川島真のレビュー一覧

  • 冷戦後の日本外交(新潮選書)

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    おそらく21世紀では最高の外交・安全保障に関する政治力が高かった政治家・高村正彦による回想録。正直な話「外交の安倍」という評価の8割はこの人が後ろで支えていたお陰だと思っている。
    冷戦が終結し、世界の枠組みが変わっていく中で旧来の「9条平和論」に拘泥していた政・官を根気強く変えていった著者の苦労が読み取れる。
    当時はあまりそんな感じはしなかったけど小泉さんとはかなり険悪で安倍さんとはずっと仲良かったんだね。小泉時代に総裁選出てたとはいえそこは意外。
    終盤は憲法9条論における芦田修正の根拠のなさと砂川事件の唯一の判例性に触れていたのが面白かった。判例を絶対視しすぎるのもどうかと思うけど、現状それ

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    2024年12月30日
  • UP plus 習近平の中国

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    ネタバレ

    中国の考え方が包括的に理解できる。
    中国では補助金よりもベンチャー投資の形式の方が効率が良いという認識。
    中国の高齢化は学歴がない人が多い層になる。
    統制により萎縮してしまうリスクがある。
    欧米は中国に対して、アメリカの考える民主を輸出しようとしているという認識。
    中国では政権維持のために人権制限は優先されるという考え方。
    覇権の意味が欧米は価値中立的な意味だが、中国はネガティブな意味。

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    2024年08月09日
  • ユーラシアの自画像 「米中対立/新冷戦」論の死角

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    米中対立が枠組みのようになり、例えばグローバルサウスなど多様な主体があるにも関わらず主語が米中で語られるのはおかしいのではないかという問題意識を持った多くの研究者による編書。中国やロシアの研究者はもちろん、朝鮮半島や東南アジア諸国の専門家もそれぞれの章を書いている。最新の同時代的研究として興味深かった。

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    2023年12月14日
  • UP plus ウクライナ戦争と世界のゆくえ

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    ロシア・ウクライナ戦争について7人の研究者の視点から冷静に分析した論文集。
    単純な善悪二元論には収まらない世界の冷徹な現実をまざまざな角度から示してくれる好著。


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    2022年08月21日
  • 決定版 日中戦争(新潮新書)

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     日本の行動を見ると、遅れた戦争をしているとつくづく思う。まるで第一次世界大戦時のドイツの劣化コピー。
     第一次世界大戦時のドイツも皇帝・軍部・政府・議会・各州各地域に権力が分散していた。第一次の時に敗戦したことが権力集中を可能にし、皮肉にもヒトラーの台頭につながったといえる。
     第一次の敗戦を経験していない日本には権力集中など土台無理な話。元老たちが世を去って逝くにしたがって、中心は失われていった。そのため本の帯にあるように「ズルズル」現場に引きずられながら、いたずらに拡大に拡大を重ねた。

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    2019年01月28日
  • 超約 中国の歴史

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    「超約歴史シリーズ」は、ある地域の歴史を一冊で体系的にまとめ上げるという“試み”なのだろうと思う。一冊という制約の下で、如何にわかりやすく、どのように取捨選択が行われ、体系的に説明がなされるのか。本シリーズは、そういった他の歴史書には無い、特別な楽しみを供給してくれていると私は感じる。特に本作「超約中国の歴史」は、漢字圏の民では無く、なんとオーストラリア出身の方が書かれたもので、極東に住む我々には見えなかった、独特な視点を提供してくれている。しかし、本書は翻訳本ということもあり、英語圏向けの内容となっているなと、所々で感じてしまう。例えば、中国のことわざを英語圏のことわざで例えていたり、漢字の

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    2025年10月11日
  • UP plus ウクライナ戦争と世界のゆくえ

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    各分野の碩学による評論集。

    ロシア−ウクライナ関係そのものではなく、今般のロシアの暴発を受けて欧州、米国、中国、中央アジア、中東等の対外政策がどうなるのかを考察する。

    紛争地である欧州にどうしても一つ目が向く中、周辺地域の動きが俯瞰できて興味深い。

    共通して言えるのは、今般の紛争が世界の変化を方向付けるのではなく、すでに多く起きつつあった変化を加速するということだろう。

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    2023年04月12日
  • UP plus ウクライナ戦争と世界のゆくえ

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    ウクライナ戦争について、各地域の国々の考えとそこにいたる歴史や背景(特にロシア及びアメリカとの関係)の考察が興味深かった。日本の報道だと、欧米各国の反応はよく報じられるが、中央アジアや中東等はあまり触れられないので、勉強になった。
    (誤字脱字等が多かったが、急ぎ出版したので仕方ないのかなと思う)

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    2023年01月25日
  • UP plus ウクライナ戦争と世界のゆくえ

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    ウクライナ戦争についてのジャーナリスト的な本はたくさんでていて、どれも役にたつものだが、これは一味違った視点を与えてくれるものであった。

    東京大学出版会からの本で、主として東大の教授などが中心となって執筆した論文集。

    ロシアの侵攻に対する国よって異なる考えがあることがさまざまな地域の専門家が冷静に分析してある。

    複数の視点をもつこと、価値観を共有することが難しい多極的な世界をどう理解するか、どう捉えるか。

    と言っても、価値ニュートラルな相対主義的な世界にとどまることは、今回の戦争は倫理的に許されないという感覚がある。

    そのあたりをしっかり考えるのに役にたつ。

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    2023年01月16日
  • 決定版 日中戦争(新潮新書)

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    有識者5人により日中戦争について書かれた本。3部10章から成り、5人で各章を担当している。特に、戸部先生と庄司氏の内容が素晴らしく、勉強になった。

    「(日中専門家による共同研究)太平洋戦争の勃発によって中国は、世界大の「反ファシズム統一戦線」の重要局面である中国戦線を一手に担い、日本軍を消耗させたがゆえに、連合国の「世界反ファシズム戦争」の勝利も実現した、という第二次世界大戦像は動かしがたいことを確認することになった。中国以外の連合国が抗日戦争の勝利に貢献したという側面が入る余地は少ないのである。以上のような傾向は、現在の習近平政権になって、さらに強まりつつある」p5
    「(リットン報告書)報

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    2022年05月08日
  • 決定版 大東亜戦争(上)(新潮新書)

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    冒頭が太平洋戦争ではなく大東亜戦争というのでイデオロギー色の強いものかと思えばさにあらず。太平洋という米軍相手のものではなく、英米中ソとのそれぞれにある程度独立したものが重なった複合戦争で広域で行われたことと、戦争目的が開戦時の自存自衛から大東亜新秩序建設に変容していったことを主な理由としている。

    その前提の下、各章は別々の著者の下、オムニバス的に展開されるが、英米の戦争指導を概観した2章、中国国民党・共産党の戦争観や指導方針についての3章、財政金融面からの6章が、自分にとっては大東亜戦争を見る新たな視点として、特に面白かった。

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    2022年04月10日
  • 決定版 大東亜戦争(下)(新潮新書)

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    特に第7章戦争指導体制、第9章戦争終結、第11章賠償問題が勉強になる。個人的には下巻の方が面白かった。
    ・日本は統帥権を実務レベルで調整する仕組みを最後まで持たず、大本営会議は報告の場に過ぎなかった。これは、デモクラシーのイギリスが戦時独裁を許容したこととの対比で興味深い。
    ・日米間に存在した信頼関係のためポツダム宣言を受諾することができた。

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    2022年01月10日
  • 決定版 大東亜戦争(下)(新潮新書)

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    上巻に続いて、下巻では大東亜戦争や太平洋戦争と言う名前付けや、戦後の皇族のアジア諸国に対する慰霊の旅や戦争終結に向けての動きなどが書かれています。
    大本営と言う存在が上手く機能せず、軍部が勝手に動いて、中国での戦争の場を広めていく。政治家である民が軍をコントロールしないといけないが、それが出来ない国は滅びていく。

    今回印象的だったのが、外交の大切さではないかと思いました。長い目で見て、譲るべき所は譲り、機が熟したら、果敢に攻める。しかし、軍隊は短期的な視点でしか見れない、目の前の利益を手に入れないといけないから、譲ることはないという。人の本能の様なものかもしれませんが、戦争ほど非効率的なもの

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    2021年10月27日
  • 決定版 日中戦争(新潮新書)

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    日中戦争は、本当によくわからないものだったので、一つの理解の筋を得られたように思った。はじめてしまったら、なかなか終われない。なんでとそうだが、難しい。終結の難しさ。御前会議での陸軍の頑固さは何かと思っていたが、中国での戦いを考えると、確かに理解出来る面がある。目の前の相手に、全く負けていないのに、降伏せざるを得ない。それは出来ないなぁ、と。でも、全体を見渡すと、降伏せざるを得ない。

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    2019年03月01日
  • 決定版 日中戦争(新潮新書)

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    229頁2行目で、
    カイロ会談当時、「中華民国国民政府主席」であったはずの蒋介石の肩書きは「総統」と書かれる。
    専門者にとっては、とんでもないミスではないか...

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    2018年12月19日
  • 冷戦後の日本外交(新潮選書)

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    なんかいまいち。

    長く外交、安全保障に関わってこられた高村正彦氏のオーラルヒストリーらしいのだが。

    なんか、名前くらいは知ってるおじさんの自慢話。
    実は俺が裏で動いてたんだ、俺は王道、自分の考えで進んできて、一本筋が通っている。
    俺の一言で色々決まったんだ。

    そうかもしれない。
    そうじゃないのかもしれない。

    取り巻きが集まって持ち上げながら持論を展開している。
    ご本人も、なんだかちょっと面倒臭そうな感じが伺えて、特段裏話的なもんもないし。

    まあなんと言うか、結果今、石破政権で日本はとんでもない方向へ落ちかけてるんですが、その辺どうすか。それ踏まえての、雑談?

    でも、「内政の失敗は内

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    2025年01月29日
  • 決定版 大東亜戦争(上)(新潮新書)

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    そういう史観の本では無い。どちらかと言えば、下巻の方が読みやすかった印象。
    太平洋での英国と表題に関わる呼称の話は、あまり目にしたことが無かったので興味深かった。

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    2024年10月08日
  • UP plus ウクライナ戦争と世界のゆくえ

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    世界情勢などについて知識が浅い自分にとっては、こちらを読むのにかなりの時間を要した。
    この戦争に際しての各国の動きについて、ニュースを見ているだけでは知ることの出来ない部分を広く知ることが出来たように思う。
    どの章も客観的に冷静に話が進められており、特に偏った思考はなかったので、読んでいて感情的になることはなく、淡々と情報を得ていく感覚だった。
    読み解くのは大変であったし、内容が頭に入り切ったとは言えないけれど…。
    それでも読む前よりは視野が広がった気がするので、読んで良かったです。

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    2024年10月05日
  • UP plus 習近平の中国

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    習近平が主導する中国について12の視点から論じられた論文集。専門性高く情報の質も量も半端ない。内容をきちんと消化するには自分の能力が足りてない。

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    2023年02月23日
  • 決定版 大東亜戦争(上)(新潮新書)

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    最初は「失敗の本質」のような戦略面からの日本の失敗を書いたものかと思いましたが、日本という立場だけでなく、アメリカやイギリス、そして中国から見た太平洋戦争と言うのが興味深かったです。
    先進的なアメリカでも、海軍や陸軍で利益が異なり、一枚岩てなかったと言うのも始めてしりました。ヨーロッパと太平洋の2面同時に動けるのはアメリカぐらいかもしれませんが。ドイツこそが本丸と言うのも、納得出来ます。
    中国もまた終戦間際に、日本からの和平を持ち込まれたりとした話もあったのですね。
    今の政治家と、戦中の政治家は、そんなに変わらないのかなと想います。他人事のようですからね。

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    2021年10月21日