井上里のレビュー一覧

  • 葉っぱの地図
    植物の声が聞こえる12歳の少女オーラ。
    庭の植物がざわついている。
    どうやら謎の病気が蔓延しているらしい。
    亡くなった母の手帳を頼りに薬の手掛かりを舟に乗って探しに行くことに。

    薬の材料探しと病気の原因を探る過程はダークでスリリングな自分好みのファンタジー。
    頑なすぎるオーラだけどイドリスとアリア...続きを読む
  • 消失の惑星【ほし】
    誘拐事件の解決ドラマと思いきや、事件が起こった町で生きる人々の話

    ソ連時代と現在の世代間の分断、先住民族と白人との分断

    とても作者が同年代と思えないほど、語り手一人ひとりの生活が丹念に描かれている
  • トラスト—絆/わが人生/追憶の記/未来—
    斬新な構成で、実験的というのは確か。経済史でありファミリーヒストリーでもある、と見せかけて自分勝手な男性の片鱗を見せつける奥深い作品でした。誰もが自分のストーリーを語りたがるとはいえ、あんまりでは、、と思えてしまいます。アイダが見つけてくれてよかった。

    #夏の読書感想文
  • 消失の惑星【ほし】
    小説を読んでこんなに心が痛むのははじめてだった。ある意味ではハッピーエンド的な終わり方かもしれないけれど、リリヤ、ソフィヤ、アリョーナその後のことを考えるとまた苦しくなる。3人の母親だってきっと手放しには幸せを謳歌できない。犯罪の被害に遭うこと、そのことで残る痛みまで想像させる。
  • 消失の惑星【ほし】
    良い点。題材にしている部分が面白い。ロシアの半島が舞台で、民族差別や性差別があり、それといなくなった姉妹に対する周りのリアクションを描く、という目線が面白い。

    悪い点。デビュー作なので、少し何を書いているか分かりづらい部分はあった。また、登場人物が年寄りは小言が多く、男は下品かアホで、女はそれなり...続きを読む
  • 消失の惑星【ほし】
    家族や隣人、社会に対するささやかな不満、不安、疑惑など、日常生活を快適に送るにはあまり直視したくないネガティブな感情を、ナイフで抉るように真正面から几帳面にほじくり返した作品。
    みんな同じことにイライラしているんだな、しょうがないな、とっとと諦めたほうがいいのかな、と変な意味で救われたような、そんな...続きを読む
  • 消失の惑星【ほし】
    性別や人種の産まれもった苦しみ、集団への不満、そこで働く人々の苦悩、性的マイノリティ、消失と絶望の決して終わらない日々、などなど私たちに呪いのように付き纏う生きづらさ。

    群像劇チックではあるが、
    特に交わらない登場人物がほとんどだし、全ての章にオチを持ってこないという構成が永い時間の残酷さと希望を...続きを読む
  • 消失の惑星【ほし】
    カムチャッカを舞台に、複数の女性を月ごとに主人公にした小説。
    とっかかりは幼い姉妹の失踪事件だが、事件の解決とかはあまり重きは置いてなく、土地ならではの閉塞感が女性の視点で描かれる。原住民、有色者への蔑視も見え隠れして、重厚だった。
  • ジャングル・ブック
    児童文学の「名作」というものを
    ほとんど読まずに
    大人になってしまった

    名前だけは知っているけれど
    どのような物語であるのかは
    ほとんど知らない

    知人と話していて
    その会話の中に
    ひょいと その「名作」が
    入ってくることがある
    今さら それは知らないとも
    言えず
    その知人と別れてから
    妙に印象に...続きを読む
  • 消失の惑星【ほし】
    これは完全にカッコいい表紙とタイトルにやられた。アメリカの作家なんだけどロシア文学に惹かれカムチャッカの街…あんなところに街があるって個人的には凄く意外だった…に実際暮らしていたという冷戦期には考えられない経緯を経て産まれた作品なんだとか。物語の入口は凄くシンプルで海岸に遊びに来た幼い姉妹が何者かに...続きを読む
  • 消失の惑星【ほし】
    非常に評判の高い作品。
    とてつもなく閉塞感が強くて、人生が重くて、どないしようかと思ったけど、それでもどんどん先を読まされてしまうリーダビリティはすごい。これは翻訳の力によるところも大きいだろうと思う。

    カムチャツカ半島というのは、そうなのか、ロシア本土とは陸路がないんだ! そもそも閉ざされた土地...続きを読む
  • 消失の惑星【ほし】
    すごかった、と思う。
    すごくずしっと来たものもあるけれど、ロシアという国の中の人種の関係性に無知なので理解できていないところもあるかと思う。
    でも、それでも女性という立場だからこその何かを感じる。わかる、とは、私の知識では安易に言えないけれど。私の語彙力ではうまく言葉にできないのがもどかしい。
  • 消失の惑星【ほし】
    装丁と同じ、全体的に灰色の雰囲気の物語だった。でもただ暗い話っていうわけではなくて…いや明るくはないけど、なんだろうな。色がない?寒いからかな。
    静謐?どこか淡々と描かれる喪失と孤独。閉塞感の中で生きる…というか息をしていく…みたいな。

    姉妹の失踪を背景にしながら語られる「消えてしまうには理想的な...続きを読む
  • 消失の惑星【ほし】
    3月のサヴァブッククラブでの選書作品。

    自分では手に取って読まないであろう物語に今月もまた出会えました。
    すっごく面白い作品!

    まずはGoogleマップでカムチャツカ半島を検索して、どんな土地なのか想像しながら読む。これがまた物語に深みが増して良い。

    ロシアの文化と歴史にあまり明るくないが、こ...続きを読む
  • ジャングル・ブック
    子どもの頃に読んだ「ジャングルブック」を思いだし、何とも懐かしかった。

    当時読んだのは小学生向け(たぶん)のヤツだったが、主人公なんかも正義感あふれる少年に描かれていた(たぶん)気がする。

    今回の訳では、登場人物(多くは動物)の感情の機微なんかがリアルに描かれていて、大人版として、とても楽しめた...続きを読む
  • 消失の惑星【ほし】
    去り際に振り返る女性の顔は半分見えない。
    こちらを向いた悲しそうな目、
    向こう側の目は何を見ているのか……。

    モノクロのカバーの絵が雰囲気をすでに物語っている。

    カムチャツカ半島、シベリア極東部から突如として南へ飛び出しオホーツク海とベーリング海に囲まれた北の果ての半島。
    作者はアメリカ人。よそ...続きを読む
  • 消失の惑星【ほし】
     幼女誘拐事件を扱った小説となると、どんな内容を想像するだろうか?なぜその少女が狙われ、どんな方法で誘拐され、どう監禁されていたか?犯人はどうしてそのような事件を起こす人物になったか?その他諸々のことを書くとしても、読書としての私が興味を抱く点はそういったことだと思う。

     しかし、この本の著者ジュ...続きを読む
  • 消失の惑星【ほし】
    みんな何かを失いながら生きてるんだな。
    それでも緩やかにつながっているのだ。

    そんなことを考えさせられる、カムチャッカ半島に住むロシア人と先住民の女性たちの物語。
  • ジャングル・ブック
    2016年のディズニー映画封切後、出版された新訳。
    原作は1894年とその翌年に出た続編だという。
    つまり、一世紀生き延びた児童文学だという。

    原作は短編集。
    オオカミに育てられた少年、モーグリ(蛙という意味らしい)を主人公とする活劇。
    人食いトラのシェア・カーンとの闘いや、実の母?のメスーアを迫...続きを読む
  • 消失の惑星【ほし】
    カムチャッカ半島での小さな姉妹の失踪とその後の数ヶ月間。

    事件は地域の人たちに話題と影を与えながらも、人々の生活は変わらず進んでいく。
    それぞれの悩みを抱えながら。

    あるところでの話し手やその友人、恋人、兄弟が別の月では、ちがう表情をしたり、異なる向きから語られたり。
    極東ロシアの一地域は、それ...続きを読む