宮本常一のレビュー一覧

  • 生きていく民俗 生業の推移

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    日本の経済史と産業史を地方を見聞して歩いた経験を持ってまとめようとしたもの。農村で完全に自給自足ができなかったことからいろいろな生業が生まれた。その中で、忌み嫌われるがなくてはならない生業の一部が差別の対象となったことなども記されている。
    『民俗のふるさと』の下巻のようなつもりで書かれたとのこと。
    宮本常一が社会を見つめる視線は温かいなぁと感じる。

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    2018年06月05日
  • 南方熊楠/柳田國男/折口信夫/宮本常一

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    「海上の道」柳田国男
    柳田の最後の著書であり、様々な論議を呼んだこの論文を私は初めて読んだ。「日本人の祖先が、南方海上より流れ着いた人々であった」という論旨そのものは、現在では明確に批判・訂正されているので、改めて読むモチベーションがなかなか持てなかったのである。この全集では、まず「文学」として読もうとしている。「科学」と対立する文学という意味で、私も確かに文学であると思う。構造はほとんど随筆だからである。柳田は、青年の頃拾ったヤシの実からこの論を立てている。私は勘違いしていたが、ヤシの実を沖縄の浜辺で拾ったのかと思いきや、伊勢の浜辺で拾ったのである。そこから、様々な思いと民俗事象を述べた後に

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    2018年01月27日
  • イザベラ・バードの旅 『日本奥地紀行』を読む

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    まだ「江戸」が生きる東北・北海道へのイザベラ・バードの旅である『日本奥地紀行』を解説する本だった。バードの著した部分は必要最小限に引用され、本著者である宮本博士の民俗学的な所見が講義録に良くまとめられている。関西地方の旅先で本書のほとんどを読めたことは、当時と現代の交通を比較する面白さを味わわせてくれた。旅先の大型書店で『日本奥地紀行』を入手できたというオマケ付き!

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    2017年08月19日
  • 山に生きる人びと

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    (01)
    山の可能性を描いている。一見すれば、本書は過去へのノスタルジーに支えられているようにも見受けられるが、著者が未来の未来を見据えたときに現われた山の生活(*02)と読むこともできる。交通、生産、信仰、闘争など山にありうる生き様を、著者が山を歩きまわるうちに出会ったものを根拠に示そうとしている。

    (02)
    この生活は過去の日本列島の生において一般なのか特殊なのかと考えたとき、その動的な可能性に力点が置かれている。つまり、人は山を生産手段も求めることもあるし、里に暮らすこともあり、そのときそのとき、その場その場で、しのいでいる人びとの選択や意志も見えてくる。そして人びとの移動が単一でない

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    2017年08月09日
  • 山に生きる人びと

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    民俗学者である宮本常一氏の著書、人里離れた山中で暮らす人々について考察する作品。

    人が山で暮らすようになった経緯は色々だが、もともと山で狩猟生活を行っていた民族は、焼畑による畑作へ移行する場合が多く、平家の落人のように平地から山間部へ移り住んだ人々は、棚田などで稲作を行う事が多いそうだ。

    山での職業も様々で、狩猟を行うマタギ、食器や民芸品を製作する木地屋、木材を切りだす杣人、鉄山で働く鍛冶屋や炭焼きなどなど、実に多種多様である。中でも木地屋が偽の文書で役人をだまし、全国各地で商いを行っていたという話や、江戸時代に酒の輸送で活躍した鴻池が、現代でもサントリーなど酒造メーカーとの取引が続いてい

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    2017年05月10日
  • イザベラ・バードの旅 『日本奥地紀行』を読む

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    イザベラ・バードの『日本奥地紀行』を、民俗学者の宮本常一氏が解説する作品。宮本氏が実際に行った講読会が、この作品のベースとなっている。

    本作を読む前は、イザベラ・バードと宮本常一と聞いて、チョット意外な組み合わせだなと思ってしまった。でも、何の先入観も偏見も無い外国人が描いた、開国直後の素の日本という背景を考えれば、実は民俗学的要素が満載なのである。

    昔の日本にはノミがたくさんいて、ノミによる寝不足解消を祈願したのが、ねぶた祭りの起源であった事。そして日本の警察官は元々士族階級だったため、一般の人々に対する態度がデカい事などなど、バードの描写に対する宮本氏の説明がとても面白い。

    バードの

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    2017年01月03日
  • 日本人のくらしと文化 炉辺夜話

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    著者の良い所は、生活の底辺にある(根源的な)必要から成り立つ文化を追い求めているということであって、それは現代の画一化された社会通念とは異なるものだ。

    言い換えれば著作当時、田舎の人は、都会に人材を供給しながら羨望するという経済成長期にあって、著者はしっかりと本来の道、或いはあるべき全体の行く末を見つめているということだ。それは、中央集権的な・・・或いは都市経済中心ではない。

    本書では、中央官庁主導の離島振興の中で、著者が奮闘する様が記録してある。
    仮に現代であれば「地域おこし協力隊」だろうが、かつての名残が濃厚な地域文化を多数フィールドワークを通じて考察した著者とは、時代も含めて、いろん

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    2016年08月28日
  • 日本残酷物語 4

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    ほんの少し前の日本の姿。
    気が滅入るような記述が続くが、一昔前、恵まれた環境にあった人もいただろうが、保証なき社会の中で貧困にあえぎ、死んでいった人も膨大な数に上るのでしょう。
    搾取するものもいれば、されるものもあり。いじめるものもあれば、いじめられるものもあり。そして誰もが等しく貧しくて、生きて行くのがようやくの土地もあったわけです。
    もっと学ぼうと思いました。

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    2016年07月03日
  • 日本残酷物語 3

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    漂流して無人島にたどり着き、20年もの年月をそこで過ごした人々の話には驚嘆。
    キリシタン弾圧、身分制度、勤王と朝敵。どこを読んでも、表題にある「残酷」が重くのしかかってくる内容でした。

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    2016年03月19日
  • 日本残酷物語 2

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    忘れられた土地。
    島に生きる人々と、山にうずもれた世界と、北辺の土地。

    島にしても、山にしても、北辺の土地にしても、よくもまあそのような場所で生きてきたのだと驚くような描写が続きます。
    山に関しては、私の先祖の話も出てきて、興味深く拝読。
    知ってはいたけれど、やはり先祖は里に暮らす人々からすれば得体の知れぬ、疎ましい存在だったようです。

    昭和も終わり、平成も27年。
    本書に書かれていることは、外国のことであるかのように、描写されていることを頭に描くことが難しい。

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    2015年11月01日
  • 日本残酷物語 1

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    以前から気になりつつ、ようやく読めました。

    日本、というものが、分かるようで分からない。
    この本を読めば、一端でも掴めるかと思ったけれど、余計に混乱してしまったかもしれない。
    読み終わったばかりで、頭の中で処理されるのに時間がかかりそうです。

    ただ、読む価値はある。と、自信を持って言える一冊でもありました。

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    2015年09月15日
  • 南方熊楠/柳田國男/折口信夫/宮本常一

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    柳田國男
    根の国の話、根の国の意味は地底深くの死の世界を表しているのではない、富士の高嶺の根である。出発点とも中心点とも解すべきもの

    亡き人に逢える 常世の国と根の国
    とこよ 富と長寿 上利浦島の子

    とこよ 常夜経く国 闇かき昏す恐ろしい神の国
    死の国 常暗の恐怖の国

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    2015年08月23日
  • 日本残酷物語 1

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    「逝きし世の面影」へのカウンターとして。
    炭鉱と女衒、後半のこの二つが印象深い。前者は人を人とも思わない労働環境に逞しく生きる女性が、後者はこれまでとは逆に人を使う側のある意味立志伝的な面白さがあった。
    読むのに時間がかかりすぎたが、その分考えることも多く得るものもあった。

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    2015年01月08日
  • 日本残酷物語 1

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    「昔の日本は牧歌的で良い時代だった」「最近の世の中はイヤな事件が増えている」という考えの対極にある事実・歴史を口承で記述している。

    初版は1959年に刊行された。宮本常一、山本周五郎などの複数の執筆者が、日本全国の市井の辛苦に満ちた人生をヒアリングした記述。

    各地方の方言で語られる、窮民、殺戮、略奪、乞食、堕胎、鉱山で働く女性、遊女、女衒、飢饉などに関するストーリーは迫力がある。

    とりわけ、盲目の馬喰の一代記「土佐檮原の乞食」、山梨の上野原の「おせいばあさんの話」、明治時代のシンガポールを本拠地に活動していた「女衒 村岡伊平治伝」は面白い。

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    2014年08月07日
  • イザベラ・バードの旅 『日本奥地紀行』を読む

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    宮本の講演から起こされた本なので、とても読みやすいが、「日本奥地紀行」そのものを読むのと内容は変わらない。ただ、宮本が日本奥地紀行の「どこに着目したか」がわかる。
    バードが訪れた東北の盆地、港町、山中の集落の風俗で、特に当時の日本人の衣服、居住まい、大人しいさま、臭い、蚤の多さ、通訳である伊藤の蕃なとことと責任感、車夫、馬子、子供をいつくしむ様子、リベートの習慣など。

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    2018年10月14日
  • 民俗のふるさと

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    ネタバレ

    民俗学との出会いの一冊。 一様に貧しかった、かつての日本の民衆。ムラ協同の力で乗り切り結束して生きてきた、その結束と仕来(しきたり)、そこに住む人々の営み。 江戸時代以降、明治・大正・昭和・戦後の変遷。 ムラハチブ、間引、オジ・オバの存在。 歴史とはまた違う、日本の歩みをまだまだ学ぶ必要がある。

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    2014年04月01日
  • 山に生きる人びと

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    20140208 日本人の来し方が単純ではない事が分かる。民俗学はボランティア的な学問ではないだろうか。

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    2014年02月08日
  • 塩の道

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    親父の本棚から持ってきた本。

    「塩の道」「日本人と食べ物」「暮らしの形と美」の3作が収録されています。
    いずれも日本人の生活レベルの文化を読み解くお話。

    ・塩の生産法と販売ルート
     塩の生産方法の伝播と販売ルートに関する丁寧な記述が面白い。
     塩は生活に欠かせないもの。今では手に入れる苦労なんてほとんどなく、著者曰く「意識することもない」が、歴史上塩を生産し、手に入れることには多くの工夫と労力が割かれてきた。とんでもなく足を使ったであろう渾身の研究ですね。

    ・戦乱と食料生産
     食料を生産する人口と、戦う人口はまったく区別されてきたのが日本の歴史。
     戦国時代にあっても民衆はなるべく戦乱に

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    2014年01月19日
  • 宮本常一講演選集 民衆の生活文化

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    日本人が古代から今に受け継いできたものが、この4〜50年で失われようとしているのかを実感する。今から何をすべきなのか?今、何をすべきなのか?
    考えさせられる、楽しい本だと思う。

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    2014年01月13日
  • 塩の道

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    ネタバレ

    昔の日本で、塩をどのように作り、運んでいたかを民俗学者が語る。内陸の村民が伐った木を川に流して、その木を海岸の村民が薪にして海水を煮詰めて塩を作っていたとか、馬よりも細い道を歩ける牛の背を使って塩を運んでいたとか、まったく知らない話が具体的に説明されていて面白かった。塩自体の神がいない説明が興味深い。

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    2014年01月02日