あらすじ
なぜ国民は飛行機に夢を託し、人、金、物を提供したのか――。貧しい人びとの出世の手段としての航空兵。国民一人一人がお金を出しあって飛行機をつくる軍用機献納運動。防空演習ですり込まれる空襲の恐怖と、空中国防の必要性。学校、親への「説得」を通して行われる未成年の航空兵「志願」……。日本軍=大艦巨砲主義という通説をくつがえし、総力戦の象徴としての飛行機に焦点をあて、戦前、戦中の現実を描く。
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Posted by ブクログ
”日本軍=大艦巨砲主義=時代遅れで敗北”
分かり易いからなあ~・・・^^;
おわりに「人とその学問的思考はしょせん同時代の空気と
無縁ではありえないことを理解したうえで、
継承すべきは継承し、改めるべきは改めるのが
後の世代の務め~・・・」
Posted by ブクログ
あたかも第1次世界大戦から第2次世界大戦までの航空戦の通史を思わせる書名だがさにあらず。日本において軍部やメディアが戦争における軍用機や航空戦の必然性・必要性をいかに宣伝し啓蒙したか、大衆がいかにそれを受容して航空戦力を主とする総力戦体制の担い手となったか、その変容を多彩な史料から明らかにしている。 単なる戦史、兵器開発史では全くなく、常に「銃後」としての地域社会とそこに生きる人々が視野に入った社会史的な研究となっている。
本書が再三強調するのは、戦後人口に膾炙した「日本軍は時代錯誤の大艦巨砲主義を信奉し、空軍力を軽視した」式の主張は事実ではなく、第1次大戦以降、陸海軍やそれに付随したメディアは航空戦が戦争の主役となったこと、それゆえ飛行機の軍事利用の重要性をことあるごとに喧伝し、大衆レベルでも女性や子どもまで含めて受容していたという点である(むしろ軍艦増強を続けるアメリカ批判の文脈で「大艦巨砲主義」が用いられた)。非合理な精神主義ゆえに対米戦争に突入したのではなく、日本は国力で劣るというリアルな共通認識ゆえに、集中投資的な航空戦力をもって早期決戦を図るという、疑似合理性を装った思考が好戦的世論を形成したとみなす。飛行機の威力が戦局の帰趨を決するという認識が国民的に共有されていたからこそ、戦時期の航空機増産体制は支持され、航空「特攻」も受容されたという見方は説得力に富む。今日の排外的・好戦的世論や政治、あるいはゲームやアニメなど娯楽コンテンツにおける「ミリタリーもの」の「啓蒙」効果を批判的に捉える上で、参考にもなろう。
Posted by ブクログ
太平洋戦争の敗因として、大艦巨砲主義があげられることが多いけど、それは歴史の塗り替えがあったからだとする。
日本はその生産力の低さからも航空主兵論を早くから訴えてきた。実際に国民もそれを受け入れていたらしい。悲しいのは、貧困からの脱出のために海軍、それも航空部隊に就職するしかなかったこと。だからパイロットは東北出身者が多い。
戦争を遂行する戦略はそう間違ってはいなかった。ただ戦略をたてる前提が間違っていたわけだ。それは損耗率と技術力だと思うのだが、実はこの手合いの本で日本の技術力に因を求める者は少ない。不思議だ。何か理由があるのかな。
コアな学習教材
ひとつの事象を裏付ける為に、数多くの資料を集めて解説している感じで、内容的には狭く深い。
教材としては秀逸だが、読み物としては面白くはない。少しずつ半年以上かけてなんとか読みきった。