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日本軍というと、空疎な精神論ばかりを振り回したり、兵士たちを「玉砕」させた組織というイメージがあります。しかし日本軍=玉砕というイメージにとらわれると、なぜ戦争があれだけ長引いたのかという問いへの答えはむしろ見えづらくなってしまうおそれがあります。本書は、戦争のもう一方の当事者である米軍が軍内部で出していた広報誌を用いて、彼らが日本軍、そして日本人をどうとらえていたかを探ります。(講談社現代新書)
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Posted by ブクログ
米軍の対日心理戦研究 ご先祖様たちのご苦労を知り、米軍報告書の研究の指摘はそのまま今の日本人や私自身にもあまりにも当てはまるので受け止めなくてはいけないと思います。 「日本人の特徴」「日本人の人種的起源」について 「彼らが信じている人種的純血性とは異なり、実際は少なくとも4つの基本的人種の混血で...続きを読むある。マレーから来たマレー系、華北から来たモンゴル系、朝鮮から来た満州朝鮮系、そしてアイヌのような日本固有の部族」と述べている。 戦士としての日本兵 規律はおおむね良好であり、特に戦友が周囲にいたり地の利を得ている時には大胆かつ勇敢である。確かに勝っている時は勇敢だが、予想していないことに直面したり、追い込まれるとパニックに陥る。 日本軍と互角にぶつかった場合、特に頑強な相手とは見ていなかった。追い詰められ、苦境に立つといつもパニックに陥り、恐怖を示した。 日本軍はすぐ混乱に陥る。手榴弾を投げるふりをしただけでバラバラになって逃げ去ってしまい小銃の良い的となる。 個人射撃は下手だが、集団射撃、すなわち上官の命令による一斉射撃は良好 集団戦法が得意 格闘戦では我々の敵ではない。1対1の格闘に弱い。 英軍も日本兵は精神的に弱いという評価 日本軍の虚を衝くと奴らは全然戦う準備などしていない。奇襲するとパニックに陥り、叫び逃げる。射撃して可能な限り速やかに 一掃すべきである。しかし日本兵がひとたび立ち止まると臆病ではなくむしろ勇気ある戦士となる。 将校を倒すと部下は自分では考えられなくなるようでちりぢりになって逃げてしまう。 日本の銃剣率は単純な突きばかり 銃剣戦でも直突、突きばかりを用い、殴るなどの技を知らなかったりで、弱い。 日本兵でも都会と田舎では相当かの文化的格差があり、都会の日本兵は映画の影響などで相当 親米であった。 靖国に関しても同じであったが、一方で皆降伏したり捕虜になったら、祖国には戻れないと信じている。 個人的には、日本兵は頭脳と自分で考える力を考慮に入れる限り、3流の兵隊だと思う。 日本軍兵士は敵アメリカと戦うための明確な大義を自分で考え、敵を激しく憎むことができなかったことになる。 また、次の日本兵たちの態度に奇異な印象を示していた。 日本兵は互いに愛情を持たない。例えばあるトラック中隊は上級将校の命令がない限りよその中隊を手伝おうとしない。トラックの仕事がないとのらくろ している。 捕虜たちは捕まったら、生まれ故郷の人々に対して終生の恥であると思っていた。 逆に言うと生まれ故郷以外なら元捕虜の汚名を背負っても何とか生きていけるだろうという打算をを働かせる者もいたのである。 日本兵捕虜たちは厚遇するとすぐ協力的になった。 日本軍の司令官が出した膨大な命令は、彼ら自身が、大部分を占める単純な田舎者の兵隊は、連合軍の尋問がうまく乗せれば、喜んで何でも喋ってしまうことを十分認識していることの証である。 と分析されています。 日本陸軍が宗教精神とはほぼ無縁の軍隊だったことが米国人の眼には奇異に映ったのだろう。日本人はあまり意識しないことだが、日本軍ほど宗教性の薄い軍隊は世界的に見ると実は異質な存在なのかもしれない。 死ぬまで戦えという軍の教えを自ら実行した人には実に丁重だが、生きて苦しんでいる傷病者への待遇を劣悪で撤退時には敵の捕虜にならないよう自決を強要している。もはや戦果よりも戦死それ自体が目的化しているかのようである。日本兵にとって戦友の命は軽いものだと米軍は判断した。 日本兵たちの生と死をめぐる心性を「天皇や大義のために死を誓っていた」などと容易かつ単純に理解することはできない。米軍の監察によれば 中には親米の者、待遇に不満を抱き、戦争に倦んでいる者もいたからである。その多くは幸福を許されず最後まで戦ったが、捕虜となったものは米軍に「貸し借り」にこだわる心性を見抜かれて、あるいは自分がいかに役に立つかを示そうとして、己の知る 軍事情報を洗いざらい喋ってしまった。 日本兵は病気になってもろくな待遇を受けられず内心不満や病への不安を抱えていた。戦死した者のみを大切に扱うという日本軍の精神的風土が背景にあり、捕虜たちの証言はそれへの怨恨に満ちていた。これで戦争に勝つのは難しいことだろう。にもかかわらず兵士たちが宗教や麻薬に救いを求めることはないか、あっても少なかった。それがなぜなのかは 今後の課題とせざるを得ない。 日本陸軍は機械に支えられた人間の軍隊であり、 我々は戦闘機械を用いる軍隊である。このことが 両者の明確な違いであり、軍事に関する日本のあらゆる言説がこれを実証している。 「機械力」「火力」で叩きのめされて士気は著しく低下した。日米では「戦争」に対する理解が根本的に違っていた。次元の違う米軍の「物的戦力に臆して」いたのである。 戦争後半のアジア太平洋戦線は悲惨な全滅、玉砕戦の印象が強く、それは決して間違っていない。 日本陸軍の戦法は米軍の阻止という目的に限って言えば合理的と言えなくもない。将校不足という現実に対処するため、兵を切り込みに投入したり、精神論を振りかざすのも、勝つ、あるいは負けないために、他に取るべき手段がないのなら合理的ではないだろうか。 洞窟戦法など、様々な日本軍の戦法を「非合理的」「ファナティック」とはなから決めつけるのは正しい歴史の理解だろうか、当時の日本軍にとってはかなり「合理的」な7戦略」だったのだとも言える。 むろん、日本陸軍の非合理性を否定することとそれを正当化、賛美することとは全く別の話である。戦争指導者たちが狭い意味での合理性を追求してこの戦争は必勝だと自分で自分に言い聞かせるために普通の日本兵たちの人命が惜しげもなく犠牲に供された事実は改めて強調しておかねばならない。 米軍により 「日本軍将校にとっては体面と志操の維持が最も重要であり、それへ空想的な英雄気取りとなりがちである」との指摘がある。
米軍から見た日本軍。敵からの視点ではあるものの、今までの帝国陸軍とは違う、特別でないという一面を垣間見ることができました。
合理的な選択とは、誰にとっての合理的な選択だったのか。 日本軍という存在を知るのに、身内の資料だけでなく「戦った相手側からの分析された情報」をも資料にする。 戦後この研究に一般人(私)が触れるまでに、時間かかりすぎたのではないか。 ようやく歴史になりつつあるあの時代を知るのに良い書籍です。 ホ...続きを読むントはどう戦ってきたかを知ることが出来なかったのは、何故なのかよく考えたい。 我々の祖先の戦いであり、我々は子孫なのだからこれは知らなかったではすまないレベルで今の現実と向き合いたい。
日本軍は精神論ばかりで玉砕してばかりという一般的なイメージに対して、アメリカ側の分析を通して実際の日本軍に迫るという建付けの本である。 結論としては日本軍は自軍の環境下においては合理的であるというのが本書の結論だ。戦車無い状態で相手に勝つにはそら爆弾持って突撃するしかないだろう。 しかし、やっぱり読...続きを読むめば読むほど日本軍アホやんというイメージが強くなるのは何なんだろうか(笑) そもそもアメリカと戦うことが合理的選択ではないので、その時点で合理的に戦うもクソもないっちゃないのだが。
日本軍といえば玉砕の軍隊、精神論を振りかざし意味の無い攻撃ばかり繰り返した軍隊という印象が強く刷り込まれているが、それだけではない日本軍の姿、しかも日本軍側からではない米軍側から見た姿が分かる。しかし、メインに扱われている資料は戦中に米軍が兵士の向けに作っていた(言ってしまえばプロパガンダ)雑誌をま...続きを読むとめたものなので、「米軍報告書」とは言えない。 前半では、米国の娯楽を好み、相手の出方によっては投降もし、ついつい機密情報を話してしまったりサボる人も文句を言う人も現状に疑問を抱く人もいる今と変わらないごくごく普通の日本人、日本兵の姿が見られる。戦場での葬式の様子や、陣地にできるだけ風呂を作ろうとしたことなど興味深い豆知識的なことも多いので面白く読めた。 後半は戦術がメイン。図解も多いので分かりやすいと思った。今はくだらない犬死と一蹴されてしまっている戦法も当時の米兵には脅威だったものもあるそうで興味深い。 戦法とその戦果や被害だけを見るのではなく、その戦法が生み出された背景や根拠を探ることが大切。 日本人超人説の都市伝説を信じる米兵達に米軍上層部手を焼いていたのがよく分かるが、日本兵をある意味でも別格視しているのは現代の日本人も同じだろう。日本人の本質は今と全く変わっていない。
現代では戦時中の日本軍を「狂信的に天皇に忠誠を誓い命を投げ捨ててる得体の知れないもの」として捉えがちだ。 しかしアメリカの資料からは戦争を嫌い、死を嫌い、上司の愚痴を言い、捕虜になって良くされたら機密情報も簡単に漏らしてしまう極めて人間的な一面が見えてくる。 そしてそこからは現代日本に通ずる面も見え...続きを読むてきて、日本人にいまも染み付く精神があぶり出されてくる。 例えばバンザイ突撃は軍部で問題視されていて、命を大事にするように軍部から通達もきていた。 つまりバンザイ突撃は絶望的状況から生まれる集団自殺である。 そう捉えると、現代日本の自殺率を見るに、いまだに日本人はバンザイ突撃をしているとも言えるかもしれない。 もちろん敵国ゆえのフィルターもあるはずだが、別のレンズより捉えることでより立体的に第二次世界大戦について見つめ直すことができた。
日本兵が捕虜になろうとしなかったのは末期のことで、初期には捕虜になった者も多いこと。投降を躊躇ったのは上官からの指示によってではなく、出身地での自分および家族の立場を恐れてのことというのが、印象的。 捕虜となった時に、助命されたことに恩義を感じ礼が必要だと感じる習性を見抜かれ、それを利用して情報提供...続きを読むさせるべく周到に計画されたいた。 都会の出身者は米国映画に接しており親米であって、戦地の娯楽として米国映画も見ていたという。 一方、日本軍の衛生意識の低さには暗澹となる。医療が充実していたらガダルカナルで勝てなかったという評価が、米側にはある。補給と並んで軽視された医療。 そして、戦地が本土に近付くにつれ、補給線が短くなって物資が行き渡るようになったというところが、悲しい。
アメリカの軍広報誌「Information Bulletin」から見た日本兵の実像。ともすると美化されがちな日本兵について、まさに地に足が着いた情報である。 以下のような今まで知らなかった情報が盛りだくさんで興味深かった。 ・実際に戦う前はアメリカは日本兵をsupermanとして怖れていた ・日本兵...続きを読むの中にもアメリカに親近感(Pro-American)な兵が多くいた(日本軍に捕虜になった後、解放されたアメリカ兵の証言) ・日本兵は一旦、捕虜になると日本軍の情報を積極的に話していた
第二次大戦中の米陸軍情報部が陸軍兵士向けに発行していた情報誌における、敵国・日本陸軍および日本兵の研究記録。一般的にいわれているほどに日本陸軍が玉砕・バンザイ突撃を繰り返していたわけではなく、貧弱な兵站にもかかわらず工夫してジャングルでの戦いをしていた姿が浮かぶ。 日本軍については、 ・決められた...続きを読む作戦遂行は得意だが突発事態に対応ができない ・体格差があるとはいえ一対一の白兵戦は苦手 ・夜襲・奇襲に頼る ・奇襲時には奇声をあげる ・兵員の健康への配慮が希薄 という総括がされている。 南方、硫黄島、沖縄と戦局が移る中で、米軍は九州と関東への上陸作戦を立案しており、戦車に対して日本軍が作りうる防衛トーチカの構造を米陸軍が研究し、配下の兵隊たちに教宣していた事がわかる。 わずか二世代前に、日本と米国が国をあげての殺し合いを行っていた事実に愕然とする。
米軍軍事雜誌から、日本軍の様子を分析する、という視点がおもしろい。こんなに冷静な分析書が広く展開されていたとは知らなかった。日本軍側の伝達の悪さを考えると、そもそも戦闘そのものになってなかったかとも思える。 その米軍分析中にも、米軍も日本軍同様の意思の疎通の悪さや、無作戦攻撃になりがちとの指摘が...続きを読むある。どこまでも冷静に見える。集団性はあり、調子良いと強いが、ちょっとしたゆさぶりですぐにばらばらになり、行動、意識がすっとぶ、という点が、今の日本人も変わらん、とする著者の指摘にも大きく納得するところ。 本書から得られた知識を何かの糧にしたい。
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一ノ瀬俊也
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