川口マーン惠美のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
現在のドイツの凋落ぶりを他山の石として、日本にはその轍を踏んでほしくないと言う著者の願いが伝わってくる一冊でした。それにしても、ドイツの現在の迷走ぶりは凄くて、移民・難民を無造作に受け入れては、社会保障費を無駄に払って無職の人達を作り出している様は、寒気がしてきます。他にも、原発をすべて廃止し、火力発電も止め、風力だけで電力を維持しようとして、電気代の超高騰を招いてしまい、産業が空洞化に陥っているというのはちょっと理解に苦しみます。それだけでなく他にも様々な政治的問題がゴロゴロと山積しています。日本も労働力不足を補うために海外から移民を募っていますが、将来、ドイツの二の舞になることだけは避けて欲しいものです。
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Posted by ブクログ
ツイッターなどの断片的な情報でドイツにまるで理想郷のようなイメージを抱きがちなので、著書の本を読むとハッとさせられる気持ち。
日頃からドイツの政治について勉強してる人は別として、メルケル首相が如何にして今の位置に登りつめたかなんて知らずにニュースを見てたもの。
ドイツと中国の蜜月関係も全く知らなかったので目から鱗。ドイツ人と中国人は実は本質が似ているという指摘も、ドイツに30年以上住んでいる著書だから出来る内容だと思う。
EUにおけるドイツの立ち位置も、新聞読んでるだけじゃ読み取れない。
過去作などタイトルが大袈裟で敬遠されがちでは?と勝手に心配しているけれど、その国で暮らす民間の一般の人(と言っていいのか分からないけれど)だからこその肌身で感じるものを教えてくれる。 -
Posted by ブクログ
読後はタイトル通り日本が勝ち!とは思えないのだが、それでもたとえばツイッターなどで断片的な情報を見てドイツを楽園だと思っていると、そうではないと教えてくれる一冊。
残業まみれの日本で暮らしていると定時退社が当たり前のドイツに憧れを抱くが、定時ちょうどに退社すべく神経を張り詰めて働いている環境というのもそれはそれでストレスだろう。足して二で割る…とはいかずとも、足してドイツ寄りに割るくらいでちょうどよい働き方になる気がする。
またドイツがいともスムーズに脱原発に梶を切ったことに関心があったのだが、それはドイツ人ならその後のエネルギー不足で不便な生活を強いられても構わないというメンタルゆえだと思っていたら、そうではない、ドイツ人だって不便な生活をする気は毛頭ないので安易な脱原発は行き詰るだろうという指摘に目から鱗。
就活事情も、長い長い学生時代を経てようやく就職というのも、家庭に経済力がなければ厳しいのでは…。10歳程度でその後の人生を決めてしまうというシステムも、ほ~~んと欧米人って格差社会が好きだな!?と呆れ…。
SNSのちょっとした情報だけでは分からない海外事情を教えてもらえて、視野が広がった気持ちになれる一冊。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ世界一豊かで幸せな国スイスとよく似ている日本。小さな国スイスができることは日本でもできるはずである。日本の良いところを活かし、考え方を変えれば日本はより良くなる。日本とスイスの共通点・異なる点・改善するべき点について考える。スイスを見習っていけばもっと良い国になっていくだろう。様々な観点から日本とスイスを比較していく。
日本とスイスの共通しているところは、どちらの国も物作りが得意だということだ。元々、日本は機械産業が盛んで特に工作機械では生産額が世界一だった。しかし、2014年には日本は世界一ではなくなってしまった。そんな中、人口が少なく小さな国であるスイスは少しずつ成功している。スイスでは時計産業が盛んだ。スイスメーカーの時計は世界の時計の売り上げランキングで上位3位を占めている。スイスと日本は物作りが盛んな国という点では共通しているが完成度の高い製品という点ではスイスの方が断然上だ。スイスは一つの製品を作るのにかける時間と費用が日本の倍以上である。スイスは、最高級の製品を目指して最高の材料を使い、一つ一つ丁寧に手作業で作り、磨いていく。
日本とスイスで異なるところもある。それは、選挙法である。日本は、国民の代表者が議会に参加し、審議をする間接民主主義である。一方でスイスは国民全員が直接選挙に参加し、審議をする直接民主主義を使っている。直接民主制を行う場合、国民全員が政治の知識をある程度持っていなければ正しい選挙ができない。しかし、間接民主制であれば知識のある人を国民の代表者とするため正しくできる。政治を上手く回すためにはその場の雰囲気や感情で審議する人がいない間接民主制を使うべきだと思う。
また、日本が改善するべきところはの日本の旅館である。現在、日本の旅館の数が減少している。それは、日本人から良い評価を得られず潰れてしまっているからだ。良い評価が得られないのは交通の便や施設の機能性など不便だと感じるところは改善し、日本の伝統は残すということをしていないからだ。外国人に合わせた入りやすい旅館を作るのではなく、日本の良いところは取り入れたまま不便なところを改善し、日本人が満足するような旅館作りを目指していくべきである
また、スイス人は国を守るという意識が高い。国民一人一人が自分の国は自分で守るという考えを持っている。その一方で日本は戦争を放棄したため、最悪の事態を予測して備えるという意識が低い。だから日本もスイスを見習って自国や自国の周りで起きていることを理解し、危険を察知できるようにしておくべきだ。日本人の意識の低さを改善するべきである。
さらに移民問題について、スイスはEUと協定を結んだ結果、EUとスイス間の移動が自由になり働く場所も増えた。しかし、あまりにもスイスに来る移民の数が多いため国民の間で不満が広がり新しく法律を作って、移民の数を制限した。日本は移民を受け入れている。しかし、その目的が経済の格差によるものであるならば移民問題を平和に解決するには仕事で人を雇う側も雇われる側にも不満が残らないよう、平等に行う必要がある。だから、移民政策を進める上でお互いが納得するようなやり方をするべきである。
このように、日本とスイスを比較すると共通点・異なる点・改善点等、色々なことが分かる。スイスを見習い、悪いところは改善し、良いところは広める。日本人がもっと自信を持ち、日本の伝統を海外にアピールできたら日本はもっと成長できるだろう。 -
Posted by ブクログ
私にとって、欧州の国々では、スイス、フランス、次いでドイツが馴染み深い国です。川口マーン惠美さん、初読みです。「世界一豊かなスイスとそっくりな国ニッポン」、2016.11発行です。とても興味深く読み終えました。海に囲まれ、山に囲まれ、海に山に畏敬の念を抱く両国、自然に支配され、かつ自然に寄り添い、勤勉に働き、安全で清潔で秩序正しい暮らしを営んできた日本とスイス。これからグローバリズムの波にどう対応していくのか・・・。なお、スイスの自然重視・景観維持の農業政策(補助金)は、動物愛護、自然保護、安全な食物が目的とか、素晴らしいと思います。また、各家の地下に核シェルターがあって2w生活可能というのも現実的だと思いました。
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Posted by ブクログ
簡単な文章で書かれているし、面白い内容なのであっという間に読めました。
有名なテレビ番組で日本に来る外国人(主に欧米人)についていく企画があるけど、どう考えてもバリバリ仕事している年代、もしくは学生の分際でどうして何週間も外国をウロウロできるものなのか不思議で仕方なかったけど、少なくともドイツでは社会システムがこうだからかもと勝手に納得しています。
しかし、日本にもゆとりがどうとかゆうていましたが、結局何がやりたかったんでしょう。英語教育やプログラミング教育も小学生から始まるとか。ドイツにも日本にも教育課題は山積みのようです。どっちがいいのかは私にはわかりません。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ著者の手になる書物を初めて拝読しました。
正直、己の不明を恥じました。文章が上手い。行間より教養の高さをひしひしと感じます。すごいもんだと。流石に音大生美大生達で功なり名なりを挙げてひとかどに成られる才媛たちの英気を覚えるというのか。普通に「教養人」というものでしょう。活計の足し以上の世界があるのだとこちらが頭を足れる。憧れというものです。
著書の内容的には非常に重たいです。
日本人でよかったという安堵感とやるせなさを感じます。
欧州発祥・欧州が世界分割により持ち込んだ擾乱を、現代以降において、こころの呵責と引き換えに受け容れざるを得ない理想主義「人権」という方便、この理想は祭壇に祭られたまま現実の庶民は我慢のかぎりを超えてしまっていた。
救いようもない悲劇・・・ -
Posted by ブクログ
まあだからと言って日本サイコーとかは言わないんですけどねσ^_^;
この本にもありますけどいまの日本が誇らしいのは先人の知恵と行動の結果やと思います。
いまの自分たちはただその遺産を食い潰してないか反省します。
日の丸を見て美しい日本の美しい情景を思い浮かべることすら否定することは次代に何も残さず食い潰していくだけのような気がします。
世界は広いです。
たまたま隣接する国が難癖をつけてくるからって世界の全てではないです。
たまたま否応なしに関係性を求められるだけでこっち見んかったら良いのにと思います。
まあそれは関係性の薄い親日国と積極的に接してこなかった僕ら中堅世代の責任もあるのかなと思います。
これからは台湾やモンゴルやインドネシアやトルコやポーランドといった親日国と積極的に関係性を持っていかないといけないと思います。 -
Posted by ブクログ
ギリシャの金融危機や難民問題に直面したEUは,各国が自国の利益を死守しようと懸命になっており,「1つのヨーロッパ」という理念はもはや消え去っている。また,テロの脅威から,排外主義が叫ばれ,国民の自由に対する広範な制限が正当化されかねない状況が現れている。本書は,最近のヨーロッパが直面する問題の歴史と背景を簡単に振り返ることができるというだけでも,一読の価値がある。
また,著者は,ヨーロッパの危機について叙述するだけでなく,日本人の危機感のなさにも警鐘を鳴らしている。仮に隣国で政変が起これば,大量の政治難民が日本海に押し寄せることになり,しかもそれはあっという間に抑えがたいものになる,と。また,TPPとの関係でも,エネルギーと食糧の自給率は安全保障の観点からも絶対に確保しておくべきであるのに,そのことを分かっていない者が多すぎる,と。
ちなみに,著者の基本的な主張は,「私の好きなオットー・フォン・ビスマルクの言葉」 として引用されている次の文章に,端的に表れているように思われる(217頁)。
「名誉と独立を好む国民はすべて,自国の平和と安全は自分自身の剣によることを意識すべきである」 -
Posted by ブクログ
ドイツついて知りたくて読書。
ドイツ歴30年という著者から見た日本とそしてドイツの比較論。
日本国外へ出て初めて日本の魅力、素晴らしさを知ることは本当に多い。しかし、現在の単なる日本礼賛的なムードは危険だと思う。外を見ようとせず、内向きだけを向き進もうとしているから。
2012年には初めてドイツへ行き、今年は10回近く行く機会があった。ドイツは、アメリカよりは旅行者視点で便利だと思うが、幼い時から抱いていたドイツのイメージとはかなり違っていた。
ドイツ人は、ルール好きで、律儀で、時間にも正確と言われているが、いずれも日本人が思っているのとは違う。また、日本好きでもなく、どちらかと言うと日本嫌いのほうが多いとさえ思われるくらい。
本文に登場する尖閣諸島についてのドイツ語版ウィキペディアの例にあるように、ドイツ在住の中国人や中国系の力でそのような既成事実が作られつつあるのが現実。韓国もまたしかりで、したたかなロビー活動や国家ぐるみでの働きかけの影響は大きい。
日本はこの現実を直視して、しっかりとした対策をしないといけない。むしろ、この点は中韓を見習うべきだと思う。「いつかきっと分かってもらえる」という妄想は、日本人同士で通用する価値観であることを知るべき。
日本はいい国だが、閉塞感がありどこか息苦しい。ドイツは移民が多いためか、職業や業務の分業が進んでおり、旅行者視点でも格差を感じるが、適当な雰囲気が漂っており、居心地は悪くない。
日独の義務教育の比較。労働環境の比較。鉄道の比較。サービス比較は面白い。
双方のいい部分が上手に取り入れられればそれが理想。
やはりどの国も行ってみないと分からないこと多い。
ドイツやヨーロッパのサービスの低さを考えると、人のマナーには問題あるが、中国は少しはまともな国に思えてくるから不思議だ。
本書でもっとも印象に残り、また激しく共感を覚えたのは、
世界の多くの国が、イメージのほうが実態よりも良いなかで、日本は、実態のほうがイメージよりも良い唯一の国ともいえる。(p4)
この点、日本にいるとまったく自覚しないことの1つだが、非常に重要な点だと思う。
読書時間:約1時間10分 -
Posted by ブクログ
☆5(付箋16枚/P187→割合8.56%)
ジャーナリストの著者だけあって、日独を比較する際の視点が色々と面白かった。
時間刻みの宅配便や電車がドイツと比較しても日本は優位なんだなぁ。
・長く外国にいると、日本がつぶさに見えてくることは確かだ。日本の長所は非常に多く、それはとりわけ実用面で際立っている。
一例をあげるなら宅配便。あの複雑なシステムを、あそこまで正確に全国津々浦々まで機能させられる国は、世界広しといえども日本以外にはありえない。時間に比較的正確な国・ドイツでさえ、電車が時刻表通りに走ることは稀なのだ。
ましてや、2時間単位の配達時間指定など、どの国であっても逆立ちをしても無理だ。彼らはそんなことが可能だということさえ信じない。しかし、当の日本人は、これが当たり前だと思っている。
しかし、日本人には欠点もある。たとえば論理性の欠如だ。ドイツ人は哲学的思考が好きで、思考の過程を愛しているが、日本人は議論などさしおいて、一足飛びに結論を出すほうが好きだ。言い換えれば、思考の過程よりも実務の結果に重点を置く。計算式よりも解答なのだ。だからこそ、日本人の手に掛かれば多くのことが完璧に機能するが、その議論は禅問答のようにわかりにくい。
・(尖閣諸島まで)出帆は石垣島の新川港から。小さな漁船である。これで外洋を170キロも行くなんて、信じられなかった。午後八時十五分、いよいよ出帆である。三日月が美しい…「着いたぞ!」という声で目が覚めた。どこに?え!魚釣島?慌てて甲板に出た。午前四時十五分。天候に恵まれたので、たったの八時間で着いたのだ。
・昔、「最後の授業」という作品を国語の教科書で読んだ記憶のある人は多いだろう。アルザスの学校でフランス語を教えてはならないことになり、フランス語教師が最後の授業を行いながら、そのうち悲しみで言葉が途絶え、黒板に「Vive la France(フランス万歳)!」」と書いて授業を終える。占領され、母国語を奪われたフランス人の怒りと悲哀が伝わってくる感動的な教材だった。
このおかげで私は、アルザスなどという遠い国の一地方の名を覚え、ここがフランス領であり、いままた、めでたくフランス領に戻ったのだと長い間信じていた。
だから、そのずっと後、アルザス地方の州府シュトラスブールを訪れたときも、国境を越えた途端に町の雰囲気ががらっとフランス風になったことに気がつき感銘を受け、「この地をドイツ領にしようなどとは、やはり無理な相談だったのだ」と思った。
しかし、少し歴史を勉強すると、アルザス地方は紀元前一世紀にゲルマン民族が住み付き、中世からは神聖ローマ帝国に属していたことがわかる。神聖ローマ帝国というのは、ドイツ人の帝国だ。住民のアルザス人はドイツ系で、当然、フランス語は話したことがなかった。
…五十余年ののち、普仏戦争でプロイセンがフランスを破り、ようやくアルザスを取り戻した。そして、アルザスの学校のカリキュラムからフランス語が削除された。宿命の敵の言葉だから、当然のことだろう。そこで、冒頭の「最後の授業」となるのだが、このときアルザスの学校では、フランス語は国語としてではなく、外国語として教えられていたということを知ると、「最後の授業」の趣はかなり変わってくる。
・登場するときに、ドイツの一般的な日刊新聞である「DIE WELT」を手にした。3月16日付の同紙の一面には、マスクをした背広姿の日本人が目を見開いている大きな写真と、「死の不安に包まれたトウキョウ」という大見出しが躍っていた。
ただ、私からすると、それはどう見ても出勤途中のサラリーマンが信号待ちをしている風景で、目を見開いているのは市の不安のせいでなく、信号を見ているように見えた。だいたい、マスクも放射能を予防するためではない。私が子供のころから、日本人はマスクを愛用しているのだ。
…同年3月24日付のニュース週刊誌「stern」の表紙デザインにも驚かされた。なんと、葛飾北斎の有名が浮世絵「神奈川沖浪裏」と、おそらくは芸者のつもりであろう舞妓さん、そして、侍と一緒に並ぶ自衛隊が合成されている。
特集のタイトルは「驚くべき国民」―もちろん、日本人のことだ。
震災直後こそ、不幸に見舞われても冷静さと感謝の念を失わず、助け合い、耐え忍ぶ日本人の被災者を褒め称えていたドイツメディアだったが、どうも方向転換をしたらしい。
記事を読んでみたところ、日本人は、集団のために自己を犠牲にし、苦しみになれ、しかも、感情のない、あるいは、感情を抑えることを学ばされた国民であるらしい。
その根拠として、「神風特攻隊」「ハラキリ」「赤穂浪士」の話が続々と登場してくる。特攻隊が出撃前に鉢巻を渡されている写真や、武士が鎧姿で正装している絵、そして、明治天皇ご一家の御写真などが、ふんだんに使われている。
なかでも逸品は、終戦後もジャングルで一人戦い続けた小野田寛郎少尉の物語で、ご丁寧にも、ぼろぼろになった軍服を着てサーベルを返還している直立不動の写真まで載せてあった。
・東日本大震災が起こるまでの、ドイツのエネルギー政策の推移を説明しよう。
まず2000年に、当時のドイツ社会民主党(SPD)・緑の党の連立政権と大手電力会社四社との間で、「脱原発合意」が取り決められた。
具体的にいうと、稼働しているすべての原発を、ある一定の量の発電を終えた時点で、徐々に停止していくという取り決めである。しかも、新しい原発はもう作らない。つまり、原発を近い将来に全廃するということを目標に据えた、将来のエネルギー政策に対する決定的な方向付けを行ったのだ。「脱原発合意」は、この連立政権の功績として、当時大きく評価された。
…ところが2009年、SPDが政権から退き、CDUが連立相手を自由民主党(FDP)に変えて以来、状況はにわかに変わった。そして2010年秋、それは決定的になった。「脱原発合意」はひっくり返り、原発の稼働年数を延長する法案が可決されたのだ。
これに対し、SPDや緑の党はもとより、何よりも国民が怒った。与党の想像を遥かに超えるほど、本気で怒ったのだ。
…多方面で評価の高かったメルケル政権だったが、ここに至って、原発に足をすくわれる可能性が強まっていた。バーデン・ヴェルテンベルク州という50年以上保ってきたCDUの牙城が揺らいだ。メルケル首相は窮地に陥った。国民の脱原発への意志を甘く見すぎたのである。
福島第一原発のあと、ドイツ政府があまりにも迅速に脱原発の方向に舵を切り直した事実の裏には、以上のような一連の事情があったことを念頭に入れなければいけない。
事故が起こる直前、メルケル首相は、原発稼働年数の延長という決定で墓穴を掘ったかもしれないという危惧を強く抱いていた。
「手遅れにならないうちに方向転換をしなければいけない。しかし、どうやって?」
そう思っていた矢先に、遠く離れた日本で、原発事故が起こったのだ。
・メルケル首相が脱原発に方向転換をしたのは、政治的圧力、つまり、支持者を失うという危惧が芽生えたからだ。しかし、日本のこのデモは政治的圧力になり得ない。なぜなら、この若者の大半は選挙に行かないからだ。
・ドイツでは、1991年にできた再生エネルギー買い取り法に基づき、再生可能エネルギーで発電された電気は、20年にわたって全量買い取りが保障されている。
巨大なソーラーパークやウィンドパークを経営している会社、あるいは、屋根の上にパネルを付けている一般の家庭や、畑の片隅に風車を一本だけ立てている農家のそこで発電した電気は、すべて20年間、その土地の電力網を持つ送電会社が買い取ってくれる。この固定価格買い取り制度が導入された当時は、画期的な自然保護システムと称賛を浴びた。
ただ、この制度には重大な欠点がある。再生可能エネルギーの生産にはお金がかかるので、それを助成するための買い取り価格というのは、市場の電気の価格よりも高くなる。当然、高く買い取った電機は、そのままでは市場に出せない。そこで、市場価格との差額分を誰かが負担して、埋めなくてはならない。結局、差額分はそっくり電気代に乗せられ、消費者が負担させられている。
・ヨーロッパ全体では原発建設ブームのようだ。とくに、東欧諸国とロシアが原発建設に熱心。ロシアは、天然ガスは西ヨーロッパに高く売れるので、自国で消費するのはバカバカしいと考えている。そこで、自分たちの電気は原発で賄おうとしているわけだ。一方、東欧の国々は、エネルギーについてロシアに首根っこを押さえられたくないから、原発を立てようとする。さらに、そのうちドイツで電力が不足したら、原発で発電した電気を売っていく腹づもりだろう。
・ドイツ人は整理整頓が恐ろしく上手で、どこの会社も棚にファイルが整然と並んでいる。私は、これをすべてなるべくわかりやすくして、同僚の休暇中の代行業務をスムーズにするための知恵だと思っている。
・経済成長の真っ盛り、安い労働力として使える外国人がいなかったからこそ、どんな仕事でも日本人が行うしかなかった。貴重な労働力となる中卒は「金の卵」と呼ばれ、いざ就職が決まると企業が素晴らしい寮を提供して、夜間高校へ通わせ、皆で育てた。使い捨ての外国人相手なら、こんなことはしなかっただろう。
そして、石油ショック後、ドイツ企業が設備投資をせずに、安い賃金でも働いてくれる字の読めない外国人をベルトコンベアに張りつけて、延々と非人間的な仕事をさせていたころ、日本では、単純作業をいかに知的な責任のある任務に変えようかという努力がなされていた。それにより、労働効率は飛躍的に伸び、そのノウハウは後年、「カイゼン」という言葉とともに世界に広がっていったのだ。
・ドイツの小学校は、原則として午前中で終わる。朝は、必要とあれば午前7時45分ごろから始め、10時過ぎの「第二の朝食」という20分ほどの休憩の他は、5分間の休憩で授業を詰め込む。
第二の朝食は、各自が家から持ってくる。ちゃんとサンドイッチのようなものを持ってくる子もいれば、りんご一個の子、お菓子を持ってくる子、また、何も持ってこない子もいる。そして、昼食は原則として自宅でとる。
・時間通りに走らないのもドイツ鉄道の特徴だ。10分ぐらいなら遅れではなく、ピッタリ定刻だと皆が感動する。遅れを告げる車内放送では、次の停車駅でどの接続便がもう行ってしまったかを淡々と教えてくれる。偶然、接続便も遅れていれば、「ラッキー!」ということになる。
もうひとつ信じられないのは、ホームで列車を待っていると、突然、「次の列車には6号車が接続していません。6号車の指定券をお持ちの方は、他の号車で空席を探してください」とか、「次の列車は、号車番号が前後反対になって入ってきます」というビックリ放送が流れることだ。こいったことはしょっちゅうある。
・ドイツ人は蛍光灯は病院のようだといって、とくに嫌う。また、家での食事のとき、たとえ電気を点けていてもテーブルにキャンドルを灯す家庭は多い。彼らの頭のなかで、あの合理性とこのロマンティシズムがいかに共棲しているのか、そのカラクリが私には未だに理解できない。
・ドイツには閉店時間法というのがある。1956年にできた法律で、それによると、飲食店とガソリンスタンドなどを除いたすべての店は、平日は夕方午後六時半、土曜日は午後二時で閉店し、日曜と祝日は終日店を開けてはならなかった。
例外は第一土曜日とクリスマス前の四回の土曜日で、午後六時までの営業が許されていた。それにしても、不便このうえない法律だった。働いている人は、ほとんど買い物をする暇がない。美容院に行くこともできない。だから、土曜日のデパートや市場は、ぞっとするほど殺気立っていた。しかし、この恐るべき法律が、奇跡の経済成長期もなんのその、40年近くも頑迷に続いたのが、ドイツという国なのだ。その後、閉店時間法は少しずつ少しずつ緩み始めて、ついに2006年、各州に委ねられることになった。
・彼ら(ギリシャ)が借金国になってしまった原因は、ドイツではなく彼ら自身にある。2010年7月、ギリシャは1829年の建国以来、初めて公務員の人数を数えた。その結果、どうも勤労者の四人に一人が公務員らしいことがわかった。
・よくわからないのは、これだけEUにガタがきているというのに、日本ではTPPに参加しようと旗を振っている人がたくさんいることだ。EUというのは、加盟国間での「人」「物」「サービス」の自由な移動をめざすシステムであり、TPPは共通の通貨は持たないものの、「人」「物」「サービス」の自由な流通という理念は、EUと原則的にはとても似ている。方向は同じだ。困窮するEUの国に住む私としては、EUとTPPがまったく異なるものだとは決して思えない。
TPPの不都合な部分は「交渉で解決すれば良い」という主張もよく耳にするが、日本がアメリカを相手に交渉で利を得ることができるなら、何も苦労はしない。