一ノ瀬俊也のレビュー一覧

  • 〈国防〉の日本近現代史 幕末から「台湾有事」まで

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     幕末から現代にかけての〈国防〉を流れで見て行くもの。明治維新と終戦の2回に渡り国防のあり方は断絶し大きく変化したと考えていたが、本書を読んで連続性のあるものだと考えが変わった。当たり前であるが、9章の2010年代以降の国防はまだ評価が定まっていない印象を読んでいて持つ。416ページの大作であり読むのに時間がかかったが、読む価値のある新書だと感じた。

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    2025年10月31日
  • 東條英機 「独裁者」を演じた男

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    東條英機の実像を暴く。独裁者としての姿は全くなく、総力戦を遂行するために努力し、もがき苦しんだ姿を垣間見た。ただ政治家向きの人物でなく、自分の芯をしっかりと持ち、事務仕事に長けたが故に本物の政治家との溝は埋まらなかったように感じる。独・伊の独裁者と違い、非常に人間的な一面を持つ人物だと思う。

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    2025年05月09日
  • 日本軍と日本兵 米軍報告書は語る

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    米軍の対日心理戦研究

    ご先祖様たちのご苦労を知り、米軍報告書の研究の指摘はそのまま今の日本人や私自身にもあまりにも当てはまるので受け止めなくてはいけないと思います。

    「日本人の特徴」「日本人の人種的起源」について
    「彼らが信じている人種的純血性とは異なり、実際は少なくとも4つの基本的人種の混血である。マレーから来たマレー系、華北から来たモンゴル系、朝鮮から来た満州朝鮮系、そしてアイヌのような日本固有の部族」と述べている。

    戦士としての日本兵
    規律はおおむね良好であり、特に戦友が周囲にいたり地の利を得ている時には大胆かつ勇敢である。確かに勝っている時は勇敢だが、予想していないことに直面した

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    2023年06月12日
  • 戦艦武蔵 忘れられた巨艦の航跡

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    戦艦大和と武蔵。姉妹艦それぞれの劇的な最期。対象的な戦後の描かれ方。珍しく二番艦の立場にスポットを照らし戦後ニッポンの戦争感を描く。

    戦艦武蔵は大和に比べ、出番も少なければどうしようもなく悲劇的な描かれ方が多い。

    単に時代遅れの大艦巨砲主義という見方だけでなく、開発の経緯、戦後ニッポンへの技術貢献なと多角的な視点から検証している。

    戦後多く出版された書物のスタンスの比較は圧巻。

    また証言における作為、歴史の事実についての難しさを感じる。

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    2022年08月10日
  • 東條英機 「独裁者」を演じた男

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    2020/12/13東條英機
    1.戦略なきオペレーション
    東條英機に大局から構想する器はなかった。
    それは本来は永田軍務局長がその役割を担う
    暗殺されて全てが狂ってしまった。
    戦略なきオペレーション屋のみの悲劇
    2.反知性
    東條英機はインテリ層に受けないので大衆層の受けを狙った。
    その点では反知性と言える現代の安倍・菅総理に似ている。
    3.政治家不信
    (1)近衛文麿公は軽挙妄動、面倒になると逃げる
    蒋介石問題、大政翼賛会、三国同盟、南部仏印進駐 
    近衛内閣総辞職は敵前逃亡!
    (2)蒋介石を相手にせず
    日中戦争が間違いとしても今さら後戻りはできない
    中国撤兵はありえない
    9月6日御前会議を無効ー

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    2020年12月28日
  • 東條英機 「独裁者」を演じた男

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    A級戦犯か股肱の臣か。知られざる東條英機の実像を探る大作。

    独裁者として欧米にも悪名を残す東條英機。東京裁判出A級戦犯として死刑判決を受けた開戦時の首相兼陸軍大臣。

    その生涯を非常に多くの文献からイデオロギーを排除した東條英機像を提示する。

    特に永田鉄山から引き継いだ総力戦思想の指導者としての役割が多く浮かび上がる。竹槍や戦陣訓など精神論的なイメージがあったが、航空戦力の充実など合理的な一面もあったようだ。

    戦争に至る道については多くの書籍があるが、本書ではサイパン島陥落後の東條更迭の動きについてが新鮮であった。

    一方的に悪役のイメージの東條英機。実像について探る本書の試みはおおむね

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    2020年09月26日
  • 特攻隊員の現実

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    特攻隊員といっても、やさぐれた人もいれば、「おとぎの国へ行きます」というメルヘンな人もいた。国民の方も、特攻隊員にモテモテだった15歳少女「なぜみんなこんなお転婆(死語)な私に夢中になるのかしら。どうせ死ぬなら撃沈させてね。大破なんてイヤ」みたいな子がいた。それはそれとして、志賀直哉の「特攻隊員は死ぬための変態的な教育を受けているから再教育しないとダメ。」というのはいかがなものかと…かといって、坂口安吾の「特攻はいい!戦争も最初から特攻を中心とした体制にしていれば…」というのも贔屓の引き倒して引きずりまくっているような気が。

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    2020年03月12日
  • 戦艦武蔵 忘れられた巨艦の航跡

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    「戦艦大和」とは異なり民間企業の製品である「戦艦武蔵」を深い理解するための決定版ともいうべき内容。

    同型艦の大和と異なり、武蔵の映画などのメディアに取り上げられない、何故か?という疑問へ1つの回答をくれる。
    大量の資料に裏付けられた大和との比較。
    ドラマじみた戦場における感動シーンの戦記物に「あり得ない」という鋭い指摘には脱帽せざるを得ない。

    本作終盤において、男臭い・ミリタリーとは真逆の美少女・萌えのゲーム「艦これ」にも触れ、現代に生きる我々に、社会比較学者として鋭い指摘を与える。

    吉村昭の名作「戦艦武蔵」で納得していた浅はかな自分に、刺激を与えてくれた作品。

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    2019年04月24日
  • 戦艦武蔵 忘れられた巨艦の航跡

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    戦艦武蔵の語られ方について論じた一冊。
    武蔵の艦歴や技術的特徴などには深く突っ込まず、むしろ武蔵に関する様々な言説から、武蔵の語られ方を読みときつつ、戦争や戦艦の様々な「ファンタジー性」に言及するなど、内容は多岐にわたる。
    戦争を知らない我々が戦争や兵器をファンタジー的に捉えるのは当然として、当時の人々もまた同様であるという指摘は、なるほどと思える。

    著者の戦艦に関する理解を知りたくて読んでみたんだけど、去年読んだ『飛行機の戦争』より面白かった。『飛行機の戦争』も読み直してみるか。

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    2018年06月28日
  • 飛行機の戦争 1914-1945 総力戦体制への道

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    ”日本軍=大艦巨砲主義=時代遅れで敗北”
    分かり易いからなあ~・・・^^;

    おわりに「人とその学問的思考はしょせん同時代の空気と
    無縁ではありえないことを理解したうえで、
    継承すべきは継承し、改めるべきは改めるのが
    後の世代の務め~・・・」

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    2017年09月12日
  • 戦艦武蔵 忘れられた巨艦の航跡

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    1944年に完成、46センチの巨砲を備え、日本海軍の切札として期待された戦艦武蔵。しかし、資源不足の日本で武蔵はその巨体を持て余し、活躍することなく沈没。

    武蔵の存在は悲劇なのか、喜劇なのか。本書では武蔵の不幸な運命の原因を探る。

    よく比較されるのが戦艦大和。戦果をあげず沈没した点では共通しているのに、武蔵のストーリーはあまり知られていない。その理由は武蔵の沈没が物語性として陰鬱だったからだ。ゆっくりと沈没したため、爆発した大和に比べて生存者は多かったのだが、その生存者が日本へ送還された者と島に残って補充兵となった者に分かれたことで、生存者同志の一体感が失われた。戦後、生き残った者が武蔵の

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    2017年01月26日
  • 日本軍と日本兵 米軍報告書は語る

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    米軍から見た日本軍。敵からの視点ではあるものの、今までの帝国陸軍とは違う、特別でないという一面を垣間見ることができました。

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    2014年07月21日
  • 日本軍と日本兵 米軍報告書は語る

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    合理的な選択とは、誰にとっての合理的な選択だったのか。

    日本軍という存在を知るのに、身内の資料だけでなく「戦った相手側からの分析された情報」をも資料にする。

    戦後この研究に一般人(私)が触れるまでに、時間かかりすぎたのではないか。
    ようやく歴史になりつつあるあの時代を知るのに良い書籍です。

    ホントはどう戦ってきたかを知ることが出来なかったのは、何故なのかよく考えたい。
    我々の祖先の戦いであり、我々は子孫なのだからこれは知らなかったではすまないレベルで今の現実と向き合いたい。

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    2017年10月03日
  • 故郷はなぜ兵士を殺したか

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    本書は、慰問文や行政文書、手紙等をふんだんに扱い、郷土をフィルターとして戦争を考察しています。

    民衆社会・郷土が担っていた仕組みがうっすら見え、『戦死やあわれ』の「ふるさとの風」の意味が理解出来た。

    「絶大なる愛情のひびきを聞」かせてこなかった故郷、今に至るも聞かせられなかったの何故か?

    歴史を辿ることがないよう願いたい。

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    2015年07月17日
  • 明治・大正・昭和 軍隊マニュアル~人はなぜ戦場へ行ったのか~

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    出征時の挨拶、出征先からの手紙、軍隊生活の送り方など、兵士向けに書かれた「マニュアル」本を史料として通史的に読み解いていく、という内容。「マニュアル」本であるだけに史料の内容は陳腐だが、その陳腐な言葉を個々の兵士がいかに「自己のもの」として消化していったか、という視点から読み解かれています。「強圧的な権力に、イヤイヤながら従わされた純朴な国民」という一面的な見方ではなく、「マニュアル」の言説を自分の〈身体〉で消化しながら「納得」していった、というとらえ方は、ある意味でフーコー的権力?みたいなものを思わせます。もうちょっと長い感想文を書きたくなった本。(20070130)

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    2009年10月04日
  • 日本軍と日本兵 米軍報告書は語る

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    日本軍は精神論ばかりで玉砕してばかりという一般的なイメージに対して、アメリカ側の分析を通して実際の日本軍に迫るという建付けの本である。
    結論としては日本軍は自軍の環境下においては合理的であるというのが本書の結論だ。戦車無い状態で相手に勝つにはそら爆弾持って突撃するしかないだろう。
    しかし、やっぱり読めば読むほど日本軍アホやんというイメージが強くなるのは何なんだろうか(笑)
    そもそもアメリカと戦うことが合理的選択ではないので、その時点で合理的に戦うもクソもないっちゃないのだが。

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    2023年06月25日
  • 東條英機 「独裁者」を演じた男

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    A級戦犯だということで、好戦的で残虐な人だと勝手に想像してしまっていたけれど、印象が変わった。
    総理大臣になるくらいなので、勉強熱心で人の話を聞く姿勢ももっていることにおどろいた。
    太平洋戦争に至った経緯に関しても、陸軍と海軍の両軍が本音で話ができないせいであり、決して東条英機が好んで進んだわけではなかった。
    また総理大臣の決定でも、現場の指揮権はなく詳細にコントロールできるわけでないことも知った。

    結局は誰か1人が原因ではなく、空気感によるものが大きいのだと改めて理解できた。

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    2023年06月13日
  • 東條英機 「独裁者」を演じた男

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    既存の研究や同時代の人々の回想手記だけでなく、最新の研究にまで当たっている。これまで一面的に見られがちであった「東條英機」を前述の資料を活用して再考察している。内容的には至極穏当なものとなっているが、一人の人間としての「東條英機」の限界という面を再確認出来る。人物評伝としてはバランスの取れた良書だと個人的には思う。

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    2023年01月09日
  • 東條英機 「独裁者」を演じた男

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    「人情宰相」という日本的な「総帥」像の演出に腐心した「総力戦指導者」としての東條英機の評伝。
    東條を軸に太平洋戦争開戦の過程を瞥見し、組織の利益追求や責任のなすりつけあいに終始していたことを再認識した。また、やはり東條は、指導者として「小人」の評価は免れないと感じた。

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    2022年10月31日
  • 日本軍と日本兵 米軍報告書は語る

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    日本軍といえば玉砕の軍隊、精神論を振りかざし意味の無い攻撃ばかり繰り返した軍隊という印象が強く刷り込まれているが、それだけではない日本軍の姿、しかも日本軍側からではない米軍側から見た姿が分かる。しかし、メインに扱われている資料は戦中に米軍が兵士の向けに作っていた(言ってしまえばプロパガンダ)雑誌をまとめたものなので、「米軍報告書」とは言えない。
    前半では、米国の娯楽を好み、相手の出方によっては投降もし、ついつい機密情報を話してしまったりサボる人も文句を言う人も現状に疑問を抱く人もいる今と変わらないごくごく普通の日本人、日本兵の姿が見られる。戦場での葬式の様子や、陣地にできるだけ風呂を作ろうとし

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    2022年09月26日