宮本常一のレビュー一覧

  • 周防大島昔話集

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    宮本さんの故郷、山口県周防大島の昔話を聞き書きしたもの。
    単純にお話として読んで楽しい。

    屋根に這わせたかぼちゃが大きく育って、家をつぶしてしまう奇想天外な話もあれば、どこかで聞いたようなものもある。

    シンデレラを思わせる話もあった。
    義妹はヒロインをいじめないとか、ヒロインが落としていくものがガラスの靴ではなくて、対のかんざしだとかいう点で違う。
    でも、それが面白い。

    宮本さんの祖父母の世代から聞いたとなると、幕末から明治生まれの人たちが楽しんできた話、ということになるのだろう。
    日本のシンデレラは、ヨーロッパのシンデレラが伝わってできたのか、全く無関係に生まれたのか…いろいろな想像を

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    2013年12月26日
  • 生きていく民俗 生業の推移

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    宮本常一は相変わらず、とにかく平易で読みやすい。この本は民間のさまざまな「職業」にスポットライトを当てており、中身も興味深く、宮本民俗学の中でも特に面白い一冊と言えるのではないだろうか。
    宮本常一や柳田国男を読んでいて気になるのは、「昔は○○だった」と書かれているとき、その「昔」とはどのくらい昔のことを指しているのだろう、ということだった。
    私の推測ではほとんどの場合、「昔」と呼ばれているのはせいぜい江戸時代なのではないか。ただ、農業に関しては、農機具や生活状況は室町時代からほとんど変わっていない、と何かの本で読んだことがある。
    民俗学はこのように、しばしば正確な「とき」を明記しない場合がある

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    2013年12月21日
  • 塩の道

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    塩と塩味が好きなので読んでみたのだが、次から次へと、日本の文化や生活に関する謎が明らかになって「ほほー」「へぇー」「はー」と感じ入る。
    日本人の生活習慣や風習で、なんでかなーと思うことや、疑うこともなく行っている行為について掘り下げるとこんな歴史があったのかと知ることができた。

    岩手の牛、牛のすごさ、これまた知らなかったよ。未明の地と思われていた東北・北海道が、大昔から日本経済を支えていたのである。

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    2013年11月23日
  • 塩の道

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    宮本常一晩年の話がたり。日本人とは何か?というかそれを育てた型やあり方についての深遠膨大な知識。韓国人がどうのという前に、自らの民族史を読み返しても損は無いですは。

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    2013年09月20日
  • 日本人のくらしと文化 炉辺夜話

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    宮本が各地で行った講演録のオムニバス。話の展開がスピーディーで空間的時間的にもぽんぽん跳ぶので、読んでいても飽きない。
    京都は中世以降、大阪よりも若狭北陸との縁が深かったというのは実感としてもわかるような気がする。巨椋池、湿地帯のため狭隘な摂津街道で隔たった大阪よりも若狭小浜のほうが近しい。
    また、東京と大阪の郊外の町の成り立ちが違うというのは初めて知った。大阪にはタコの足がない。それは江戸は村の延長が街道沿いに伸びているのだが、大阪は町の中の町である、と。

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    2018年10月14日
  • 日本残酷物語 1

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    気が滅入って読むのが辛い本でしたが、決して遠くない日本の現実物語でした。忘れてはいけないと思います。

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    2013年08月06日
  • 山に生きる人びと

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    かつての日本の山は資源であり里であり、そこに様々な人々と生計、歴史があった。サンカ、木地屋、マタギ、炭焼きなど、失われようとしているが、確かに今の我々の生活の中にも受け継がれているものがある。

    奥多摩の方の山に入ったとき、かつて炭焼きなどで栄えた廃村の後を見て、何とも言えない感慨深さがあった。実際にここで林業が盛んだった頃の話をおじいさんに聞くと、当時の村の様子を生き生きと語ってくれた。日本の山には昔から元気な人々と暮らしがあった。

    本書の最後の稿「山と人間」において、宮本常一氏の試論がされており、非常に興味深い。かつての山の人々が如何に活気があり、また荒々しかったか。また、武士の習俗が狩

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    2013年06月15日
  • 周防大島昔話集

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    周防大島の昔話を集めた本。
    134の昔話がある。

    往来のあった伊予や土佐から持ち込んだ話や、
    岩国が舞台の話が入っている。

    今まで昔話というと時代も人物も、歴史から独立して想像していたけど、
    「岩国様」と呼ばれる殿様が出てきたり、
    具体的な地名が登場したりするので、
    昔話の背景にうっすらと歴史を感じることができた。

    聴きとったものを収録してあるので、昔話が方言で語られる。
    出てくる魚や動物の台詞も方言で語られるのが面白い。
    魚が「亀がえかろうて、亀は海も泳ぐし、陸も歩くけえ」などというので、
    愛着がわいた。

    「いち」という題名の大蛇の話が一番好きだった。

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    2013年03月02日
  • 塩の道

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    「塩の道」「日本人と食べ物」「暮らしの形と美」という3つのテーマについての講演をもとにした本。
    表題の「塩の道」がやはり興味深い。今でこそ専売制も崩れいろいろな銘柄の塩を好き勝手に使えるが、歴史にあっては貴重かつ不可欠なものとして生活・経済と歩みを共にしてきたことがわかる。
    柔らかい語り口ですんなり読めるいい本だった。

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    2013年02月21日
  • 日本文化の形成

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    古代史・考古学関連本をずっと読み漁って来て、何となく壁に突き当たっていたが、民俗学の権威の先生の本を読んで、また違った視点で古代史を見ることができるようになった気がした。
    一点どうしても以前から気になってたこと。朝鮮半島における倭人の拠点。古墳などの考古学遺物もあるし、中国、広開土王碑、日本書紀などの文献にも半島での倭人の活動が何度も書かれている。民俗学として見た場合にも列島との文化交流の掛け渡し役として、半島に植民地か居住地があったと見て良さそう。任那や百済が失われた時点で足掛かりをなくしたのだろう。

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    2013年02月27日
  • 塩の道

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    柳田国男や折口信夫はそれぞれに独特な、文学的な語り口で、晦渋なところがある。日本民俗学の古典的著者としては、この宮本常一がいちばん易しく、すっと入っていけるのではないだろうか。
    巻末の解説に明記されていないが、ここに収められた3編とも、講演の記録と思われ、いっそう平易な文章が読める。
    柔軟な思考で、さまざまな観点から庶民の文化現象のルーツをさぐっていく手法は、歴史学とはときに交わるようでいて、軌を一にしない。この「庶民」へのまなざしはウェットでもドライでもないが、たぶん優しいものだろう。
    「われわれの目の見えないところで大きな生産と文化の波が、そのような形で揺れ動き、その上層に、記録に残ってい

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    2012年11月17日
  • 山に生きる人びと

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    実は、(引用や抜き書きではなく)まとめて宮本常一を読むのは初めて。その、ある程度のボリュームをまとめると浮かび上がる雰囲気がよい。
    情熱と冷静の、ロマンと現実の、願望と事実の、志の高さと腰の低さの、両方がそこにある。
    特に面白かったのは、農民の「豊かさ」と山の民の「貧しさ」を対比させているところ。職業選択の自由や移動の自由が憲法で保証された時代ではないけれど、それでも、何か(争い)を避けるためにあえて不便で貧しい山の暮らしを続けた人や時代があったという記述は興味深い。

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    2012年11月08日
  • 塩の道

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    いいですね。宮本常一の文体は常に市井の人のそばにありて読んでて平和な気持ちになります。
    本書は塩を手に入れるための庶民の生きる術、生活の術、そこから作り出された社会の構造を描いています。
    それにしても、上流の村人が薪を流して海辺の村人が塩を焼くくだりは、人の交流と富の交換が昔から自然発生的に機能してきたことに感銘を受けます。

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    2012年10月09日
  • 塩の道

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    民俗学の古典ともいうべき本ですね。
    勿論、今、読んでみると古臭いネタも多く、
    非現実的な話もあるのですが、(何故か三陸の人たちが自分たちのところで塩を作らず、わざわざ遠くから塩を調達しようとしてたり(´∀`;))
    戦後の時代にこの本にあるような論文が書かれたという事実を、
    時代背景を考えながら、読んでみると、やっぱり宮本常一という人は、
    凄くバイタリティに溢れていた人なんだろうなと思えます。

    そのような意味で元気の出る本ですね。

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    2012年06月03日
  • 民俗のふるさと

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    河出文庫から、宮本常一の著作が復刻されている。全集などでしか読めなかった作品が手軽に読めることはラッキーで、出版社に敬意を表したい。
    中身は、日本の町、村の成立を概要的に解説しており、非常に読みやすい。一通り読めば、流れをつかめるようになっている。
    書かれたのは今から数十年前になるが、読み終えたあと、そこから現代に至る道筋がぼんやり浮かび上がる。
    (2012.5)

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    2012年05月22日
  • 日本残酷物語 1

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    日本は昭和の高度成長期が訪れるまでは、ほとんどのときが貧しかったのだ。それゆえ、数々の悲劇が産まれていた。天災や飢饉や流行病があれば、多くの人々は自殺か狂うか仏に縋るしかなかったのだろう。そんななかでも、強く悲しく生きた女性たちがいた。どんなに虐げられても、騙されても生き延びた。そのような話が「はたらく女たち」「遊女」「天草女」の段に鮮明に記されている。現代社会は経済的にはある程度豊かになったが、その反面、人や社会の絆がどんどん弱くなっている。これからどのような社会が待ち受けているのだろうか。

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    2011年08月17日
  • 塩の道

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    宮本常一という
    民衆の生活に根ざした視点で
    研究を続けた民俗学者の本。
    この本には
    『塩の道』『日本人と食べ物』『暮らしの形と美』
    という3本の著作が入っている。
    なかでも表題の『塩の道』がおもしろかった。
    塩は神に祭られた例がない。という導入。
    米やほかの作物は神棚に祭られるが
    塩はないという。
    それだけ生活に近すぎた。
    そして、塩を手にするために
    道ができていったという話。
    塩は日本では海の水から作られたため
    山の集落では塩を得るための
    いろいろな努力をしていた。
    塩を作るには薪がいる。
    木を切って川の河口まで流して
    その代償に河口でできた塩を入手して
    山へ帰っていく。
    そのための道ができ

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    2011年03月04日
  • 日本文化の形成

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    50近くで他界した叔父の毅彦も「宮本常一のように生きたい」と言っていたと聞いていて、常に気になる存在である宮本常一。『塩の道』や『忘れられた日本人』に感銘を受けるも、まだまだ叔父のような生き方には至らず。

    この本を読んでみて、最近、南の島にも行ったりしてるので、海や半島からの文化(つまり人と生活様式)の流れが、読後には相当気になりはじめました。日本語の形成過程や地名などの由来、居住形態などの考察も含め、興味深く惹き付けられます。

    さらに、宮本氏の師である渋沢敬三の言葉にやられました。
    『(略)…渋沢先生のいう「物をして語らしめる」ということは物の中に含まれている意志を読みとる力がないと読み

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    2010年03月24日
  • 忘れられた日本人

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    -こうした貧農の家の日常茶飯事についてかかれた書物というものはほとんどなくて、やっと近頃になって「物いわぬ農民」や「民話を生む人々」のような書物がではじめたにすぎないが、いままで農村について書かれたものは、上層部の現象や下層の中の特異例に関するものが多かった。そして読む方の側は初めから矛盾や悲壮感がでていないと承知しなかったものである(「私の祖父」)

    -村里生活者は個性的でなかったというけれども、今日のように口では論理的に自我を云々しつつ、私生活や私行の上ではむしろ類型的なものがつよく見られるのに比して、行動的にはむしろ強烈なものをもった人が年寄りたちの中に多い。これを今日の人々は頑固だと言

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    2025年10月19日
  • 忘れられた日本人

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    一昔前の日本の村の生活や風習を記録した書籍。少し慣れるのに時間がかかったが、貧しくて不自由なようでどこか自由そうな人々の生き方や、農村漁村での生活や風習を感じられて一気に読み進んだ。本来好みというほどではないが、何故か手元に置いておきたい一冊。

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    2025年05月04日