井伏鱒二のレビュー一覧

  • 荻窪風土記
    タイトルから荻窪周辺の話だけかと思いきや、学生時代に関東大震災にあったときの話(早稲田界隈)や、マレーへ従軍したときの話(海音寺潮五郎や小栗虫太郎が出てくる……!)なども入っていて、自伝に近いエッセイですね。
    たまに話の時代が前後したりして、そこが逆に思いつくまま自由に語ってる感じで、近所のおじさん...続きを読む
  • 山椒魚
    『シグレ島叙景』『へんろう宿』辺りを読んでる最中、なんだか『不思議の国のアリス』を読んでる時と似た感覚に陥ったんですが、これは作品に漂うユーモアと、主人公とその周囲にある疎通できない壁みたいなのを感じるところから来てるのかな。
    主に初期の作品を集めたモノですが、どれも読みやすく飄々としたユーモアで面...続きを読む
  • 多甚古村 山椒魚(小学館文庫)
    名作の「山椒魚」の他「本日休診」「多甚古村」の三作。山椒魚の短さには少し驚いた。

    「本日休診」は戦後まもなく、「多甚古村」は戦争中の当時の人々を暮らしを描いている。日記風なので、少し飽きてくるが、三作を通して作者の人への温かみが感じられる。

    最後に作者の写真等があるのは非常に良い。
  • ドリトル先生のキャラバン
    団長としてサーカス興業を成功させたドリトル先生は、とびきり上等の歌声を持つカナリアのピピネラに出会い、カナリア・オペラの公演を企画して大成功。

    鳥たちのうたを譜面に起こし、ピピネラの人生(鳥生?)を鳥たちのコーラスで表現する。
    言葉は通じなくても、芸術は人間を感動させることができるというのがドリト...続きを読む
  • ドリトル先生の郵便局
    たった2週間ほどアフリカで休暇を過ごそうとしただけなのに(といっても、船でアフリカまで片道何週間かかるんだ?)、奴隷船をつかまえ、捉われた奴隷たちを元の国に送り返し、奴隷を売るより儲かる商売『郵政事業』を王様に紹介したために、またまた身動きが取れないくらい仕事に追われるドリトル先生。

    元々王様は、...続きを読む
  • 山椒魚
    辻原登の本の中で、井伏とコルタサル二つの「山椒魚」の読み比べを進めていたので再読。まだ、コルタサルな読んでないが。

    今では、井伏氏の描く日常がピンとこないので作品を理解するのに苦労するものもあったが、この短編集はバラエティもあり、サスペンス風のもの、掛け合い漫才風のもの、動物もの色々あり楽しめまし...続きを読む
  • 夜ふけと梅の花 山椒魚
    若い井伏。言わずと知れた山椒魚、初めて読んだ井伏作品でもある。その原型となる幽閉も収録。僕は年老いた井伏の方に親しみが湧く。これは僕が年老いたせいなのか。あと朽助が登場する作品が好き。あの方言の雰囲気がたまらなくよい。
  • 駅前旅館
    表紙のイラストを見て、ほのぼの系なのかと思ったら、思い切り寅さんの時代でした。

    昭和30年頃の、上野駅前の番頭さんの語りを元に、旅館の仕事や観光業界の裏の世界を興味深く描いたもの。
    映画にもなったことがあるらしいです。

    慣れた番頭さんたちの、客引きや、お客の値踏み(ふところ具合や出身地)、困った...続きを読む
  • 山椒魚
    どこまでもイメージや象徴の世界に生きていたひとなんだと思う。なるたけ言わずに眼前に示したい、そんなことを目指していたように感じられる。
    だから、書くということにかけて、非常にタイトで、文章に無駄がない。ヘミングウェイのそれと同じ匂いがする。そういう点で、太宰が絶賛したのは十分にわかるし、大家であると...続きを読む
  • 山椒魚
    20190611 名作に関しては、中学生の頃読み漁っていたが結局、何にも残っていない。読み直しの時期もあるのかも知れないが印象に残るように感じる。次は誰にしようか。
  • 漂民宇三郎
    面白い。江戸の中期から後期くらいの頃に風に流されて海外へ行った船乗りの物語。事実を元にした小説でおろしや国酔夢譚の光太夫の名前も出てきたりする。すごいなあ、鱒二。関係ないけど、カポーティと同じような匂いを感じてしまう。
  • 山椒魚
    「何たる失策であることか!」が滑稽で可愛らしい、山椒魚が主人公の表題を含む短編集。超生き生きとした老人、若しくは動物が異常に登場する。
    がっつり心に残る話がある訳ではないけれど、読んでいる内に共感を覚える場面がとても多い。
  • ドリトル先生アフリカゆき
    ドリトル先生の名前はあまりにも有名だけど、動物の言葉がわかるお医者さんだということ以外何も知らずにこの歳まで…。というわけで読んでみました。
    訳のせいもあって、なんだかとっても懐かしい感じ。
  • 鞆ノ津茶会記
    戦国時代の終わり江戸時代の始まる直前のお茶会日誌。どこまでが著者の想像でどこまでが史実なのかは判然としないが、それは歴史書を読んでも同じことだと僕は思うので気にしない。
    ボケた秀吉の話は面白い。興味深い。
  • ドリトル先生アフリカゆき
     動物と話の出来るドリトル先生は、サルたちを恐ろしい病気から救うため、仲間の動物たちとアフリカに向かって航海に出る。

     小学生の時に夢中になって読んだ作品を子供の読み聞かせとして再読しました。

     当時、動物が好きで動物と話せることにあこがれ、そのうえ冒険にも出るドリトル先生は夢のヒーローだったこ...続きを読む
  • ドリトル先生航海記
     動物語が話せるドリトル先生が友人を探し出すため、動物たちを連れて航海の出て、数々の冒険に出会う。

     子供のころ夢中になって読んだ作品を自分の子供の読み聞かせに毎日少しずつ読み進めました。

     子供たちも夢中になって毎日楽しみにしていました。

     自分も子供の頃に戻って冒険を夢見たころを思い出しま...続きを読む
  • 駅前旅館
    昭和30年代頃を舞台に、駅前にある柊元(くきもと)旅館の番頭、生野次平が思い出話や番頭として旅館の裏話を独白するスタイルで進む小説。他の旅館から来るお客を伝える電報の符牒や、江の島の片瀬海岸での引き込みの様子など、人々の躍動感や当時の息吹を感じて面白い。また次平にかかわるよい関係の女性たちや、時に友...続きを読む
  • 遙拝隊長・本日休診
    色んな意味で時代を感じさせる作品。
    個人的には『遥拝隊長』を推す。この作家らしく声高に反戦を論ずることなく、日常に戦争の異常性を無理なく溶け込ませて物語を進めていく。
    よくユーモア溢れる作家と評されるが、ユーモアとは厳しい批評性の一つの表出であることを実感させてくれます。
  • さざなみ軍記・ジョン万次郎漂流記
    確か『黒い雨』でも感じたが、この作家の特徴は見た目はシンプル、意図が濃密に詰まっているところか。
    表題作二作ともに、パーツは淡淡としているのだが、退屈させることなく、かつ、主張をさりげなく刷り込んでくる。書かれた時代背景を考えれば、この作家の反骨心と才に一目を置かずにはいられない。
  • 夜ふけと梅の花 山椒魚
    井伏鱒二の読みやすい部類の初期短編集。
    概ね駄目な若者の視点で描かれるモノばかりですが、
    学生の時分読んだ時より共感部分が多いと云う事は、やはり…(笑)
    山椒魚のラスト16行端折られてる話は知りませんでした。
    この文庫本で初めて其処まで読めた訳ですが、
    最初に読んだ時の「?」部分が「!」になりました...続きを読む