あらすじ
建物と対話をし、そこに住む人びとの知り得ぬ事柄を聞くことができる“家読み”のシガは、ある惑星で行き場を失ったクローンのナガノと出逢う。ともに旅をすることになった二人は、互いの存在を通して世界の豊かな一面を知っていく(「とても寒い星で」)。“塔の中”と呼ばれる特権階級の官吏でありつつ世間に違和感を覚える「私」は、家出中の若者を助けたことから新たな生きる意味を獲得する(「シールの素晴らしいアイデア」)。四篇収録の単行本に、文庫化に際して新作二篇を追加して贈る、歌人でもある著者の類い稀な言語感覚で描かれる超未来のハートウォーミング・ストーリーズ。/【目次】とても寒い星で/徐華のわかれ/シールの素晴らしいアイデア/銀河ボタン/二人という旅/CLONEHOOD DREAMS 1 この星の皆(みんな)があなたと/解説=泉谷瞬
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Posted by ブクログ
とんでもなく素敵な作品に出会ってしまった……
どこか遠い未来を描いたような物語。
冷たい静けさに支配される惑星のなかで、
いちばん強く感じられるのは、
「誰かと一緒に生きる」ことのあたたかさだ。
あまりにも好きな世界観すぎて、
読み終えてすぐに続編の『辺境恋愛詩』を注文しました…!
『凍土二人行黒スープ付き』雪舟えま
家と会話することができる「家読み」のシガと、
日本人の青年の姿をしたクローンのナガノ。
シガはあることをきっかけに
ナガノと行動をともにするようになり、
やがて二人で生きることを選んでいく。
もうね、なんだかどうでもよくなるほどの「愛」なのだ。
男×男とか、人間×クローンとか、
そういう言葉で整理するのが無粋に思えてしまうくらいの愛。
あらゆる固定観念や性差に縛られず、
自由に生きるシガとナガノの関係が
なんとも心地よい。
✧
二人は惑星を静かに旅していく。
シガは「家読み」として、ナガノはその助手として。
SF小説なのに、
不思議とノスタルジーを感じる懐かしさがあって、
少しだけきゅっと胸が締めつけられるような切なさもある。
そんな「好き」がこの本には詰まっている。
シガとナガノの物語だけではなく、
公務員サバと、歳の離れた学生シールの出会い、
少年リョクと、不思議な生き物キンの関係も描かれる。
そう、誰に何と言われようと自由でいいのだ。
お互いを必要としている。
それだけで、もう十分なのだと思う。
✧
宇宙そのものの色をした切なさが私のすみずみまで浸透する。
そうだよナガノ、私はそれでも君のための人間になったんだ。
(P262)
歌人でもある雪舟えまさんの表現の、
なんと美しいことよ……
Posted by ブクログ
とても好きなお話だった。
静寂感のあるSF作品なのに、ちょっとほっこりするところもあって、不思議な雰囲気だった。
シガとナガノの出会いと2人の旅がメインで、特にこの2人の話が好きだった。
性別を超えた世界観がなんだか心地よくって、アクシデント的な結婚も、なんだかほんわり暖かい感じがした。
続編が出るようなので、読みたいな。
Posted by ブクログ
そこはここよりも(たぶん)ずっとずっと遠い惑星。家と対話する「家読み」の仕事をしている〈私〉は、仕事先の家侵入していた子どもっぽさの残る若者と出会う。彼は日本コロニー製のナガノ型のクローン。外せば手首の吹っ飛ぶという手枷を付けたナガノは、つらい労働環境から逃げてきたらしい――。
たとえば不思議な季節の流れがあったり、不思議な生物がいたり、聞き馴染みのない職業があったり……初めて見聞きするその世界を構築する存在たちが、どこか懐かしさを持って胸にしみてくる。言葉によって編み上げられた世界の魅力を改めて感じるような作品集でした。きっと折りに触れて、タイトルや表紙を見るたびに、こんな素敵な世界があったなぁ、と思い出して嬉しくなるんだろうな、と思わせる、とても余韻の良い一冊です。