杉山春のレビュー一覧

  • ルポ 虐待 ――大阪二児置き去り死事件

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    みんながみんな本書のような親ではないと思うが、虐待する親の人物像を垣間見ることができた。少なくとも本書を読めば、幼い子どもの死はこの親だけの責任とは言えないだろう。かと言って、この母親の夫や両親や友人、行政の職員、近所の人など、特定の誰かに責任を擦りつけられるほど単純な話でもない。
    母親に「罪を償え」というのは簡単だが、そうした態度は母親に酷い仕打ちをして、さらなる孤立を招いてはいないだろうか。「私はこんな母親にはならない」という声もあろうが、それは色んな意味で恵まれた人だと思う。虐待はなくしていかねばならないが、それは特定の誰かを罰することで実現するものではなく、虐待が起こる状況にもっと目を

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    2024年02月19日
  • ルポ 虐待 ――大阪二児置き去り死事件

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    ネタバレ

    読む前からニュース記事を読んで事件の概要は知っていたので、犯人はとても残酷な方だと他人事のように思っていた。でも本を読んでいくとどこか自分にも重なる点があって他人事には思えなくなっていった。
    また物事の捉え方、思考の仕方などが未熟な点や幼少期の不安定な家族関係が今回の事件に関係していて、それは本人だけの問題ではないと思った。
    母親から助けて欲しいと周囲に言う努力も大事だけど、それと同じくらい周囲の人の助けが必要か声をかける努力は大事だと感じた。
    この事件には母子家庭の貧困、子育て支援、核家族化、近所付き合いが疎遠になるとか色々な時代背景が関連してて簡単には理解できないなと思った。
    犯人は残酷な

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    2023年05月15日
  • ネグレクト(小学館文庫)

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    小学館ノンフィクション大賞を受賞した本書は、2000年12月に起きた愛知県武豊町女児餓死事件のルポルタージュである。若い両親には2004年に殺人罪で懲役7年の判決が下った。
    2000年の当時はまだ虐待への対応が確立されていなかった。試行錯誤を重ねてきた児童相談所の職員や意識の高い小児科医もわずかにいたが、まだまだ虐待への適切な対応は浸透していなかった。
    武豊保健センターの職員は母親と関わろうとした。母親との関係が築けない彼女を助ける上司はいなかった。奮闘する職員が孤独だった。母親はさらに孤独だった。親も頼れない。夫は無関心。子育ての悩みを抱えて孤独だった。誰も彼もが孤独の中で幼子が命を落とした

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    2023年04月29日
  • 児童虐待から考える 社会は家族に何を強いてきたか

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    タイトル通り、虐待に詳しいルポライター杉山春の考察がまとめられた本書。子どもを死なせてしまった親の実像から社会のあり方まで様々な考察が収録されている。先日読み終わった森達也著『U』と同じテーマが含まれている偶然に驚いた。
    あるシングルファザーはアパートに子どもを閉じ込めて働いていた。その末に死なせてしまうが、その後7年間家賃を払い続けていた。彼には知的障害があった。IQ69は境界知能より低いが、仕事はこなしていた。それを根拠に「子どもの死を予想できたはず」として長い懲役刑の判決が下った。
    そこにはマスコミと裁判員制度の問題が絡んでいる。マスコミが虐待に対する市民感情を煽る。虐待死させた親は「鬼

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    2023年04月22日
  • ネグレクト(小学館文庫)

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    辛いなぁ。
    事件を知った時は「鬼畜!」と思ったけれど、日常が続いていくうちに箱の中にいるのが普通になってしまったんだな。

    妊娠して産んだからって上手く育てられるわけじゃない。
    簡単に子どもを手放せるようになったらいいのに。
    子どものため。

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    2023年02月09日
  • ルポ 虐待 ――大阪二児置き去り死事件

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    2022/3/17

    有名な虐待死事件。
    著者がだいぶ母親寄りになっているな、と読み進めていくと、その理由もわかる。
    誰もこの母親の味方となる人はいない。

    ただ、仮名で書かれているのに本名が出てしまっている部分があって校正が。。

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    2022年03月17日
  • 児童虐待から考える 社会は家族に何を強いてきたか

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    ルポ虐待を読んでからすぐ拝読。
    苦しい話だが、ただただ感情的な個人の悲しい 目を背けたい事件 で終わらせず、背景や物語を丁寧に伝えてくれる。
    いま、自分が生きるために食事の準備をしたり栄養を考えたり運動したり、誰かと一緒にいきようとしたり、ペットのお世話をしたり、保育士になったり。それらは"普通のレール"かもしれない。けどそのこちら側の普通は、向こうにとっての"知らなかった生活"な場合もあるのだと。そうした若者が、小さい時にアタッチメントのなかった子どもが歳を重ね性に出会い親になっていく。
    社会の仕組みや戦争時代のレポートを含めた聴取や、何より孤児を出さ

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    2021年10月15日
  • 自死は,向き合える 遺族を支える,社会で防ぐ

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    メモ、自殺学の父シュナイドマン、自殺研究の始まりは、1970年ごろから。2000年代にはカトリックが自殺者を責めてきた考え方を反省している。残された遺族が攻撃されたりするところが一番辛い。

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    2021年08月12日
  • ルポ 虐待 ――大阪二児置き去り死事件

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    最初の章は、子ども二人が餓死するまでのお母さんの動きを追いかけたもので。もう、なんとも言えない怒りが込み上げるものでした。

    が。

    次章からのそのお母さんの生い立ちを追って行くにつれ、、、、
    このお母さんの悲鳴が本から聞こえてくるんじゃないか、、、と、思うほどに、追い詰められていく声が聞こえてきました。

    誰かホント、気がついてあげて!
    助けてあげて!
    手を差し伸べてあげて!!!

    っていう。

    子ども二人を餓死させたことはホントに痛ましく、、、自分の子どもを思うと信じられないと思うけれど、、、このお母さんの気持ちを考えると、、、このお母さんもとても救われなかったと、、、、もしかしたら、死ん

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    2021年04月03日
  • 児童虐待から考える 社会は家族に何を強いてきたか

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    児童虐待のニュースを目にするたび、自分のことのように感じる。逮捕される親を映像で見るたびに、違和感を感じていた。
    私も3児の母だが、虐待をして逮捕される親と、自分との違いは何なのか。そんな疑問に答えてくれた本だった。

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    2021年02月28日
  • 児童虐待から考える 社会は家族に何を強いてきたか

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    ネタバレ

    「完璧な」子育てを求める社会とその社会規範を内面化した親たち。能力や環境によってそれが不可能になると虐待となってしまう場合がある。
    困った人が気軽に助けを求めることができない社会。
    支援する制度があってもそれに頼ることを知らない、知っていても頼ろうとはしない社会不信の親たち。
    弱さを見せても大丈夫だという信頼をもてる社会にする。

    第1章 ルポ 厚木男児遺体放置事件
     1 作られた「残酷な父親」像
     2 助けを求めることを知らない親たち
    第2章 「近代家族」という呪縛
        ――二つの虐待事件を追って
    第3章 国家と家族のあいだで
        ――「満州女塾」再考
    第4章 社会につながれない「ニ

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    2020年08月23日
  • ネグレクト(小学館文庫)

    匿名

    購入済み

    手が掛からなければ真奈ちゃんは普通に愛され生きていけたのか?
    子どもは親の所有物でなくひとりの人間なのに、自分の思い通りにならないと力で思い通りにしようとしたり放棄したりする。
    自分と同じように大切に思えれば、と思うがこの人達は自分も大切と思えないのだろう。悲しい…

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    2020年07月07日
  • 児童虐待から考える 社会は家族に何を強いてきたか

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    虐待をするのはひどい親、と言うのは簡単だが、実はそう単純ではない。DV、貧困、両親との不仲、社会的孤立、非行、幼少期の虐待経験、軽度知的障害など、重なりに重なって親を苦しめている現実がある。

    読んでいると、目を覆いたくなるような悲惨な状況があり、何の罪もなく亡くなった子供達が本当に哀れだと感じた。

    満州女塾の話と、現代の児童虐待の状況が似ているという見方がなるほどと思った。追い詰められた人間のしわ寄せが、一番弱い者へ向かう。

    考えさせられる箇所が多々あったが、著者の取材を元に書かれた文章は非常に具体的で、読むのに辛い部分もあった。

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    2020年07月26日
  • 自死は,向き合える 遺族を支える,社会で防ぐ

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    自死遺族が置かれている状況と、自殺未遂者の支援について。
    ジャッジではなく、アセスメントを。
    生身の痛みを知ることから始めることを。

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    2019年12月30日
  • ルポ 虐待 ――大阪二児置き去り死事件

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    逃げることが癖になっている。
    思考は停止して、現実に誠実に向き合えない。
    嘘をつき、見栄を張る。
    それは、自分にもうそをつくことだ。

    これが病気なのか?
    ただの愚かさではないのか?

    もちろん、育った環境は悪い。
    父親も、愛情をかけたつもりになっているだけ。
    母親も、ろくでもない。
    それでも、結婚して幸せだった状態を壊したのは、本人だ。
    みんな、ささやかな幸せを、必死で守って生活しているのだ。
    大切なものを守るために、己を律して、生活を正して、気をつけて生きているのだ。

    嘘つきは泥棒の始まり。
    この言葉は、本当だと思う。
    自分には甘いけれど、周りを大切にすることはできない。
    差し伸べられた

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    2021年03月18日
  • ルポ 虐待 ――大阪二児置き去り死事件

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    4.5
    熱心な取材に基づき、母の背景から原因を探っていった本書。母の生い立ちや周りの者たちのことなど、よく書かれていると思う。
    母とは一度の面接だけ、元夫からは取材を得られなかった分、母の友人や母方祖父母、当時の勤務先の店長、マンション住民などから細かく聞き出して姿を描き出せていたと思う。
    とても興味深い一冊。

    簡単に「母」を降りられるように、そして子育てを母に押し付けてない世の中になるように願うばかり。

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    2019年07月01日
  • 児童虐待から考える 社会は家族に何を強いてきたか

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    厚木男児遺体放置事件、大阪2児ネグレクド事件などの児童虐待事件について、丁寧に取材され、その上で考察されているので事件を深く理解するきっかけとなった。
    満州女塾の話は初めて知り、とても衝撃的だったが、現代の孤立する家族に似ている。

    この本で一番の衝撃は、大阪2児ネグレクド事件の母が語った「子どもが嫌になったのではなく、子どもの周りに誰もいないのを見たくなくなったから。」。実際、下の子の1歳の誕生日に誰からも連絡なく、翌日から外泊が始まってる。誕生日前には元旦那に一緒に過ごすことを提案しても断られていて、ギリギリまで母として頑張っていたことを知ると、必ずしもこの母だけが悪いのではなく、育った環

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    2019年05月29日
  • 児童虐待から考える 社会は家族に何を強いてきたか

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    【犠牲者たち】

    虐待される児童は被害者。
    虐待する親も被害者。

    親はなぜ被害者なのか?
    自身が親から虐待を受けていた。
    貧困。
    社会資源と繋がっていない。
    社会資源にどのようなものがあり、誰が繋いでくれるのかが分からないのだ。なんと「不親切」な世の中なのだろうか。虐待が見つかってからでは遅く、虐待前に支援をしなくては虐待は無くならない。

    加えて「不寛容さ」
    社会資源を使うことに対する後ろめたさ、「社会資源を使うこと、人に頼ることは親として失格」と思う恐れ。

    親が虐待するのは不寛容な社会が原因だ。

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    2019年04月11日
  • ルポ 虐待 ――大阪二児置き去り死事件

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    事件から結構時間が経ったけどなぜか頭に残り続けていて、どっかがまとめてたりしないのかな〜と探してたらちょうどちくまが新書を出していた!一気に読んでしまった。被告人の周囲の人たちの証言や事件までの経緯の陳述で、少しでも理解できたのではと思うけど、果たして

    報道されてたときはとにかく子供ふたり置き去りにして遊びまくって挙句死なせたってことがめちゃ衝撃で、そんなん平気でやっちまうとか悪魔の所業だな…と単純に思ってたけど事態はそう簡単ではないというか、その人の歴史を遡ってはじてて見えてくる病理の存在を知れてよかった。後味と歯切れは悪いが

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    2018年11月27日
  • 児童虐待から考える 社会は家族に何を強いてきたか

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    児童虐待に関して背景要因やさらにはその要因の歴史的な経緯についても触れていて、読み応えのある一冊。感傷的な内容になりがちなテーマをしっかりと考察できている。

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    2018年11月25日