吉岡忍のレビュー一覧
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日光123便墜落、事故については以前から大変興味を持っており、青山さんの本は全て読み、その他いろいろな人の多くの解説を読んできたが、今回の吉岡さんの墜落の夏はちょっと視点を変えた、事故直後の様々な問題を、冷静に、多くの人々に取材をし、丁寧に記述されていた。
以前から感じていた、相模湾に沈んでいると思われる垂直尾翼は、100数十メートルの深さであり、なぜ引き上げ作業が行われず、そこを飛ばしてボーイングのシュリミスと言う政府発表を事細かに解説している点については、やや物足りない気もしたが、事故の翌年の出版であり、わからないことばかりの中でどこまで、自衛隊、米軍の訓練機による事故と探偵する事はできな -
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吉岡忍『墜落の夏 日航123便事故全記録』中公文庫。
1989年刊行の新潮文庫『墜落の夏──日航123便事故全記録』に『四十年後の補論──実感と言葉をめぐる危機の時代』を増補した上で、神里達博による解説を追加し、復刊。
青山透子の日航123便墜落事故をめぐる疑惑についてまとめられた一連の著作を読み、この事故に大いなる興味を抱いたのだが、1989年に新潮文庫から刊行された本作の親本は未読であったことから読んでみることにした。
墜落事故の発生から、墜落事故現場の発見、轢断され、黒焦げになった遺体の検視と身元の特定、遺族への補償問題、事故原因と綿密な取材により非常に詳しくまとめられたノンフィク -
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日本にも、こんな村があったんだと思わせてくれた1冊。同じ集中豪雨で同じ災害が起こらないように「改良復旧」させること、補助金制度を活用するための地道な努力やポイント、村役場の人たちの留学制度、これから中山間地域で取り組むべきモデルをやってみての経験知がたくさん詰まっている本だと思う。なぜ、先進的な取り組みをしている地域が国内にも外を見ればあるのに、困っている地域が出てきてしまうんだろう。もっと多くの人に知られていい地域だと思うし、奥多摩でも活かせそうなアイデアもありそうだと思いました。すでに村はなくなり胎内市となっているとのことだけど、一度、訪ねてみようかな。
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乱世の世をいかに生ききるか。
平成の世、堀田善衛(ほったよしえ)はあまり読まれなかった。けれども一周回って、今こそ読まれるべき時代になっているのではないだろうか。
池澤夏樹、吉岡忍、鹿島茂、大高保二郎、宮崎駿という現代の知識人が、如何に堀田善衛に惚れ影響を受けてきたか語り尽くした新書である。これは、富山県の高志の国文学館の特別展の図録になっている。絶妙の堀田善衛入門にもなっていた。
堀田善衛の青春時代に親交があったのは、池澤夏樹の父親たちマチネ・ポエティックという詩人グループであり、その関係からその前半生を語っている。昭和の初めから戦後間も無い頃の文学を語る上で、堀田は幅広い親交があり、か -
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ネタバレ
第二章 堀田善衛が旅したアジア 吉岡忍
p52
これはもう本当に堀田さんの『橋上幻像』の世界です。次々に国家から逃れて、どこに自分の居場所があるんだと探しているうちに、通過してきた言葉どれも自分のものではなくなっている。
第五章 堀田作品は世界を知り抜くための羅針盤 宮崎駿
p152
ですから僕が漫画を書いたり、何かを書く時にも、これはどういった意味を持っているのか、自分はどこまで見渡してこれを書いているのか、自分がどんなに善良にこれをやりたいと思ってやったことでも、その裏側にどういう意味があるのか、それが自分がどうしてやりたくなったのか、何によって自分は突き動かされているのか、突き動 -
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新潟県にあった黒川村のお話。
黒川村は2005年に中条町と合併して現在は胎内市となっている。
黒川村には31歳で当選して以来、12期48年間村長を勤めた伊藤孝二郎という男がいた。
高度経済成長期、都市化が進み農村が衰退していく中で、伊藤村長は、国から補助金を引っ張り、村に仕事を作り、観光客を呼び寄せ、村を守り抜いた。時代を知り、人情の機微に通じ、本質を見抜き、夢を描き、実行するその経営手腕は、簡単には真似できない卓越した能力である。
しかし、その能力はおそらく天性のものではない。伊藤村長は、3時まで勉強して6時に起きるような、馬力の持ち主でもあった。
かつては、中条町で天然ガスが発見されて大企 -
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養老孟司、池田清彦、吉岡忍が、読書について、テーマ毎に語った内容を記した本。
養老孟司の本の読み方は、作者の意図や想いを行間から読み取りながら読む。なぜ、この部分が書いていないのかとか、逆に無いものからその意図を読み取る。非常に難しいが。
読み聞かせについて。子供に本を読み聞かせる効果は、読んだ内容は全く意味がないとバッサリ。ただ、お母さんが笑顔で、愛を持って読み聞かせることで、子供は愛されていることをカラダで感じる。インプット、変換、アウトプット。その流れのなかで、そのインプットの多様性がまずは大事であると。
中盤からは、読書についての放談会。「温泉教授の日本百名湯」が寝床で読む本だ -
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ネタバレ『奇跡を起こした村の話』
この本では、黒川村という新潟県の北東部、山形県と接する山間に位置する村の、復旧から復興、発展、そしてゆるやかな衰退を示唆する物語について描かれている。この本から受け取った強いメッセージは「希望を捨てずに頑張ろう」だった。
黒川村は毎年豪雪に見舞われ、土地に雇用が無く、町のところどころのインフラも壊れ、税金滞納者が続出し、農業ができなくなる冬には都市部に男が出稼ぎに行かなくては家族が食っていけなくなるような、経済的にも環境的にも厳しい状況が続く村であった。1955年、朝鮮特需によって国の貿易高が潤う中、黒川村の村長が病死し、伊藤孝二郎という農業専門高等学在学中に中国 -
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豪雪、大水害、過疎という苦境を乗り越え、農業と観光が
一体化した元気な姿に生まれ変わった黒川村。小さな町や村
が生き残るための知恵を教えてくれる一冊。
かつて新潟県に黒川村という村があった。現在は、合併によ
り消滅してしまったが、連続12期48年村長を勤めた、
伊藤孝二郎の剛腕により、産業を起こし活性化したという。
国や県から補助金を得て施設を作るということは、何処でも
やっている。伊藤が違うのは、徹底的に本物にこだわったと
ころである。
ホテル、スキー場、農産物加工施設等は全て村営。役場職員
を1年間、ヨーロッパに派遣し研修させる。人材育成に費用
を惜しまない。
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[ 内容 ]
豪雪、大水害、過疎という苦境を乗り越え、農業と観光が一体化した元気な姿に生まれ変わった黒川村。
小さな町や村が生き残るための知恵を教えてくれる一冊。
[ 目次 ]
1 山あいの村の宿命
2 村が流された!
3 豊かさの意味
4 「魔物」から村を守る
5 本物をつくりたい!
6 このあとをだれが継ぐのか
[ POP ]
[ おすすめ度 ]
☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
☆☆☆☆☆☆☆ 文章
☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
共感度(空振り三振・一部・参った!)
読書の速度(時間がかかった・ -
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娘が地方創生を学ぶことになったのをきっかけに買った本。
小さな村が、地元を愛する強いリーダーの元で、災害からの復興と、復興の枠に収まらない発展を遂げていく物語。
大規模企業誘致には向かない豪雪地帯。
小さな自治体だからこそできる大胆な采配と、あらゆる補助や交付金の制度を駆使して、ホテルもレストランもスキー場も名産品も、すべて村営で経営していく。
村役場の職員が、農業をやり、ホテルマンをやり、シェフをやり、チーズ職人をやり、ビール職人をやる。スキー場に併設したホテルのレストランでビールやチーズを振る舞う。廃棄する野菜その他は発酵させて肥料として再利用する。
それらの技術を学ぶために、ドイツやス -
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ネタバレ実際にフランスに行ってみると、日本とのあまりの違いに反発することもありますが、その一方で素晴らしいところもたくさんあります。自分と全く違うものを学ぶということは、比較が可能になるということです。自分の国しか知らないと比較が難しい。例えば、北朝鮮です。今、我々が外側から見て、「民衆はさぞや不幸だろうな」などと思いますが、結構幸せかもしれない。一つしか知らない人間は、かなり幸せなはずです。自分と他を比較するようになると、人間は不幸になります。
しかし、さらに比較を進めることによって、逆に、自分とは何かが分かってくる。あるいは、自分たちと比較することによって、他者が分かってくる。だから、フランス -
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堀田善衛という人は「インドで考えたこと」ぐらいしか知らなかった。「広場の孤独」「方丈記私記」「ゴヤ」「定家明月記私抄」「めぐりあいし人びと」など、脱走米兵を匿うベ平連の活動、南京虐殺事件への関心、ゴヤへの関心も反戦から…。ゴヤが描いた死が迫っていることへの恐怖に怯える眼をした犬の絵に関する解説は驚き。堀田がゴヤに惹き込まれていった原因はそこにあるという。「何万人ではない、一人ひとりが死んだのだ。この二つの数え方のあいだには、戦争と平和ほどの差がある。」との南京事件を取り上げた「時間」の文章も凄い!宮崎駿が映画にしたかった作品!堀田氏のキリスト教嫌いが想像できる一方で、「伝道者の書」の引用がた