宮本常一のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
明治から戦後すぐのあたりまでの、農村の生活や庶民の暮らしぶりを伝える名著です。
舞台が四国、山陰、東北などということもあって、暮らしは質素で貧しい。
その中にあっても、素朴にして明るく、そしてたくましく生きてきた庶民の生活や営みが生き生きと描かれています。
当時の日本の地方部って、ある意味では民話の世界だったんだな。
興味をそそられたのは、夜這いや性にまつわる話が頻繁に出てくること。
性に宗教的タブーのなかった日本ならではの現象かもしれませんが、老人が昔の思い出として夜這いのことを語るさまや、農作業での女性の明るいエロ話など、性に対する疚しさは感じられず、むしろカラッとした解放感が見られるの -
匿名
購入済み何気なく読んでみた本であるが、非常に興味深い内容で、すぐに読み終えてしまった。現代の都会に住んでいると、決して知ることのない村の生活について知れて、視野が広がったように感じる。
-
Posted by ブクログ
記憶に残るようなニュース性のある大きな出来事だけが歴史ではない。そこで語られない大衆の生活も歴史の基本であり、それを研究するのが民俗学であり民俗史である。という事で、歴史関係の書籍から零れ落ちそうな真の日本人、忘れられた大衆に目を向けるのが本書、という内容で抜群に面白い。
ただ、非常にエロい。そうか日本人は性に開放的だったのかという事で、これは間違いでは無さそうだが、少し実体験に沿って考えてみる。
とある仕事の関係で、業界の会合の話を聞いた。そこは、同業他社が集結するため、いわゆる公正な取引に反しないよう「話してはいけない事」というルールが存在する。そうするとマーケットの話などは軽々しくで -
Posted by ブクログ
とても興味深く読んだ。しばらく前に100分de名著で放送されており、その際に面白そうと思って購入していたが、読めずにいた。今回、機が熟して読んでみたが、想像以上、期待以上に面白みを感じた。
東日本で育ち、東日本を出たことのない身としては、違和感があったがそれも、東と西では違う、とのことで納得。伝承者、というにはあまりにおおらかな土地の人々の話は、つい笑顔になってしまうような話が多くあった。
油を売る、という言葉が当時当たり前だったけど、それを文字で説明することの意義。そんなところで、ふと、子供の頃、トマトに砂糖をかけて食べる、ということを職場で話した際の皆の反応が面白かったことを思い出した。私 -
Posted by ブクログ
Eテレ100分de名著で宮本常一をやってたので、思い出して手持ちの本を再読しました。
冒頭の章は「塩の道」。ん?山の話じゃないの?と思わせておいて、海で作った塩を山奥の村に運ぶ道について説きおこし、山で暮らし仕事をするサンカ、木地屋、炭焼きなどの生業を解説したかと思うと、そこから落人の末裔がどのように集落を作って暮らし、里の支配者に滅ぼされていったかという歴史の話に転じていきます。
とにかく一つ一つの事柄が山より高く海より深い知識に裏打ちされていて、連れていかれる方はたまったものではない、と、いつも思います。(私が浅学なためそう思うのかもしれませんが)
ジェットコースター好きな方は、宮本民俗学 -
購入済み
村落自治に民主主義の祖型あり
司馬遼太郎「私の三冊」の一冊。主に江戸期から昭和30年頃までの西日本における村の暮らしを当事者インタビューで描く📝昔の村落の運営は、直接民主主義に基づき、皆対等な立場で様々な知識を持ち寄って熟議を凝らし、意見対立による禍根を未然に防いでいた。これは民主主義の本来のあり方を示唆する。令和の民主主義は、論破至上主義とSNS上の罵倒の連鎖から、著しい断絶を生んでいるが、民主主義自体を憂うのではなく、その劣化を憂わななければなるまい📝それにしても「土佐源氏」の後家ハンターぶりは凄い。男は女に対して、例え体目当てでも、心から寄り添って、存分に甘えさせれば、そこに偽りの愛ではなく真実の愛が生まれるようだ📝
-
Posted by ブクログ
本書は、民俗学の巨人・宮本常一氏が生涯にわたる実地調査から得た着想を基に、日本文化の形成過程を探求した遺稿集です。
著者は、単に古典文献の解釈にとどまらず、東アジア全域を視野に入れながら、稲作や畑作の伝来、海洋民と床住居の関係など、日本文化の源流を徹底的に掘り下げています。『古事記』『日本書紀』はもちろん、『万葉集』『風土記』といった貴重な文献にも新たな光を当てています。
特に注目すべきは、長年各地の民俗を実地に調査してきた著者ならではの問題提起です。畑作の起源、床住居の由来など、従来の通説に一石を投じる鋭い指摘が随所に見られます。文献資料だけでは看過されがちな民俗実態から、日本文化の淵源 -
Posted by ブクログ
忘れられているが、忘れてはいけない日本人の姿。戦前から戦後まもなく日本全国の民間伝承を調査した民族学の名著。
長崎の対馬を先祖に持つ関係で読んでみました。初めの章にこの地方のしきたりや伝承が載っていました。
この本に登場する日本人は、司馬遼太郎さんが、理想としているような鎌倉武士の起源を原形とする姿ではないかと思い浮かびました。
特に宮本常一の祖父の宮本市五郎の話は胸を打つ。…仕事(百姓)を終えると神様、仏様を拝んでねた。とにかくよくつづくものだと思われるほど働いたのである。しかし、そういう生活に不平も持たず疑問も持たず、一日一日を無事にすごされることを感謝していた。市五郎の楽しみは仕事をして -
Posted by ブクログ
民俗学、やはり最高。
あとがきで自分を卑下しまくっているが、日本全国を歩き、普通の人達の普通の暮らしを書き残したものを我々が読めるというだけで圧倒的に偉業なんですよね。
しかも読んでてとてもおもしろい。
昔の人は性についておおっぴらに話しまくっていたことや、季節の折に玄関を訪れる旅芸人や、祭りだけが年通して少ない娯楽だったこと、海から遠い地域では塩がとても大事だったこと、昔の人は基本的に生活に必要な小物はすべて自分たちで作っていたこと、食事は主菜副菜というのではなく、芋だけとかそういうものも多かったことなどなど、少しだけ前のはずなのに、今の生活とは圧倒的に違う庶民の生活をとてもリアルに感じる -
Posted by ブクログ
「みんなの民俗学」を読んでからまた民俗学づいている。
民俗学の本、読んでるととても楽しい。なにか知識として身についている気は特にしないが、きっともっと大事な何かが身についているはず!
民俗学って、「普段の生活」が時間が経つと「学問になる」というのが面白いと思っている。いっそのこと、今この瞬間が既に民俗学の対象になりうるわけだし。
この本は江戸から昭和あたりの人々の暮らしー農民、出稼ぎ、行商、丁稚奉公、女性の仕事など、なんかよく見るテーマから、物乞い、被差別職業、人身売買など、おおっぴらに語られなさそうなものも研究対象の一つとして平等に紹介しているのがとても良い。
ただ、それぞれ一つのテーマを