千葉聡のレビュー一覧
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audibleで意味がわかるまで繰り返して聴いて、とても疲れた。
カタカナ用語が多用されていて難しかったけど、つまり科学的事実は、パラダイム(ある時代や分野において、人々の根底にある物の見方、考え方、常識の枠組み)によるということ。
事実は確かに1つだけど、科学的な正しさへの価値判断には偏見や道徳的に正しいとされていることが関わってしまう。
事実の扱い方の難しさを知ったし、なかなかめんどくさい。
ロシアのルイセンコの誤った学説で、ソ連の農業と科学を大きく荒廃させた歴史や、ヒトラーの信じた優勢学が米国の白人至上主義の優勢思想からきていることは驚きだった。
他にも、ID論(インテリジェント・デザイン論)や唯物論など、知らない言葉をたくさん学べた。 -
Posted by ブクログ
千葉聡さんの著作は『進化のからくり』『ダーウィンの呪い』に続いて3冊目。前に読んだ2冊が非常に面白かったので期待していて、実際面白かったのだけど、過去に読んだものに比べると記述内容や難易度の幅というかバランスがあまり良くないように感じた。大枠としては小進化(同一の種の中で起こる小規模な遺伝子や形質の変化)と大進化(新しい種の誕生や恐竜から鳥類、魚類から両生類のような属・科の出現に関わる大規模なもの)との間にあるギャップはどのように説明されうるのか、そこに進化学研究者はどのように挑み、考え、論を戦わせてきたのか、というのが基本ライン。その基本ラインに対して、著者自身の研究テーマとの出会いや具体的な研究生活のエピソード、著者周辺の研究者の具体的な研究エピソードなど具体的な話が書かれる部分と、もう少し大きな視点での進化学自体の派閥の違いや論争についてグールドの理論やその変遷に触れながら述べる部分が絡み合って記述されていくのだが、グールドの理論の詳細の方はかなり専門的で派閥対立や理論の変遷を理解しながら追っていくのはかなり難しく、この辺りは進化学自体にある程度触れてきている人でないと厳しいように思うが、新科学やその隣接テーマあたりでの研究者志望の学生であればモチベーションが上がったり、興味が湧いたりする話が多いかと思います。門外漢の進化学ファンとして今後も各種議論や書籍を追っていきたいと思います。
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Posted by ブクログ
ネタバレ科学的に正しい、とは、事実の説明が証拠に照らして信頼できる、または合理的な判断、という意味。
麻疹ワクチンで根絶した後に、もともとワクチンは不要、製薬会社の陰謀論、という批判が生まれた。三種混合ワクチンは自閉症を引き起こすという捏造論文が反ワクチン運動を加速させた。
道徳が科学的な正しさの仮面をかぶる。心情的なものに左右される。危機を未然に防ぐと英雄になれない。心地よく芽出す政策が科学的評価を上書きする。脅威の誇張疑惑は、陰謀論や疑似科学の温床。
インド人民党による疑似科学教育。ソ連ルイセンコの春化技術。
視覚的アイコン、異端、逆境、親しみやすさ、など科学的でない部分に引きづられる。イデオロギー的偏見をでっち上げて、それを理由に相手を攻撃する。SNSや動画配信によって、現代のほうが容易になっている。
優生学を養護するドーキンスの発言(2020年)。価値観で科学的な事実の正誤を判断することは正しさへの脅威。
事実の記述から価値判断や規範は導けない。=ヒュームの法則。
自然的誤謬=善を快楽や幸福など経験体、自然的性質で定義できない=ムーアの法則
他者のイデオロギーの影響を指摘するものが、イデオロギーに影響を受けている可能性がある。
マオリ遺伝子を持つ人間が幼少期に虐げられた生活をすると、反社会的行動をとるリスクが高まる。左利きは短命、等と同じ。価値判断が絡みついている。
右脳型左脳型も非科学的。
明確な遺伝子疾患以外は、ヒトの行動で遺伝子の影響があるのはごく限られている。それだけで説明はできない。優生学の再来。
カンブリア爆発は、爆発ではなく短くても3000万年の間が必要。爆発の意味を取り違えやすい。不連続な飛躍的イベント志向が作り上げた産物。
6度目の大量絶滅のただ中にいる、という言説も、まがい物の科学。過去の大量ゼッツ滅に比べれば1桁、2桁少ない。過去の絶滅は、食物連鎖の崩壊が本体。人為的な観測はせいぜい1000年単位。1万~100万年レベルの過去の大量絶滅とは違う。カンブリア爆発、と呼ばれたケースとよく似ている。
行動変容につなげる意味では6度目の大量絶滅、という表現は意味がある。
多様性=善、というロジックは自然主義的誤謬。
事実と価値判断は分離できない。その意味で現代も近代ではない。
2010年代に入り、再現性の危機が発生した。肯定的な結果のみを発表する発表バイアス。都合がいい結果が出るまで分析する、など。指標が目標になると、それは良い指標でなくなる=グッドハートの法則。
すべての事実は相対的で政治的だから信用できない、という論法。
反証可能性はポパーによる区別。正しさの基準は特定の信念のもとに生まれる。
進化論で説明できない、ことは神の証明になるか。鞭毛の存在は段階的に進化するという進化論では考えられない=神の存在の肯定、とはならない。
外来種の侵入、という言葉にも価値判断がある。移入種の移住と定着、といわれると悪いものという感じがしない。 -
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自身の価値観を明確にし、科学と向き合う。
科学的に正しいというとき、本当にそれは正しいのか? バイアスやイデオロギーが混じっていたりしないか? 著者の領域である進化や遺伝を主に本作は展開していくが、序盤に出てくるルイシェンコの話や、優生学の話がインパクトとして強かった。イデオロギーを強くし、反論を許さないようになるとどうなってしまうと、その先に未来が無くなってしまう恐ろしさを感じた。
また主張する科学者のバックグラウンドにより、主張はガラッと変わり二面性を持つという点も、過去にそんな人いたな…と思い出し納得感あった。 個人レベルでバイアスを排除し、中立に見るというのは難しい。 -
Posted by ブクログ
進化っていいことでは?と思っていた。
けれど、1つの価値観にとらわれすぎる怖さを感じた一冊だった。
ありきたりな感想だけど、歴史を知っておくことは大切。
印象的な一文
・優生学運動に従事した人々の大半がそれがナチスの罪過につながる坂道とは知らずに、その時代、その社会、その階級の価値観に従い、正義と善意に導かれて行動しただけであろう。そもそも私やあなたが、今まさに新しい悪魔をそれと気づかず育てているだけかもしれないのだ。
以下メモ
・進化
遺伝する性質の世代を超えた変化。発展や発達、進歩の意味ではない。
一定後方への変化を意味しない。目的も目標も一切ない。
進化は条件次第でどのような方向にも進みうる。方向性のない盲目的な変化。退化も進化。
・進化の呪いは、生物学の原理を社会に当てはめて生まれたものではない。初めから自然、生物、社会をあまねく支配し、進歩を善とする価値観として存在していたものである。そして、当初のダーウィンの意志が生物の進歩を否定するものだったのにも関わらず、社会も人も進歩すべきという規範と、人々の競争とその結果を正当化するために、神々の摂理をダーウィンの名に置き換えて生まれたのが「ダーウィンの呪い」「ダーウィンの進化論によれば」だったのである。
・ダーウィンの自然選択説
特定の環境下で有利な変異の維持と不利な変異の除去により、新しい性質を作り出す創造的な意味
・スペンサーの適者生存説
劣った変異を除去して変化を止める。弱肉強食。
→2つの説が混ざり、強いものだけが生き残る意味として使われるようになった
・人間の進化が進歩でないのなら、自らの手で人間の進化を進歩に変えねばならない、と考える人が現れた。人間に働いている適者生存の作用を、「真の適者」であるべき「優れたもの」や「強者」や「道徳的なもの」が有利になる作用に変えよう、というのである。
・ナチスが手本にしたのは米国だったのである。移民法を制定して人種差別政策をすすめる米国をヒトラーは賞賛している。彼らのモデルは、米国国民の進化的な向上を目指す優生学運動と人種差別政策であった。
米国で進められた強制不妊手術、社会的不適合者の収容、安楽死に関する議論や、人種差別政策を忠実に再現したのである。
(そんなアメリカも実際のナチスの行いを見て、目が覚めたという皮肉)
・ギリシャ時代からあった優生思想
紀元前4世紀、プラトンは健全な社会を作るために必要な優生政策を「国家の洗浄」と読んだ。政策の要点は、「不適格」な者の排除と「適格」な人間の繁殖であった。
優生学の誤り
・倫理上の誤り
行き過ぎた功利主義が人権と自由を奪う
・科学上の誤り
偏見に基づく科学的な推論
・目的の誤り
人間集団の進化的改良という目的が不適切
人間的に完全とは何か、個人をより人間らしくするものとは何かは価値観による。無数の答えがある。
・「何が事実」かという前提から、直接「どうすべきか」という価値判断や道徳律などの規範的命題は導けない。
人間に競争意識があり、競争が向上心を刺激しレベルアップにつなげる性質を進化的に獲得したという事実から、「人間は競争し、努力すべきだ」という規範は導けない。
・道徳のパラドックス
たいていの人はいつも正しく、善で、道徳的でありたいと願っている。だが道徳への動機が強まるほど、他者から道徳的な欠点があるとみなされることへの強い嫌悪を生むことが知られている。そのため道徳への強い意識は道徳的な欠点や誤りを決して認めない不誠実な意識を生み、反道徳的となる。