宮本常一のレビュー一覧

  • 民俗のふるさと
    日本の村、町の地理的、歴史的な成り立ちを著者の体験を踏まえて描いている。町の中の村、村と町の関係など、思わぬ視点から書かれている。1960年代の日本の村や町が描かれており、この50年での変化の大きさに驚かされなちる。著者の日本各地でのフィールドワークの経験に基づく発見、指摘が随所に有り、読み物として...続きを読む
  • 山に生きる人びと
    我々が習う歴史とは、貴族社会から封建社会、そして富国強兵へという統治機構の変遷ですが、そこに依存していない社会が日本の山の中にはありました。

    とはいえ、彼らの暮らしが里の暮らしから隔絶していたかといえば、まったくそのようなことはなく、むしろグローバルまで繋がるような社会のダイナミズムをこの素朴なロ...続きを読む
  • 山に生きる人びと
    海を主なフィールドとする著者が山を生活の場とする人々の暮らしぶりを描いたもの。著者が日本全国を旅する途中で出会った猟師、木地屋、サンカ、炭焼き等の見聞を踏まえて、山に生きる人々をリアルに描いているので、その起源、来歴等の説明も説得力がある。わずか数十年前に、貧しいが、多様かつ高度な技術を駆使し,自然...続きを読む
  • 塩の道
    塩の流通だけに終わらず、日本の至るところまでの文化、生活基盤を見事に解き明かしている。日本の文化と生活を知る上では最高の一書です。

    ◆稲作は中国の雲南省のあたりから戦から逃れ朝鮮を経て九州に伝わった。一方で東北ではヒエの栽培が行われていた
    ◆稲作をする上で最大の懸念は風であり、風を避ける為に各盆地...続きを読む
  • 塩の道
    本の題は『塩の道』ですが

    Ⅰ塩の道

    Ⅱ日本人と食べ物

    Ⅲ暮らしの形と美   の3部から成る。


    塩を通して、また稲作を通して日本の成り立ちを読み解こうとする。


    塩は糖と違って、自分の体の中では生成できない。しかしながら、

    塩は循環機能を保つためには必須のものだから、この塩を手に

    入れ...続きを読む
  • 忘れられた日本人
    何度も読み直したくなる一流のドキュメンタリー
    前半は文字を読み書きできない老人たちを語り部とした、村における風俗史といっても差し支えない内容。口語調であるが故に容易に情景が浮かび上がります。中盤は氏の祖父の歴史、世間師、大工といった村と外部をつないだ人々の話から、いかに外部と交流することで変化してい...続きを読む
  • 忘れられた日本人
    石鎚山は天狗の巣で、その天狗が時々山をわたりあるく事があった。風もないのに木々の梢が大風の吹いているようにざわめくのである。また夜半に山がさけるような大きな音がしたり、木のたおれりするがあった。これを天狗の倒し木と言った。さて夜が明けて見ると何のこともないのである。
  • 忘れられた日本人
    もともと為政者の歴史より庶民の歴史に興味があるので面白く読めた。宮本常一の最高傑作と言われる本作だが、雑誌掲載のものをまとめた作品だからなせいか、一つの研究成果を起承転結でまとめた研究書ではなく、長年聞き書きしてきたトピックをオムニバス的にまとめたものだったことがわかった。
    昭和の初めごろの老人とい...続きを読む
  • 生きていく民俗 生業の推移
    社会に生業が生まれ、家業となり、やがて職業へと移り変わる。
    そんな大きな流れを描いた本。

    いつの間にか持っていたイメージのいくつもが、本書によってくつがえされた。

    印象的だったのは、かつていたという押し売りのこと。

    自分は「サザエさん」の中でしかその存在を知らない。
    今話題なのは「押し買い」だ...続きを読む
  • 忘れられた日本人
    民俗学の巨人・宮本常一の代表作。方言が心地よく、今でも通読に耐える名文。

    「名倉談義」や「村の寄りあい」のように、聴き書きに宮本氏の解釈がバランス良く織り交ぜられた話も勉強になるが、個人的なサビは何と言っても「土佐源氏」。老人の紡ぐ言葉はあまりに美しく、一つの短編小説として完成されている。

    総じ...続きを読む
  • 忘れられた日本人
    江戸末期から昭和初期くらいのかつての日本人の暮らしが書かれている。寄り合い、村の意思決定、女性の役割、娯楽としての歌や踊りや性など、そもそも人の暮らしとはこうだろうなと思えて、視野が広がった感じ。あるがままに生きることが良いことだと感じる。
  • 塩の道
    読みやすい文章
    商圏や文化圏が
    どう伝わって
    どう広がっていったか
    イメージしやすく
    分かりやすい
    それにしても
    ほんの少し前の世代の話なのに
    全く知らない事が多い
    そういう情報が
    途絶えてしまっているのは
    悲しい事だ

    とよたブックマーケット内
    積ん読屋にて購入
  • 忘れられた日本人
    民俗学者、宮本常一の代表作。
    まるで小説?と勘違いするほどの描写の連続で、現実に日本でこんな生活が行われていたのかと驚くはず。
    しかもほんの100年前、すぐそこにあったはずの20世紀で。
    100年前の日本人と比べて私たちは進歩・発展しているのだろうか?と思う。
    こんなにもできないことが増えた我々を、...続きを読む
  • 塩の道
    宮本常一氏の晩年の講演をまとめた一冊。「塩の道」「日本人とたべもの」「暮らしと形の美」の三篇を収録。
    日本全国を歩き回って得た知識を縦横無尽に駆使して、新たな宮本常一ワールド紬上げる、魔法のようです。
  • 忘れられた日本人
    江戸や明治の頃の田舎(主に四国や九州)の庶民の暮らしというと、貧しく虐げられたものというステレオタイプなイメージしか持っていなかった。
    そこに住む生き字引のような翁や婆のいきいきとした実話はどれも興味深い。

    ■女の世間
    世間を知るために、女性でも山口から四国まで旅をする慣わしがあった。下半身に下...続きを読む
  • 日本残酷物語 2
    島に生きる人々、というのが一番印象深い。壱岐対馬の部分だけでも読む価値がある。山の騒動では、一揆が資料をもとにして説明している。50ページもあるが、本書の趣旨からは外れているような感じがした。
     文字は大きいのだが、活字が古く、紙が黄色いので、読むのに意外と時間がかかる。
  • 忘れられた日本人
    今の私たちの生活からは、想像できない明治から昭和初期のごく一般的な片田舎に住む庶民の人生、日常がテーマの本書。こういう何者でもない人の何でもないことがおもしろかったりする。正に人の数だけドラマがある。
  • 宮本常一 伝書鳩のように
    読んでみたいと思っていた平凡社スタンダードブックス。
    装丁といいサイズ感といい、これはまた美しい本を生み出されたものだなあとため息です。
    宮本常一の、この語りの力というか視線に宿る隈ない優しさって涙が出そうになります。
    中でも「女の世間」と「土佐源氏」のあけすけなエロ話は、女や貧民に悲愴な役割を押し...続きを読む
  • 忘れられた日本人
    1955年あたりから、村々の年寄りから、聞き集めた伝承をまとめたものです。幕末から、戦後まぎわあたりの話で、まさに忘れられた日本人の姿が、老人たちの口から語られています。
  • 日本残酷物語 1

    道ばたに倒れ伏すものは数かぎりなく、はじめのうちこそ死体を埋めていたが、まもなくだれ一人としてかえりみるものはなくなった。いたるところに犬やカラスがむらがって、死体を食いちらす光景がながめられた。

    この飢饉のときといえども人間が家畜に近かったのではなく、家畜が人間に近かったのである。

    飢えの記...続きを読む