杉山春のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレ多くの児童虐待事件を取材してきたルポライターが、これまでの取材をもとに虐待や暴力、家族、社会のかかわりなど考察。以下、備忘。
・虐待する親も、人並み以上に「良い子育て」をしようと努力した時期がある。
・自らは子ども時代に虐待を受け、あるいは親の精神疾患などで結果的にネグレクトを受け、子育てモデルを持たない。
・困難に直面したとき、人は公的支援を含め環境調整をして乗り越えようとするが、子ども時代から暴力を受け、誰にも助けられず育つと、大人になってからも他者に頼ることができず、我慢、逃避、暴力に。
・将来を見通して行動する力が弱い。
・「満州女塾」の言及も。満州開拓民の花嫁として送られたが、戦局悪 -
Posted by ブクログ
【遅ればせながら読みました】
虐待をした親、とされた方々に「生真面目さ」がある、というところには強く共感しました。自分の仕事を振り返るいい機会になりました。
「新しい社会的養育のビジョン」について解説されていました。里親委託の件が波紋を広げているところです。たしかに里親さんもいろいろで、私も病院時代に里親さんの虐待事案に複数接し、通告してきました。それもこれも成功の鍵を握るのは「自治体の正規の職員として、専門職を置けるかどうかが重要だと思います」とあります。全くその通りで、ソーシャルワーカーがきちんと専門職として正規に採用され、きちんと能力を高めつつその力を発揮できる環境が整えば -
Posted by ブクログ
名古屋市郊外で3歳の女の子がダンボールに入れられたまま、ほとんど食事も与えられず餓死した。
ネグレクト(育児放棄)の典型的な事例が数多くみられるこの事件を3年半に渡って追ったルポルタージュ。
このような事件があると激しいバッシングが起きるが、
誰かを叩いて自分の日頃の憂さ晴らしをするのが目的ではないなら、ちょっと一呼吸して同じ様な事件が起こらない為にはどうすれば良いか考えてみるといい。
バッシングは育児に追いつめられた人が声を挙げにくい社会にしていませんか?
・社会と隔絶され家に篭もりっきりで育児に明け暮れる妻
・家事は女の仕事と考え、仕事やゲームに没頭する夫
・友達のような親子だが、深刻 -
Posted by ブクログ
当時5歳の男の子を置き去りにして餓死させた、ネグレクトの事件。冒頭に出てきた報道の文章は記憶していた。そんなことがありうるのか、と胸が傷み、父親に対して強く憤ったことも覚えている。その報道がウソ、とはいわないまでも、事実はいくぶん違っていたのではないか、といわれると「え?」となる。父親には知的な障害があり、系列だてた証言ができなかったことによる誤解だったというのだ。生きたまま閉じ込められたというのも、果たして事実だったのか。男の子が亡くなった後、父親はしばらくいっしょに過ごしていたという証言もあるという。う~ん、なんとも考えさせられる。IQ69で、運転免許をとり運送の仕事ができるのかなぁ、とい
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Posted by ブクログ
知的な水準が障害かそうでないかのボーダーライン上にあると思われる親たちは、その意図はなくても、支援を求められないため、結果的に子供を虐待してしまう。他方、こういう人たちは、職場では遅刻もなく高い評価を得ている。コツコツ積み重ねていくことは得意なのに、抽象的な思考や見通しを持つことに難があり、時系列で説明するのも苦手。普通の大人なら人に助けを求めるのに社会にSOSを出せず孤立感を抱えている。昔であれば地域や社会がそんな人たちの面倒をみてきた。
精神遅滞と呼ばれる人たちは生物学上では2%程度と言われる。日本には270万人いる計算になるが、障害者手帳を取得している人は全国に74万人。
社会の中で孤立 -
Posted by ブクログ
数々の児童虐待事件を取材した著者が、その背景にある日本社会の家族規範の変容を追いながら、悲劇を防ぐ手だてを模索する。
厚木男児遺体放置事件などの事例を分析することで、児童虐待について、加害者である個人に責任を帰すことに疑問を呈し、児童虐待の背景には、父親は仕事で家族を支えるものであり、母なるものは子どもを育てなければならないという近代家族の家族規範や、家族を支えない社会、家族を従属させようとする国家があると指摘する。
著者が指摘するような児童虐待を生む社会的背景があるという側面はあると思うし、社会による家族支援が必要という主張にも共感はするのだが、本書全体を通じて、児童虐待の原因を社会に求める