千葉聡のレビュー一覧
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間違いなく良書であった。科学的というのが絶対に正しいということはない、というのがよく分かった。
科学者自身の価値判断とどうしても無関係ではいられないし、無関係を決め込んで科学絶対主義のようになると優生学のような倫理観を破壊する方向にも傾きうる。
社会学など文系の話と科学って相反する部分もあると思っていたが、結局科学も社会的活動の一つであり、社会の中で科学者が価値観を表明しつつ、常にフィードバックをうけて変わっていくのが良いあり方なのだと理解した。
人間だからどうしても物語で分かろうとしてしまう、というのもとても共感。客観性は難しく、たぶん個人では本当に客観的になれていることなどないのだな、、と -
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ダーウィンが示したことと社会に流布している進化論的イメージや社会進化論など進化論の他分野への拡大解釈や進化論的比喩との差が大きいかということは吉川浩満『理不尽な進化』でも読んでいたが、ダーウィンの進化論の名の下に「ダーウィンが言っていた」という呪いの言葉でいかに誤った認識が広まり、社会に代償さまざまな悲劇が起こってきたか、その歴史や経緯緻密に構成した内容で良かった。特に後半の優生学については知らなかったことも多かったので読んで本当に良かった。排外主義が拡大したり、生物学遺伝学その他の学問的技術的発展、AIを始めとした他分野の発展など様々な文脈からいつでも優生学的な論理や帰結に戻ってしまう危険性
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Xに、「スペース」という、音声を個人で配信できる機能があるらしい。
その「スペース」を使い、歌人の初谷むいさん、寺井龍哉さん、千葉聡さんがテーマを決めて短歌を募集。選ばれた短歌を発表、御三方で講評するという、私製ラジオのような番組を書籍化。
とても楽しく、読後は短歌というものがますます好きになった。
まず、御三方(プラス、表には出ないけれど裏方の編集者の大久保さん)の、和気あいあいとした雰囲気が心地よい。
鼎談ではなく、リスナーがいる開かれた空間という場所なので、交わされる言葉も内に籠もることなく外に向けられていて、配信している人も、聴いている人も、一緒に番組を楽しんでこう、という気遣いが感 -
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ネタバレブルーバックスだけに、初心者向けの生物進化の最先端解説書だと思っていた。この手の本は素人向けとうたっていても、それは最初だけで途中からついていけないのが普通だ。これはどこまで読めるだろうかと、最初は心配していた。
しかし、大きく裏切られた。おもしろくて、どんどん読めてしまうのだ。それは、筆者の経験、研究仲間とのエピソードなど身近な実話をもとに研究内容を説明・解説しているので、陸貝とかカタツムリの殻のネジレの向きの研究など地味な話でも、退屈しないのだ。
小笠原諸島が世界自然遺産に選ばれるにあたり、筆者の千葉先生の研究成果が大きく寄与したが、そのエピソードも書かれている。感動秘話もあり、ぜひ -
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歌人の初谷むいさん、寺井龍哉さん、千葉聡さんの三人が「短歌を紹介するラジオ番組があったらいいな」と思い番組を作ってしまおう!と考えXのスペース(音声配信システム)で新しい短歌を募集し、紹介することを思いついたそうです。
2024年4月から9月まで三人は月に一度90分間の「スペース短歌」を開いたそうです。
この本は、「スペース短歌」で繰り広げられたトークをまとめたものだそうです。
私は短歌の読解力がないので、この本は全部の短歌にお三人の解説(トーク)で説明があるので非常にわかりやすく面白かったです。
お三人の他にゲストで服部真里子さん、枡野浩一さんも登場されます。
番組に投稿された歌は、私 -
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歌人の千葉聡さんの自伝とその時の短歌集です。
千葉聡(ちばさと)さんは新聞販売店を経営する家に生まれます。
将来の希望は国語の先生になり作家になることでした。
29歳の時第四十一回短歌研究新人賞を受賞されます。
31歳で中学の国語の先生になります。
最初のころは生徒に「ちばさとキモい」と言われたりされますが、だんだんに生徒たちが変わっていき「ちばさとの授業になると教室が飛び跳ねるんだよ」と言われるようになります。
<さよならを素直に言えない子が俺の肩を殴って走って消えた>
<わからないことを放っておく勇気なくて駆け込む有隣堂へ>
<「詩を作れ、書け」ではなくて「詩になれ」と教えた俺の -
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千葉聡こと“ちばさと”は、今横浜サイエンスフロンティア高校で教えている。相変わらず、生徒たちと熱血しているらしい。そのちばさとが、千葉聡から“ちばさと”に生まれ変わった上菅田中学校での体験をつづった「飛び跳ねる教室」に、今の高校での日々のエッセイと短歌を合わせたのが「飛び跳ねる教室・リターンズ」である。中身も熱いが、俵万智の帯も枡野浩一のあとがきも熱い。誰より、ちばさとにインタビューしたことをきっかけに、この本の編集を決断した時事通信社出版局の大久保昌彦さん、あなたが一番熱い。
夢なんて、あるよ ピアノの鍵盤のフェルトのカバーを投げ上げながら -
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世の中には部屋の中でもアトラクション気分を味わえる本ってのがたくさんありますよね。
これもそんな本。内容は決して簡単ではないけれど書き手の知識とストーリテラーとしての能力で読ませるんだなぁ。
まずタイトルからしていい。偶然動植物やコンテナについて来ましたよーではなく、人間が「故意に」「良かれと思って」「よりによって」導入した外来種の罠(当初夢見た物語と隠れた罠という方が正しいですかね)を冷静かつドラマチックに紹介していく。
メインから外れた小さなエピソードながら心にチクっと刺したものがある。第4章「夢よふたたび」の中のものだ。オーストラリアでの毒蛇対策として、またネズミ対策として持ち込まれ -
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人類が神という存在を発明したのと同じように進化論は発明だと感じると思います。
進化の意味には退化も内包することを噛み砕くために、HGウェルズの『タイムマシン』を引用するくだりは最高です。
進化の意味合いがいつの間にか拡大解釈され、進化と進歩が同一視されていってしまう過程。進化論がやがて優生学と結びついていく社会現象。
納得感のある歴史の流れを紹介しながら、最後に導びく“呪い”の説明は人間がもつ道徳と感情でした。
この帰結が気になり調べたら不思議な関連を発見。
アダムスミス『道徳感情論』1759年出版
ダーウィン『種の起源』1859年出版
呪いをとくには『種の起源』と『道徳感情論』を読まねばなら -
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ネタバレめちゃくちゃ面白い!
「進化」を「進歩」と捉えたり,「最も強い者が生き残るのではない。最も賢いものが生き残るのでもない。唯一生き残るのは進化できる者である」という現代人が陥りやすい罠についての解説から始まる。
多くのページを割いているのは,ダーウィニズムから優生思想へとつながる過程と,その時代に生きる科学者の主張,また社会に漂う価値観。このあたりがとてもよく分かる。
特に,ヒトラーによる独裁政権下での暴虐が批判されることは,誰が見ても明らかであるが,「暴虐へと至る過程も分析しなければならないだろう」という姿勢はとても大切だなと思った。
「理由は何であれ、これだけははっきりしている。自由と正義に -
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様々な理由で「人間の手によって」世界中を行き来させられてきた生物たち。主に農作物を害虫から守る「生物的防除」をテーマに、移入種たちがどのように広がり、成功を納め、あるいは失敗し、現代に至ったのかをたどる。
生物たちは自己の遺伝子を地理的に拡散する宿命を帯びています。ですから広がっていくわけですが、そこに人為的な要素があると移入種と定義されます。本書はこの移入種が発生する経緯と経過と結果についてまとめたもので、大変に興味深い内容でした。
まず生物的防除が19世紀には始まっていたことはけっこう驚きでしたし、そこに至る思想的な変遷も(宗教が絡んでいたりして)驚くべきものでした。移入に失敗したケース -
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千葉聡
東北大学東北アジア研究センター教授、東北大学大学院生命科学研究科教授(兼任)。1960年生まれ。東京大学大学院理学系研究科博士課程修了。静岡大学助手、東北大学准教授などを経て現職。専門は進化生物学と生態学。著書『歌うカタツムリ』(岩波科学ライブラリー、2017年)で第71回毎日出版文化賞・自然科学部門を受賞。ほかに『生物多様性と生態学ー遺伝子・種・生態系』 (朝倉書店、2012年、共著)などの著作がある。
当時、小笠原諸島で化石を材料に進化の研究を進めていた私は、彼らの論文によって、新しい世界に誘い出されたように思われます。
もっとも、カート・ボネガットに言わせれば、ガ -
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ネタバレ中学生が自分の可能性を広げていくためのジュニアスタシリーズの一つ
小島なおさんと千葉聡さんが部活の顧問に扮して、短歌の紹介と人生を語るリレーエッセイのような構成。
途中、短歌クイズや基本ルール、歌会の話などあり、入門者でも楽しめる工夫がされている。
小島さんもおじいちゃん猫を飼っているそうです。
イラストで登場しますよ。
『短歌はメッセージ』
『奈良時代の万葉集のころから、平安時代はラブレターとして流行』
『人の想いがギュッとつまった短歌』
『歌壇欄に載ることは、私のひみつが私を知らないたくさんの人のひみつになるような感覚』
『たった三十一文字しかないのに、短歌は多くのことを残しておける詩』