで胸がいっぱいになる物語、しかし声をあげるべきだという、強い意思を感じる作品でした。黒人女性が何故こんなにも -
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幼い姉妹が行方不明になった街。連作短編のように語られていく、そこで暮らす12人の“彼女たち”の人生、生活。解決しない問題やこびり付いて剥がすことの出来ない思い悩み、不安、悲しみ。小さな喜び。世界、社会が押し付けてくるままならなさ。傷と痛み。それぞれの小さな物語。それらは少しづつ重なり合い紡がれて、大切に掬い上げられた彼女たちの小さい物語をたしかに残したまま、ひとつの街、土地の、あるいは女性たちの物語として先へと伸びて行く。その先はページが尽きても開かれているけれど、希望の光は見えている。たしかに。
彼女たちの人生、生活、物語に共感し、多分感情移入もしている。もしかしたら身近にも感じていたかも