甲田学人のレビュー一覧
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匿名
ネタバレ 購入済みテーマは好き
童話を主軸に物語が展開されていく本作品。劇中では登場人物が「暗喩」という表現で説明しているように、起きた事件を分析し、その概要から連想される物語を推測し、対処にあたるという流れが作られている。寓話・伝承同様にさまざまな見解が生まれる童話の特徴性を利用していて味わい深い。
その一方で、利点を活かしきれていないように感じた。作中のかなり早い段階で灰かぶりについての説明がされると、そのままコンパクトにストーリーが進んでいった。本巻で事件の中心人物となるキーパーソンも起伏があまりなく、淡々と終局へと向かっていったので、もう少し意外性のある展開がほしいと思った。
構想はとても好意的。だが「嫉妬・ -
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Missing以来のファンで全作品読んでます。
私が大人になってしまったのか、設定やキャラクターを見直して一般向けに書いた方が、著者の知識や見聞を活かせるのではないかと最近は思ってしまいます。(Missingやグリムの時はそういった感じは受けなかったのですが)
文章や表現や題材は相変わらず大好きなので、おそらくこれからも作品が出れば読み続けますが…慣れてしまったのかあの頃文章を読んで感じた新鮮な感動みたいなものが薄くなっていて、難しいですね。いつだったか数年前にWEBでのみ無料で読めた作品(タイトル忘れました)は久しぶりに良かった気がしたので、まだまだ期待しております。 -
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ネタバレ新装版、無事完走。
敵の敵は味方ではないが、ここまで来ると摩津方は頼もしい味方に見えた。
魔女への最後の一撃は彼の分もあったから届いたと思うし。
最後の最後まで文芸部員たちはバラバラのまま。
でも孤軍奮闘、それぞれが役目を果たした最終決戦。
魔王様はただ待ってただけな気もするが。
そんな中、黒服たちが完全に蚊帳の外なのが、何とも。
彼らと魔王様たち、こうも開いてしまったか。
書き換えをしたという終盤、自分は雰囲気、そして魔女と魔王様の結末しか覚えていなかったのだが、特に違和感なく受け止めた。
結局、文芸部メンバーは本当にバラバラに。
残された追憶者は、ただ追憶する。
ただ残ったメンバーも -
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ネタバレ悲劇と言うならば、下巻の方が余程悲劇だったような。
武巳くんはいよいよ取り返しのつかないことに。
文芸部もますますバラバラな状態だし、それでいて魔女に魔術師に、の三つ巴状態。
よかったと言える点は、これまでの怪異が一つの結論に集約された点か。
だからといって、=解決策が見つかる訳でもないが。
今回の魔王様は本当に後手後手の静観で活躍しなかったし、不安ばかりが募る展開である。
一度異界を経験した者以外の死者は今回出ていないが、恐怖演出はかなりのもの。
夏に読むにはぴったりの三部作だった。
(そのために上中下揃うまで温存していた人) -
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ネタバレグロさは控えめだけれど、不穏さは増し増しな8巻。
結局今回の事件で被害に遭う生徒の人数としては本当に少ない。
でも、文芸部内での不協和音は既にこの時点で響いている。
いや、もう少し前からか。
武巳が「そうじさま」と関わってから。
彼は今回もほぼ個別行動になり、ついには重傷を負ってしまうし。
タンク役な俊也も、恐怖を抱えたまま後戻りできない状態だし、こんな状況で果たして魔女の野望を打ち破れるのか。
電撃文庫版で最後まで読んではいるものの、不安で仕方がない。
書き下ろしは魔王様の食生活から発展して生贄へ着地する話。
どうしてこうなったと、少し唐突さは感じたけれども、興味深かったです。
そう、好 -
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シリーズ最終巻。
蒼衣の断章の力を利用してこの世に別れを告げることをもくろむ神狩屋は、颯姫と夢見子を連れ出します。蒼衣たちは彼のゆくえを追いますが、神狩屋は蒼衣の力の発動を誘発するために、けっして許されない行為に手を染めていきます。
神狩屋の陰謀の背景を蒼衣が「理解」し、事件に最終的な結末が訪れることになるのですが、登場人物たちの魅力がじゅうぶんにえがかれることのないまま物語の終結がやってきたような印象を受けてしまいました。多少活躍の場面を見せた勇路も、いささかスケールの小ささがめだってしまいますし、それなりに複雑な背景をもっていたはずの笑美やリカはモブキャラのようなあつかいになっています -
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神狩屋が去ったあとの古道具屋を入谷克利(いりや・かつとし)が訪れ、蒼衣に店内の書斎のカギを託します。神狩屋の書斎に入った蒼衣は、そこで神狩屋が蒼衣の断章に関係する溝口葉耶(みぞぐち・はや)の失踪事件にかんして調査をしていたことを知ります。
神狩屋がいなくなったあと、ロッジにやってくる笑美とそりがあわない雪乃も、蒼衣に同行して葉耶の記憶をたどり、蒼衣の過去に起こった事件の真相に近づいていきます。
これまであまりその断章の秘密について触れられてこなかった夢見子も、ようやくストーリーの主筋にからんできて、どのような結末へととりまとめられることになるのかたのしみです。 -
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前巻の最後に、蒼衣の能力の発動によって「葬儀屋」がこの世からいなくなってしまい、関東の騎士団に動揺が走ります。責任を感じた蒼衣は、まだ精神が不安定だといって反対する神狩屋の忠告を振り切って、他の騎士団からの要請におうじることを決意します。
蒼衣が向かったのは、飯田真佐代(いいだ・まさよ)という女性が世話役を務める騎士団でした。そこで彼らは、眞守大輔(まもり・だいすけ)という男と会うことになります。彼は、娘の死を受け入れられない妻を救うため、葬儀屋に依頼して娘を生き返らせていました。しかし、蒼衣の力によって葬儀屋が死んだために、娘もふたたび亡くなってしまい、狂気の淵にいる妻のために苦悩していま -
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「葬儀屋」のもとから一人の死体が逃げ出したという連絡を受け、蒼衣たちは捜索を手伝うことになります。逃げ出したのは浅井安奈(あさい・あんな)という少女で、彼女のゆくえを追ってきた蒼衣は、安奈のクラスメイトである多代亮介(たじろ・りょうすけ)という少年が、彼女を連れているのを発見します。亮介は安奈を逃がすために蒼衣に傷を負わせ、さらに夢見子の予言によって「しあわせな王子」にまつわる泡禍が起こることが告げられます。
葬儀屋の助手を務める可南子にも尋常ならざる背景があったことが明らかとなり、ストーリーにどのようにからんでくるのかたのしみです。それにしても、登場人物のほとんど全員が一筋縄ではいかない背 -
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「異端」になってしまった莉緒の母親が逃げ出し、「葬儀屋」の瀧修司(たき・しゅうじ)の助手を務めていた戸塚可南子(とつか・かなこ)までもが命を落とします。さらに勇路は、なぜか死んだはずの瑞姫とともに行動しており、その秘密を明かそうとしません。そんななか、さまざまなゆがみを抱え込んだ莉緒の家族の亀裂が大きくなり、彼らのなかから泡禍にも劣らないほどの凶悪な行為に手を染める人物が出てしまいます。
泡禍によって引き起こされる非現実的なグロテスクな描写以上に、ふつうの人間によっておこなわれる残酷な行為の描写が執拗につづき、少々ぐったりしてしまいました。 -