宮本常一のレビュー一覧
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「海上の道」柳田国男
柳田の最後の著書であり、様々な論議を呼んだこの論文を私は初めて読んだ。「日本人の祖先が、南方海上より流れ着いた人々であった」という論旨そのものは、現在では明確に批判・訂正されているので、改めて読むモチベーションがなかなか持てなかったのである。この全集では、まず「文学」として読もうとしている。「科学」と対立する文学という意味で、私も確かに文学であると思う。構造はほとんど随筆だからである。柳田は、青年の頃拾ったヤシの実からこの論を立てている。私は勘違いしていたが、ヤシの実を沖縄の浜辺で拾ったのかと思いきや、伊勢の浜辺で拾ったのである。そこから、様々な思いと民俗事象を述べた後に -
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(01)
山の可能性を描いている。一見すれば、本書は過去へのノスタルジーに支えられているようにも見受けられるが、著者が未来の未来を見据えたときに現われた山の生活(*02)と読むこともできる。交通、生産、信仰、闘争など山にありうる生き様を、著者が山を歩きまわるうちに出会ったものを根拠に示そうとしている。
(02)
この生活は過去の日本列島の生において一般なのか特殊なのかと考えたとき、その動的な可能性に力点が置かれている。つまり、人は山を生産手段も求めることもあるし、里に暮らすこともあり、そのときそのとき、その場その場で、しのいでいる人びとの選択や意志も見えてくる。そして人びとの移動が単一でない -
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民俗学者である宮本常一氏の著書、人里離れた山中で暮らす人々について考察する作品。
人が山で暮らすようになった経緯は色々だが、もともと山で狩猟生活を行っていた民族は、焼畑による畑作へ移行する場合が多く、平家の落人のように平地から山間部へ移り住んだ人々は、棚田などで稲作を行う事が多いそうだ。
山での職業も様々で、狩猟を行うマタギ、食器や民芸品を製作する木地屋、木材を切りだす杣人、鉄山で働く鍛冶屋や炭焼きなどなど、実に多種多様である。中でも木地屋が偽の文書で役人をだまし、全国各地で商いを行っていたという話や、江戸時代に酒の輸送で活躍した鴻池が、現代でもサントリーなど酒造メーカーとの取引が続いてい -
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イザベラ・バードの『日本奥地紀行』を、民俗学者の宮本常一氏が解説する作品。宮本氏が実際に行った講読会が、この作品のベースとなっている。
本作を読む前は、イザベラ・バードと宮本常一と聞いて、チョット意外な組み合わせだなと思ってしまった。でも、何の先入観も偏見も無い外国人が描いた、開国直後の素の日本という背景を考えれば、実は民俗学的要素が満載なのである。
昔の日本にはノミがたくさんいて、ノミによる寝不足解消を祈願したのが、ねぶた祭りの起源であった事。そして日本の警察官は元々士族階級だったため、一般の人々に対する態度がデカい事などなど、バードの描写に対する宮本氏の説明がとても面白い。
バードの -
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著者の良い所は、生活の底辺にある(根源的な)必要から成り立つ文化を追い求めているということであって、それは現代の画一化された社会通念とは異なるものだ。
言い換えれば著作当時、田舎の人は、都会に人材を供給しながら羨望するという経済成長期にあって、著者はしっかりと本来の道、或いはあるべき全体の行く末を見つめているということだ。それは、中央集権的な・・・或いは都市経済中心ではない。
本書では、中央官庁主導の離島振興の中で、著者が奮闘する様が記録してある。
仮に現代であれば「地域おこし協力隊」だろうが、かつての名残が濃厚な地域文化を多数フィールドワークを通じて考察した著者とは、時代も含めて、いろん -
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「昔の日本は牧歌的で良い時代だった」「最近の世の中はイヤな事件が増えている」という考えの対極にある事実・歴史を口承で記述している。
初版は1959年に刊行された。宮本常一、山本周五郎などの複数の執筆者が、日本全国の市井の辛苦に満ちた人生をヒアリングした記述。
各地方の方言で語られる、窮民、殺戮、略奪、乞食、堕胎、鉱山で働く女性、遊女、女衒、飢饉などに関するストーリーは迫力がある。
とりわけ、盲目の馬喰の一代記「土佐檮原の乞食」、山梨の上野原の「おせいばあさんの話」、明治時代のシンガポールを本拠地に活動していた「女衒 村岡伊平治伝」は面白い。 -
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親父の本棚から持ってきた本。
「塩の道」「日本人と食べ物」「暮らしの形と美」の3作が収録されています。
いずれも日本人の生活レベルの文化を読み解くお話。
・塩の生産法と販売ルート
塩の生産方法の伝播と販売ルートに関する丁寧な記述が面白い。
塩は生活に欠かせないもの。今では手に入れる苦労なんてほとんどなく、著者曰く「意識することもない」が、歴史上塩を生産し、手に入れることには多くの工夫と労力が割かれてきた。とんでもなく足を使ったであろう渾身の研究ですね。
・戦乱と食料生産
食料を生産する人口と、戦う人口はまったく区別されてきたのが日本の歴史。
戦国時代にあっても民衆はなるべく戦乱に -