橋本福夫のレビュー一覧
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ポアロもの。
〈カヴェンディッシュ秘書・タイプ引受所〉に所属するタイピストのシェイラは、名指しで派遣の依頼を受け、依頼人の家を訪問します。
依頼人ミス・ペブマーシュは不在でしたが、指示された部屋に入ると、現在の時間とは異なる“4時13分”を指した複数の時計が置いてあり、さらにソファの横には知らない男性の死体が横たわっていて・・・。
「時刻のずれた複数の時計が置かれた部屋の中の謎の死体」
という、冒頭の事件現場のミステリアスな状況に、グイっと心をつかまれて、今後の展開への期待値が上がった状態で読み進めた私。
しかも、その家の主人で目の不自由なミス・ペブマーシュはそもそもタイピストを依頼しておらず、時刻のずれた時計も彼女の持ち物ではない事が判明。
殺された男性は何者なのか?
何故ミス・ペブマーシュの家に死体が?
部屋に“4時13分”を指した複数の時計が置かれていた意味は?
タイピストを依頼したのは誰なのか・・・しかも何故シェイラを名指しで?
等々・・
・・といった、数々の謎もそうですし、現場となった、“ウィルブラームクレセント(新月通り)”の住人達もクセツヨで、要素としては“面白さ目白押し”なはずなんですけど、何故か展開がヌルくて全体的にボンヤリした印象なんですよね・・んー、“つかみは上々”だったのに何ででしょう?
今回は、ハードキャスル警部と、彼の友人で諜報部員のコリンの二人がメインとなって調査にあたるのですが、彼らの調査やヒアリングがイマイチ雑というか、前述した“ウィルブラームクレセント(新月通り)”の住人達とのやり取りも、もしこれがポアロがヒアリングしたら、もっと彼らの“いい味”を引き出せたのでは?と思ってしまう訳でして。
コリンも、今回の事件と自身のスパイ活動の件と両方で動いている&ロマンスも絡んで、どれも中途半端な感じになっちゃったかなと。
因みに本作はポアロの出番が少なすぎて、“ポアロもの”というより“ポアロ友情出演”ってした方が良いかも?と思ってしまう程です。
とはいえ、終盤でサクッと真相解明しちゃうのはさすがポアロってところなんですけどね。
ただ、この真相も犯人の意外性はあったものの、気になる時計の意味とか薄すぎて“(ノ_ _)ノズコーッ.”てなりましたw
ということで、“素材を活かしきれていない”勿体なさはありましたが、何だかんだで楽しく読ませて頂きました。
中盤で、ポアロが“推理小説論”を熱く語る場面とかもなかなかレアでしたしね~。 -
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ポアロもの。
中東のラマット王国で革命が勃発。
国王のアリは、お抱えパイロットのボブに莫大な価値を持つ宝石を託します。
ボブはその宝石を“とある場所”に隠し、その後アリと共に国外脱出を図るも後日彼らの死亡が確認されてしまいます。
一方、ボブの姪にあたるジェニファーが通う名門女子校・メドウバンクで新任の体育教師が射殺されるという事件が発生して・・。
宝石の行方と女子校で起こった殺人事件という二つの謎を巡る、サスペンス&ミステリ仕立ての内容です。
さらに、学校が舞台ということで生徒達や教職員の人物描写が冴えわたり、例えばメドウバンク校長であるバルストロード先生の、今後の学校経営(方針)を踏まえての後継者をどうするかという葛藤等、登場人物達の心情が丁寧に描かれているのが、さすがクリスティーですね。
本書は、ポアロものとしては異色と言っていいほどポアロが全然出てこなくて、ポアロものだということを忘れた頃にようやく登場します。
因みに、今回ポアロに事件解決を依頼する少女・ジュリアの知人・サマーヘイズ夫人って『マギンティ夫人は死んだ 』での“ポアロの残念な滞在先”のご婦人ですよね?(違っていたらスミマセン)
で、ポアロが登場するともう急展開で、サッサと情報収集して、ちゃっちゃと解決しちゃうという・・・うん、これぞポアロ!って感じでございます~。
犯人については、“第二の殺人”が意外な真相でして、それが解ったと同時に思わぬ悲劇が起こってしまったことに、しばし唖然となりました。
そして、肝心の宝石の最終的な所有についてですが、個人的にはなかなか粋なオチだったのでは?と思っております。
ところで、今回何気にご活躍のジュリアでしたが、彼女の母親・アップジョン夫人も、犯人特定のキーパーソンということで、太川陽介&蛭子能収ばりに“トルコ・アナトリア地方、ローカルバスの旅”を満喫していたところを強制帰還させられていましたので、この度ジュリアが“ご褒美”を貰えたこともあり、今度は母娘一緒に豪華な旅でも楽しめたら良いかも・・と勝手に思った次第です~。 -
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都市化が進むセント・メアリ・ミードと、ミス・マープル自身も老いを感じる今日この頃。懐かしい人々のことを思い出し、少しセンチメンタルになるマープル。
大物女優とその夫が移り住んだゴシントンホールは、かつて『書斎の死体』で死体が発見された曰く付きの場所。そこで開催されたパーティには、多くの周辺住民が参加する。そしてそこで、野戦病院協会幹事のヘザー・バドコックが殺害される。
ヘザーはパーティの主役でもある女優のマリーナと間違えて殺されたのか、それともはじめから彼女自身が狙われたのか。全ての鍵は、ヘザーと対面した時にマリーナが浮かべた「凍りついたような表情」にあった。
立て続けに殺人が行われるものの約450ページとやや冗長に感じるが、全ての真相はマリーナの仕草に集約されているので、それを推理しながら読むと面白い。最も、終盤に入りマープルが目撃者たちの言葉を正確に検証するあたりで大方の予想はつく。
当事者であれば理解できるであろう殺意の描き方が巧み。
変わりゆく村でも情報の伝わるスピードは健在で、人々の在り方や価値観の変化にもクリスティは常に目を向けている。 -
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冒頭の映像的なシーンで事件発生もその後は落ち着いた感じで展開し終盤になって色々と動きが…ミス・マープルがすっかりおばあちゃん扱いになってるが、ミス・マープルを実際に読むまで思っていた「安楽椅子探偵」のイメージにはこの方が近いかとも思う。
有名女優が近所に引っ越してきてそこから起こる騒動は、何だか現実味のない設定ではあるがドラマとしてはとても面白かった。色々とスッキリしない部分も残ってはいるが、まぁ隅々まで整合性を求めなければ読後感も中々にスッキリする。後は何を言ってもネタバレになりそうなので黙っとこ。
個人的には前作『パディントン発〜』登場のルーシーの活躍する話しも見たかったなとも。 -
Posted by ブクログ
ポアロもの5篇と、ミス・マープルもの1篇が収録されている、中短編集。
「はじめに」の中で、本書はクリスティー曰く“料理長のおとくい料理集”とのことで、ポアロとマープルが一冊でお楽しみ頂ける、小粋なクリスマス・プレートとなっております。
個人的に好きだったのは、表題作の第一話「クリスマス・プディングの冒険」。謎解きは勿論、まさにこの時期にぴったりな、英国の伝統的なクリスマスの雰囲気を味わえるお話です。
舞台となる一家の少年少女たちが、ポアロにドッキリを仕掛けようとするのも微笑ましいですね。
特に、コリン少年が朝にポアロを起こしにいった時に、ポアロのかぶっているナイト・キャップ目にしたとたん“声帯が一瞬間動揺させられた”(多分、吹きそうになったのでしょうねww)という、シーンは思わず笑ってしまいました。
他の作品も、冒頭のポアロと“有能な”秘書、ミス・レモンとのやり取りが楽しい第二話「スペイン櫃の秘密」、クリスティーならではの人間模様を堪能できる第三話「負け犬」等々・・色々なお味を楽しめます。
そして、第六話「グリーンショウ氏の阿房宮」では、ミス・マープルものをコンプリートしてから、ご無沙汰だったマープルさんに再会できて嬉しかったです。
と、いうことで、クリスティーのクリスマス・プレート、美味しくいただきました~。