あらすじ
現在、「ひきこもり」と呼ばれる人々の数は、およそ七〇万人、親や社会の価値観でみずからを束縛した挙句、羞恥心と屈辱にまみれざるをえなかった彼・彼女たち。ひとたび密室に閉じこもれば、家庭は激しい暴力に満ちた世界へと一変することも…。現代を支配する息苦しさの象徴である「ひきこもり」を長年にわたって取材し、絶望の底で現代の辛苦に寄り添ってきた著者が、“家族の絆”という神話に巨大な疑問符をつきつける。閉ざされた内奥に目を凝らし、現代の希望を探しもとめる圧倒的なノンフィクション。
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Posted by ブクログ
著者の生い立ちも書かれているので、本人を知っている身としては不思議な感じだった。
精神科医が精神病にかかりやすい、ということと共通する部分があるのではないかと思った。
ひきこもりを病気として捉えているけれども、自分を差し置いて何かに怒ったり、「いけなくな」ったりと、惰弱との線引きはとても難しい。
今、高校一年生の息子も一つボタンを掛け違えば、ひきこもりとかニートとか、そういう状況になりかねないと思うと少し怖い感じがした。
Posted by ブクログ
ひきこもり に焦点を当てて,数多くインタビューをまとめている.世の中の規範に入り込めないことに不安を感じ,自分の中に閉じこもる事例があふれている.親や周囲の人がどのように対処したらよいのか,模範解答はないだろう.p199の「我が子に他者性を持つことは,実は,現代の新しい規範なのではないか.」は一つの答えかもしれない.著者を知っているので,第3章は複雑な気持ちで読んだ.
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なんというか全体にまとまりがない。1〜3章までで個別のひきこもり事例から家族の価値観に問題を見出しつつ、自分の親との体験、親としての体験を綴ったとこまではとても良かったけど、それ以降また個別の事例の紹介に戻っていて、散漫な構成になっていて残念。朝ドラの後の番組でコロナ後の虐待について話してて面白そうな人だったから読んでみた。
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家族やイエ制度とは何か?を考えさせられる本。
個別の事例が紹介されているが、明確な解決策がないため解決するための指南書として読まれる方は物足りないかも。
問題の本質を考えるための本。
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ひきこもり70万人、子どもを所有感覚・抱え込む親、イエが自分に課す規範から自由になれず、自分を空想上の「他人のまなざし」でチェックし、不十分と評価し、外に出られなくなる。
ひきこもっていても生活や仕事もできるようになってきているし、それも生き方のひとつとしてノウハウが共有されるようになれば、悪いことじゃなくなるのに。
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引きこもりにはあまり関心がなかった。
心のどこかで、親に甘え、自尊心が高く、周囲を見下している人だと思っていたからかも知れない。
確かにそういう人もいるだろう。
しかしそれが全てではない。
狭く、密室である、家族という中で苦しむ人は一定程度いる。
その苦しみに想いを馳せなければ、思い込みで語ってしまう危険性がある。
「存在の肯定」が引きこもりからの回復に欠かせないと著者は言う。
それは口で言うほど簡単なことではない。
近すぎる関係がもたらしたこの問題は、本人だけでも、家族だけを支援するのも、不十分だからだ。
双方に適切な方向転換を求めて、助けをもたらさなければ、事態は動かない。
親の苦悩もわかる(と言っていいものかどうか、疑問はあるが)。
傷つきやすすぎる心と、暴力によってしか自己表現できない子供を保護し、育てる心労は如何程のものか。
と、まるで私は良き理解者のようだが、どうしたって芯の部分で理解し難い点は多くある。
あまりに複雑に絡み合った問題で、家族という興味のあるテーマであっても、避けがちな問題のひとつだ。
Posted by ブクログ
当事者へのインタビューを通じて、「ひきこもり」の意味を考えた良書。ひきこもる人がはけっして自由気ままな暮らしを謳歌しているわけではなく、既存の価値観を内面化しすぎて自己点検を繰り返し、自分をダメだと決めて「自分自身が社会に漏れ出すことを必死になって防いでいる」など鋭い指摘が多い。一方で、やや近代以降の「家族」観がやや一面的な気も。
Posted by ブクログ
共同体と呼ばれていたものが形を失う時、家族が孤立すれば、家庭内の規範は偏り、次世代を苦しめる。次世代が生活する社会の在り方が、親世代の規範とは大きくずれる場合もある。次世代に前の世代が与えるべきものは、まず、この社会は自分自身のいための場所だ、という確信だ。そして、命が本来持っている成長する力を尊重すること。ひきこもりとは、自分が生きられない規範で自分をジャッジして自分を切り刻んでしまうこと。家族が基盤になって作られてきた規範がときに子供や若い世代を痛めつける。社会の中にこそ多様な受け皿が作られるべき。