あらすじ
異例の3期目にはいる政権は何をめざすのか?
経済発展、少子高齢化、イノベーション、環境問題、統治体制、民主化、人民解放軍、新疆ウイグル、香港、台湾、外交戦略、日中関係など様々な課題・政策・理念を最新の知見をもとに分析し、今後を見通す中国研究の最前線。
【「はじめに」より】
……習近平政権の輪郭を理解することはある程度できるのだが、日本から見ていると中国はわかりにくい。日本社会には、中国は分裂するものであるとか、社会にまとまりがないとか、権力闘争があるとか、一君万民、上位下達であるとか、さまざまな見方が流布している。隣国ゆえの経験則の結果だとも言えるだろう。かつて、共青団vs.太子党vs.上海派という見方が広がった。これは三国志的な理解と重なったのだろう。そして現在も、この三派の対立、あるいはそのようなものを敢えて探そうとする向きが強い。一旦、ステレオタイプ化した見方が広がると、なかなかそこから脱することができない。また、近代以降に日本が身につけた西洋近代、先進国的価値観や、冷戦期前後に形成された、社会主義、共産主義への懐疑も根強い。そして、日中間の(すでに中国側にも、日本の若年層にもないかもしれない)ライバル意識があるためか、日本を抜き去る/去った中国への懐疑や衰退願望などもあるのかもしれない。いずれにしても、中国を観る際には、さまざまな「眼鏡」が眼前に立ちはだかり、またいろいろなバイアスが思考のプロセスに入り込んでいるようでもある。これはその日本社会で中国研究をおこなっている研究者にも言えることかもしれない。
【主要目次】
はじめに――問いの解説(川島 真)
I 中国の発展は保たれるのか 中国の経済発展はサステイナブルなのか(川島 真)
1 中国経済はバブルだったのか もしそうならバブルは弾けるのか(岡嵜久実子)
2 中国はイノベーション大国となれるのか(高口康太)
3 高齢化は中国に何をもたらすか(片山ゆき)
4 環境問題の解決はどこまでできるのか(大塚健司)
II 中国共産党の統治は保たれるのか(小嶋華津子)
5 共産党は「良い統治」を実現できるか──法の支配、党組織の健全化、社会の安定化(金野 純)
6 「中華民族の父」を目指す習近平、あるいは「第二のブレジネフ」か「第二のプーチン」か──権力、理念、リーダーシップ、将来動向(鈴木 隆)
7 中国は民主化しないのか(小嶋華津子)
8 人民解放軍は暴走しないのか(八塚正晃)
III 中国はどう世界で振る舞うのか(川島 真)
9 中国では「人権」をどのように考えているのか──「少数派」と周辺地域への帰順の強制(倉田 徹・熊倉 潤)
10 中国の目指す覇権と国際秩序とはなにか(山口信治)
11 習近平は台湾を「統一」できるのか──対台湾政策の理念・政策・課題(福田 円)
12 日本は中国とどう付き合うべきか──崩れゆく五要因と新たな関係構築の可能性(川島 真)
あとがき
【編者】
川島 真(かわしま・しん):東京大学大学院総合文化研究科教授
小嶋華津子(こじま・かずこ):慶應義塾大学法学部教授
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Posted by ブクログ
中国の考え方が包括的に理解できる。
中国では補助金よりもベンチャー投資の形式の方が効率が良いという認識。
中国の高齢化は学歴がない人が多い層になる。
統制により萎縮してしまうリスクがある。
欧米は中国に対して、アメリカの考える民主を輸出しようとしているという認識。
中国では政権維持のために人権制限は優先されるという考え方。
覇権の意味が欧米は価値中立的な意味だが、中国はネガティブな意味。