雪舟えまのレビュー一覧
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そこはここよりも(たぶん)ずっとずっと遠い惑星。家と対話する「家読み」の仕事をしている〈私〉は、仕事先の家侵入していた子どもっぽさの残る若者と出会う。彼は日本コロニー製のナガノ型のクローン。外せば手首の吹っ飛ぶという手枷を付けたナガノは、つらい労働環境から逃げてきたらしい――。
たとえば不思議な季節の流れがあったり、不思議な生物がいたり、聞き馴染みのない職業があったり……初めて見聞きするその世界を構築する存在たちが、どこか懐かしさを持って胸にしみてくる。言葉によって編み上げられた世界の魅力を改めて感じるような作品集でした。きっと折りに触れて、タイトルや表紙を見るたびに、こんな素敵な世界が -
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大変申し訳ない話なのだが、作家さんを知らずに、この本を購入した。理由は…個人的には毎度お馴染みとなるジャケ買い。表紙が見て分かる人には分かる人気漫画家さんのイラストだったからだ。この漫画家さんが好きで、他にもジャケ買いで小説を買ったりしている。
なのでビジュアルばかりに気を取られ(なんか歌詞っぽくなった)、内容や作家さんについては失礼ながら特に気にしていなかった。
でも、それを後悔する日がついに来ようとは…。
物語は、誰にもに愛されずに育った少年・緑が、誰からにでも愛されて育った少年・楯に恋をするお話。
一言で言ってしまえば、BL小説。
けれど、その一言で語っていいのか、私には躊躇わ -
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アンソロジー「短編宇宙」に収録の、二人が主人公の話が気に入ったので、読んでみた。
いやこれは参りました。
設定は近未来だけど、要は学園ラブコメというか青春グラフィティというか、家庭の事情とBL(そこに葛藤はないので、同棲であることが問題にならなくなった未来という時代設定と思われる)という要素は絡むものの、恋愛メインの割とシンプルな内容。
そういう話はあまり興味ないのに、これはグッときまくって、参りました。
文庫の帯には「宇宙一ピュアで切ない恋の軌跡」と陳腐なこと書いてるけど、いや、判る。そうかもしれない。
嬉しい楽しいの感情はハイテンション(あくまで内心)な一方、辛いことは淡々と状況だけを語 -
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ネタバレ久々に全部好きな話が詰まったアンソロジーだった。
何よりインパクトがあったのはラストの町田その子さんの「六年目の弔い」。最後にとんでもない爆弾をぶっ込んできたな…。
設定の時点で結構突っ込んだ内容になりそうだったけど、その中で珠美と志乃がいい関係性になれてほっこり終わるのかと思ったら最後に胸がざわつく展開に。
冠婚葬祭の中で、一番無難そうで難しいテーマの「婚」がSFだったのも面白かった。普段SF読まない人間でも読みやすくて好きな話だった。雪舟えまさん、他の作品も読んでみたいな。
寺地はるなさんも安定して好みの作品。40代の幼馴染たちがバタバタする話って微笑ましい。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ嶋津輝「漂泊の道」
葬式の時にしか会わない遠い親戚との話。自分の母親の兄の奥さんの妹の娘、遠すぎてものすごく考えた…その親戚、カナさんと4回顔を合わせ、その後、父親の後妻になっていた、そんな複雑でもあり得そうな話。何度登場してもカナさんはステキで、自分に対してもハッキリ物申す人で憧れていたのに、いつか違う感情を抱くようになっていた。薄く長いスパンの付き合いの親戚ならではの動きのあるストーリーだと思った。
町田そのこ「六年目の弔い」
哀しみを共有してくれる人がいて必要と思えば手を差し出し触れ合える、それがありがたかった
というところ、が身にしみる。
亡くなった人は、思い出の中でしか生きられない