栗田有起のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
【本の内容】
はたちになる直前、ハムスターとマンションを相続した、まちる。
実家を出て、一人暮らしを始めるが…。
奇妙な設定を静かなユーモアで包んだ、注目作家のデビュー作ほか『豆姉妹』収録。
第26回すばる文学賞受賞作。
[ 目次 ]
[ POP ]
なんというか実にあっけらかんとした小説だ。
登場人物達の意外な設定に驚き、話がどんどん思いもよらない方向へ転がってびっくりする。
「ハミザベス」では、今まで会ったこともなかった父が死に、まちるは父と一緒に住んでいた若い女性からハムスターと遺産のマンションを譲り受け、そこに住むことに。
更年期障害に苦しむ母。
突然の明らかになる -
Posted by ブクログ
キノコを取り巻くゆるい奇妙な話だった。割とはじめの方に登場した、ギヨームがヒビの入ったレンズのメガネをごく普通に、当たり前に身につけてる描写に、「これは怪しい方向へ話が展開しそうだ」と思った。「そういうデザインの眼鏡なのか、フランスは、とくにパリはファッションにうるさい人が多いらしいから、眼鏡にもたとえばインパクトやら、個性やら、人との差別化やら求めるのかもしれない。すごいな、歴史がちがうんだな、フランスではファッションとは、人をそこまでかりたてるものなのだな。」と不意に現れた主人公のイノセンスな解釈に、心温まって、笑ってしまった。オシャレは我慢という言葉も頭をよぎったに違いない。姉、母、父み
-
Posted by ブクログ
この本に出てくる人間は、語り部である女性を除き、人間そのものではないかもしれません。というのも、彼女が見取る誰かの印象、エネルギー、立ち現れる湿った気配そのものに名前とエピソードが付けられているのです。オテル・モルのお客様の眠りが、リネンに染みた汗、よだれ、涙、体液、はがれた皮膚、あか、脂から分かるように。
主人公の過去こそ劇的ですが、実は物語そのものに大きな波はありません。ただ眠りの静かなダイナミクスが(語義矛盾を承知で)全体を引っ張って行きます。眠気の如く、それは柔らかくもひたすら強引に読み手を引っ張って行くのです。
読み終わった後に眠れる日に、一度に読まれることをお勧めします。