橋本福夫のレビュー一覧
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恩田陸の『鈍色幻視行』のおかげで読んだ。うわーめちゃくちゃ面白かった。
早川の文庫全集の出始めの頃に半分くらいまで揃えて、金欠でそのままになっていたのだけど、去年一念発起して本人執筆の分は買い集めた。でもまだほとんど読んでなかった。ミス・マープルものが好きなので、全部読むのがもったいないなあとか思ったりもして。
『鈍色幻視行』をAudibleで聞いていたら、登場人物がこの作品のネタばらししていい?いいわよ!とか会話してるので、だめだこれは!と慌てて読み始めた。
第二次世界大戦後のミス・マープル、年取って庭やら何やら思うようにいかなかったり、変わっていく村の様子に複雑な思いを抱いていたり。ミス・マープルのおうちに掃除機があるなんて想像できないなあ。彼女が本来の調子を取り戻していく感じがとても素敵で楽しい。妙に現代らしさを感じるというか、他人事に感じられない犯行理由だった。とてもつらい。にしてもさくさく殺しすぎである。ミス・マープルの機転がなかったらもう一人死んでたのか。
そして大好きな鎌倉殿の13人のラスト、アガサ・クリスティのマイナー作品をイメージしたという三谷幸喜のインタビューがあったのを、私にはどの作品のことか当時分からなかったのだけど。絶対これじゃないか!とより楽しくなってしまった。あの頃検索したりしないでよかったなあ。
好きな作家が二人も自分の作品に取り上げるような印象的な場面のある小説、ネタばらしなしで読めて本当によかった。危ないところだった。 -
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【マープル】
マープル2作目『書斎の殺人』から20年経って、クリスティー72歳の時の作品。
『書斎の殺人』の現場となった屋敷が、売りに出されたり、放牧場だった所が新興住宅地になっている。
美しい田園風景が時を経て近代化へと変わりゆく姿に寂しさを感じた。
この作品はポアロではなく絶対にマープルだ。クリスティーがマープルの年齢になってきて2人が重なる。
自分はポアロから読み始めたので、最初はマープルのことが好きになれなかった。
でも今ではマープルならば間違いないという安心感、同性だからこそわかる繊細な気持ちと、美しい田園風景のセントメアリミードが大大大好きだ。
この作品は今までと同じような作品だと思っていた。
でも読み終わった後は、今までにない悲劇に読んだ後もずっと辛かった。今も辛い。
小説なのにリアルな怖さがあった。
この作品はネタバレなしでは語れないので、ここからネタバレしてます。
今回初めて犯人に同情し、犯人と同じ気持ちになった。同じ立場だったら私も犯人と同じことをしてしまうかもしれない。
そのくらい今回の被害者は許せなかった。
こういう人の人間描写がクリスティーは抜群に上手い。
そして怖いのは、この被害者みたいな人は身近に普通にいるということ。
自分の周りにもこの被害者みたいな人はいるし、どこにでも結構いると思う。
この作品は実在するアメリカの女優の人生から着想を得て執筆されたと後から知った。
リアルだと思ったらやっぱりそうだったんだ…。
私はこういう作品は心に強く残りすぎて辛くなってしまう…。元気が出る音楽を聴いてリフレッシュしよう。 -
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ネタバレクリスティの長編ミステリー。ポアロシリーズ。ポアロが安楽椅子探偵を演じている作品。(結局は好奇心に敗れ行動してしまうわけだが)
クリスティ作品はある程度学生時代に読んでいたのだが(特に長編は沢山読んだ)今作は未読だったらしい。幸い、ポアロシリーズの目新しい作品を読んだ気分であり得した気持ちだ。作中、驚いた事にポアロがミステリーにのめり込んでいた(オリヴァの作品がお気に召さないのは彼らしい)ポアロのミステリー批評は面白いが、ポアロらしくない印象を受けてしまう。(作家や作品への言及はクリスティ自身を反映しているかもしれないが、クリスティとポアロが同じ批評になるとは思えない。)まただいぶ長いパートになっており少し疲れてしまった。ただし、後半になり、このパートが真相に大きな影響があった事に驚いた。ある意味伏線として作用しており、流石だと感心してしまった。
とある盲目の女性の家で、全く見ず知らじの紳士が殺害される。発見したのは家に派遣されたタイピストの女性シェイラであり、彼女は驚き家から飛び出した所で青年コリン(今作の主な語り手)に介抱される。警察到着後、捜査の結果、この家のものではない時計が当然のごとくおいてある事に気がつく。
一見、全く意味がわからない設定であり、この問題がどこに繋がるのか全く想像しなかった。
盲目のペプマーシュはタイピストの依頼もしていないし亡くなっている男性も知らない、家にある時計は二つのはずで、それ以外は自身が出かける早朝までは無かった。一方、タイピストのシェイラは会社の所長から名指しで電話があったと伝えられ、指示通り到着後死体を発見、死体は知らない人だし、ペプマーシュとも面識がない。
主な語り手のコリンは情報部員であり、このミステリーではスパイ探しの様な側面も並行して進められている。また、彼はかねてよりポアロの友人で、彼へ刺激を与え、兼ねてより椅子に座ったまま必要な情報だけで事件が解決できるという自尊心に悪戯してやろうという気持ちを秘めながらポアロを訪ねる。
ポアロ作品の中でもより安楽椅子探偵に近い役回りの作品だが、最後、ポアロの人柄が滲み出る(笑)犯人について、作中でとある事を仄めかしており、時計の謎については納得できる。
第二、第三の事件がなければ発見は難しいと思われる。完全犯罪たり得るのは、現代の様なセキュリティ社会では無いためであり、今回の様なトリックは不可能に近い。しかし、時計を置いた動機(犯人の一人が過去にとある理由で知り得たミステリーのオマージュ)というのは面白い。 -
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ネタバレエルキュール・ポアロ・シリーズ
ラマット国で起きた革命。アリ・ユースフ王から宝石を託されたの友人ボブ・ローリンスン。姪であるジェニファーの持ち物に隠された宝石。国からの脱出中に死亡したアリ王とボブ。ジェニファーが入学した名門校メドウバンク。入学手続きの時にジュリアン・アップトンの母親が目撃した人物。アリ王の従姉妹シャイスタの入学。彼女に送られる荷物を監視するために庭師として潜入したアダム。何者かに殺害された体育教師スプリンガー。殺害現場の体育館。ジュリアとジェニファーのテニスラケットの交換。校長の秘書アンのアリバイ。校長の引退と後継者の噂。殺害されたドイツ人教師ヴァンシッタート。後見人の公爵が学校を訪れる日に何者かに誘拐されたシャイスタ。ジュリアに送られたラケットと持ち去られた古いラケット。ラケットの秘密に気がついたジェニファー。ポアロへの相談。犯人を強請ろうとし逆に殺害されたフランス人教師ブランシュ。 -
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ネタバレ【再読】
中東のラマット国王ユースフの従妹シャイスタが通う名門女子校メドウバンク。ロニイは、公安課のパイクアウェイ大佐の命により、アダム・グッドマンの名で庭師として潜入することに。その最中、新任体育教師のスプリンガーが、室内競技場で何者かに射殺された。どうやら背景には、中東の消えた宝石が関係しているらしい。さらにはシャイスタが何者かに誘拐されてしまった。その後も殺人事件が立て続きに発生し、学校は混乱を窮めることに。
やがて生徒の一人がポアロのもとを訪れ、応援を要請する。
捜査の末ポアロは、秘書のアンを犯人だと名指しする。生徒の一人であるジェニファーのラケットに宝石が隠されていることを知ったアンは、それを奪うことを企んだ。その現場をスプリンガーに目撃されたため、彼女を殺害したのだった。
クリスティー作品には珍しい学園ミステリ。そこに中東での革命の動乱と消えた宝石が絡んでくる。読んでいる人のほとんどが「いやポアロわい」となること間違いなし。
●見どころ
・いつも以上になかなか登場しないポアロ
・膝を見れば女性の年齢がわかるポアロ
・学校の在り方に対する校長の考え方がいい
●名言
「学校は今日の子供たちのものよ。五十年前の子供たちのものでも、三十年前の子供たちのものですらないわ」