栗田有起のレビュー一覧
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多くの人が言っているように表題作の『ハミザベス』より、同録の『豆姉妹』の方が楽しい作品です。突如成り行きと思い付きで巨大アフロヘアにしてしまった女子高生の主人公の様子が何とも笑えしまいます。
この2週間ほど、栗田さんの作品を遡るように読んできました。
過去に戻れば戻るほど、不思議な舞台設定は現実的になって行きます。栗田さんのデビュー作であるこの本では、確かに奇妙な設定もあるのですが(例えば巨大精子・卵子)、それは物語の片隅に追いやられています。ただ、どこか不思議な雰囲気をもつ登場人物は最初からあるようです。
どんどん個性が際立ってきている作家さんのような気がします。
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07-033 2007/04/05 ☆☆☆☆
直前に読んだ絲山秋子さんの「イッツ・オンリー・トーク」のように、どこか淡々とした味わいのある作品です。
ちょっと不思議な雰囲気を持つ花野さん。中学時代に恋愛関係になりかけたけど虚弱体質の私を気遣ううちに家族のようになってしまった彰。更年期障害に苦しむ母親。そんな人たちと、奇妙に素直な主人公たちの係わりが、少しユーモラスに描かれます。こうした人間関係が主題なのかな。
それにしても、途中出てくる巨大精子・卵子の話は何でしょう?「豆姉妹」には巨大アフロヘアーが出てくるし。栗田さんは巨大物好き? -
Posted by ブクログ
栗田有起月間3冊目。
表題作「お縫い子テルミー」と「ABARE・DAICO」の2つの中篇。
どちらも背景は『卵町』や『オテルモル』と異なり、ごく普通の現代の風景です。
ただ「お縫い子・・」については、主人公の職業が流しのお縫い子(客の部屋に居候しながら服をしたてる)というのが変わっています。一方 「ABARE」の方は小学5年生の少年を主人公にした物語で、これはごく普通の現代小説と言って差し支えないと思います。
どちらの主人公もキッパリしていて、でも毅然というほどでもなく。なんだか共感できます。
しかし、この心地よさは何なんでしょうね。
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11-123 2011/11/23 ☆☆☆☆☆
前回とちょっと感想が変わりました。「お縫い子テルミー」の方が良い。
「ABARE・DAICO」は現実に在りそうな話ですが「テルミー」は不思議な世界です。
何処からこんな発想を湧くのか、「オテル モル」もそうですが、栗田さんは現実と少しズレた不思議な世界を作り出します。その中で、何かを声高に語ろうとしている訳でも無さそうです。ただ純粋にちょっと不思議な世界を生み出して、その中に浸ることで楽しんでいる。そういう意味では梨木さんの「家守奇譚」に近い気もします。
素直に物語を読む喜びを感じさせてくれる本です。
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07-044 2007/05/18 ☆☆☆☆
何処から生まれるものなのか良く判りませんが、何か独自の雰囲気を持った作家さんですね。ひょっとしたら主人公の潔さみたいなものかもしれませんが。
「お縫い子テルミー」も良いのですが、個人的には「ABARE・DAICO」の方が好きです。主人公が生き生きとしていて、ユーモアも有って。まあ、主人公が少年のせいで感情移入しやすいというところもあるのでしょうが。
目立つ作品ではないかもしれませんが、力のある作家さんだと思います。 -
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突如、栗田有起月間です。
良眠と快夢のためだけのホテル。
横歩きでしか入れないビルの谷間の奥にあり、地下だけの客室。部屋にはテレビも冷蔵庫もテーブルも無いオテル・ド・モル・ドルモン・ビアン。
その求人広告に応じて、オテルモルの受付に勤めることになった希里の不思議な体験。
どうも栗田さんの共通項の一つは、奇妙に歪んだ背景です。
全体が歪むのではなく、局所的に歪んでいる感じが良いですね。病院町を舞台にした『卵町』にしてもホテルを舞台にするこの作品にしても、その特徴である「静寂」や「睡眠」を極端に強調するやり方で不思議と心地良い歪みを作っています。
あと一つは主人公を取り巻く人の生真面目さでしょうか。主人公はどちらかと言えば「流されてる」感じなのですが、周りがしっかりした足場/信念をもって生きています。
しかし、なんとも不思議で心地よい物語です。
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08-061 2008/07/30 ☆☆☆☆
快眠のみを目指した会員制ホテルという設定からして魅力的。
丁度中盤で、やや中だるみの状況。主人公がホテルに就職し、その過去も語られて、という段階。
はて、ここからどういう展開に持っていくのか、楽しみです。
以上は半ばまで読んだ時の感想。で結果はと言うと。
麻薬中毒に陥った双子の妹が出てきて、緩やかな上昇曲線を描きそうなところで物語りは終わり、明確な決着は無く。。。
まあ、それはそれで良いのですが、どこか釈然としないものも残ってしまいます。折角面白い設定なのだから、「眠り」に関する別のもっとファンタジックな物語を持ってきたほうが面白かったかな。 -
Posted by ブクログ
それは自分の枕でないと寝られないことにくらべれば、自由であるような気がする。でも自由とは、自分を縛る鎖を選ぶことだと、聞いたこともある。
残った布はハンカチくらいの大きさにして四辺をまつる。折りたたんで、胸元にしまう。ここにはいつも、気に入りの布が何枚も入っていた。つねづね、人はだれしも、せめて一枚は美しい布を持ち歩くべきだと考えている。
つくづく、もう若くはないのだと悟ったわ。いろんなもの犠牲にしてきたことにようやく気づいたの。好き勝手やってきたけど、だれかがそのために犠牲になってくれてたんだって、やっとわかったの。そのときどきでやれることをやるって大事よ。でもそれは、だれかがやらせてくれるからこそやれるのよね。私知らなかった。人にはそれぞれの役割があるんだから仕方ないでしょって、ごうまんだった」
針の先が布を突きやぶるぽちっという音
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お縫い子として歌舞伎町で生きてくテルミーの話と、夏休みにお留守番バイトをする小学生の話。
栗田さんの本はマルコ以来二冊目なんだけど、相変わらずあのよくわからないもやもやしたものがずっと覆いかぶさっているのに文章はぱきっと明快で、本当に不思議な気分で読んでた。
うちのままはわたしが好き勝手やるために、ぎせいになってるのかもな、ってあの一文を読んでハッとする。それが親の役目であり、子を産んだ責任でしょとも思うけど、はたちをすぎた娘がなに言ってるんだか、だよね。
シューカツだって、やらせてもらっているのである。 -
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キノコそのものであるキノコと、キノコに運命付られた青年の物語です。白昼夢のような印象を受けますが、それもすべて菌類特有の生態と非常に親和的で、なんというか味わい深い。何度も言いますが、キノコのように。
小説は、起承転結や変化がそれなりにあることを期待されつつ、実はフラクタルです。つまり、どの一節からも、その小説世界自体が匂い立つ。テーマやメタファーに還元されきらない、その世界の全体性が文字の連なりとなって現出してきます。菌類のその生命の拡がり、連綿と続く不思議な分裂とも再生産ともつかない在り方と、よく似ていると思いませんか。その意味で、物語である物語をさっと楽しむのにはうってつけです。
ただし時々、若者は苦笑いしてしまうようなブラックな表現がぽっと置かれていますので、そこはキノコのアクだと思って咀嚼しなければなりません。