杉山春のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
みんながみんな本書のような親ではないと思うが、虐待する親の人物像を垣間見ることができた。少なくとも本書を読めば、幼い子どもの死はこの親だけの責任とは言えないだろう。かと言って、この母親の夫や両親や友人、行政の職員、近所の人など、特定の誰かに責任を擦りつけられるほど単純な話でもない。
母親に「罪を償え」というのは簡単だが、そうした態度は母親に酷い仕打ちをして、さらなる孤立を招いてはいないだろうか。「私はこんな母親にはならない」という声もあろうが、それは色んな意味で恵まれた人だと思う。虐待はなくしていかねばならないが、それは特定の誰かを罰することで実現するものではなく、虐待が起こる状況にもっと目を -
Posted by ブクログ
ネタバレ読む前からニュース記事を読んで事件の概要は知っていたので、犯人はとても残酷な方だと他人事のように思っていた。でも本を読んでいくとどこか自分にも重なる点があって他人事には思えなくなっていった。
また物事の捉え方、思考の仕方などが未熟な点や幼少期の不安定な家族関係が今回の事件に関係していて、それは本人だけの問題ではないと思った。
母親から助けて欲しいと周囲に言う努力も大事だけど、それと同じくらい周囲の人の助けが必要か声をかける努力は大事だと感じた。
この事件には母子家庭の貧困、子育て支援、核家族化、近所付き合いが疎遠になるとか色々な時代背景が関連してて簡単には理解できないなと思った。
犯人は残酷な -
Posted by ブクログ
小学館ノンフィクション大賞を受賞した本書は、2000年12月に起きた愛知県武豊町女児餓死事件のルポルタージュである。若い両親には2004年に殺人罪で懲役7年の判決が下った。
2000年の当時はまだ虐待への対応が確立されていなかった。試行錯誤を重ねてきた児童相談所の職員や意識の高い小児科医もわずかにいたが、まだまだ虐待への適切な対応は浸透していなかった。
武豊保健センターの職員は母親と関わろうとした。母親との関係が築けない彼女を助ける上司はいなかった。奮闘する職員が孤独だった。母親はさらに孤独だった。親も頼れない。夫は無関心。子育ての悩みを抱えて孤独だった。誰も彼もが孤独の中で幼子が命を落とした -
Posted by ブクログ
タイトル通り、虐待に詳しいルポライター杉山春の考察がまとめられた本書。子どもを死なせてしまった親の実像から社会のあり方まで様々な考察が収録されている。先日読み終わった森達也著『U』と同じテーマが含まれている偶然に驚いた。
あるシングルファザーはアパートに子どもを閉じ込めて働いていた。その末に死なせてしまうが、その後7年間家賃を払い続けていた。彼には知的障害があった。IQ69は境界知能より低いが、仕事はこなしていた。それを根拠に「子どもの死を予想できたはず」として長い懲役刑の判決が下った。
そこにはマスコミと裁判員制度の問題が絡んでいる。マスコミが虐待に対する市民感情を煽る。虐待死させた親は「鬼 -
Posted by ブクログ
ルポ虐待を読んでからすぐ拝読。
苦しい話だが、ただただ感情的な個人の悲しい 目を背けたい事件 で終わらせず、背景や物語を丁寧に伝えてくれる。
いま、自分が生きるために食事の準備をしたり栄養を考えたり運動したり、誰かと一緒にいきようとしたり、ペットのお世話をしたり、保育士になったり。それらは"普通のレール"かもしれない。けどそのこちら側の普通は、向こうにとっての"知らなかった生活"な場合もあるのだと。そうした若者が、小さい時にアタッチメントのなかった子どもが歳を重ね性に出会い親になっていく。
社会の仕組みや戦争時代のレポートを含めた聴取や、何より孤児を出さ -
Posted by ブクログ
最初の章は、子ども二人が餓死するまでのお母さんの動きを追いかけたもので。もう、なんとも言えない怒りが込み上げるものでした。
が。
次章からのそのお母さんの生い立ちを追って行くにつれ、、、、
このお母さんの悲鳴が本から聞こえてくるんじゃないか、、、と、思うほどに、追い詰められていく声が聞こえてきました。
誰かホント、気がついてあげて!
助けてあげて!
手を差し伸べてあげて!!!
っていう。
子ども二人を餓死させたことはホントに痛ましく、、、自分の子どもを思うと信じられないと思うけれど、、、このお母さんの気持ちを考えると、、、このお母さんもとても救われなかったと、、、、もしかしたら、死ん -
Posted by ブクログ
ネタバレ「完璧な」子育てを求める社会とその社会規範を内面化した親たち。能力や環境によってそれが不可能になると虐待となってしまう場合がある。
困った人が気軽に助けを求めることができない社会。
支援する制度があってもそれに頼ることを知らない、知っていても頼ろうとはしない社会不信の親たち。
弱さを見せても大丈夫だという信頼をもてる社会にする。
第1章 ルポ 厚木男児遺体放置事件
1 作られた「残酷な父親」像
2 助けを求めることを知らない親たち
第2章 「近代家族」という呪縛
――二つの虐待事件を追って
第3章 国家と家族のあいだで
――「満州女塾」再考
第4章 社会につながれない「ニ -
Posted by ブクログ
逃げることが癖になっている。
思考は停止して、現実に誠実に向き合えない。
嘘をつき、見栄を張る。
それは、自分にもうそをつくことだ。
これが病気なのか?
ただの愚かさではないのか?
もちろん、育った環境は悪い。
父親も、愛情をかけたつもりになっているだけ。
母親も、ろくでもない。
それでも、結婚して幸せだった状態を壊したのは、本人だ。
みんな、ささやかな幸せを、必死で守って生活しているのだ。
大切なものを守るために、己を律して、生活を正して、気をつけて生きているのだ。
嘘つきは泥棒の始まり。
この言葉は、本当だと思う。
自分には甘いけれど、周りを大切にすることはできない。
差し伸べられた -
Posted by ブクログ
厚木男児遺体放置事件、大阪2児ネグレクド事件などの児童虐待事件について、丁寧に取材され、その上で考察されているので事件を深く理解するきっかけとなった。
満州女塾の話は初めて知り、とても衝撃的だったが、現代の孤立する家族に似ている。
この本で一番の衝撃は、大阪2児ネグレクド事件の母が語った「子どもが嫌になったのではなく、子どもの周りに誰もいないのを見たくなくなったから。」。実際、下の子の1歳の誕生日に誰からも連絡なく、翌日から外泊が始まってる。誕生日前には元旦那に一緒に過ごすことを提案しても断られていて、ギリギリまで母として頑張っていたことを知ると、必ずしもこの母だけが悪いのではなく、育った環