井伏鱒二のレビュー一覧
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好きな詩
『春暁』『聞雁』『田家春望』『紙凧』『泉』。
特に好きな詩の抜粋
『田家春望』p.56
ウチヲデテミリヤアテドモナイガ
正月キブンガドコニモミエタ
トコロガ会ヒタイヒトモナク
アサガヤアタリデ大ザケノンダ
『勧酒』p.59
コノサカヅキヲ受ケテクレ
ドウゾナミナミツガシテオクレ
ハナニアラシノタトヘモアルゾ
「サヨナラ」ダケガ人生ダ
『花に嵐のたとえもあるぞ「サヨナラ」だけが人生だ』は、何度考えても自分なりの解釈が思いつかない。しかし、つい口ずさみたくなるお気に入りの詩。
岩波文庫3/100冊目。次は、『黒猫・モルグ街の殺人事件 他五篇』を読む。 -
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ネタバレ駅前旅館
著者:井伏鱒二
発行:1960年12月15日
新潮文庫
単行本:1957年11月(新潮社)
初出:1956年9月~1957年9月「新潮」
井伏鱒二の名作ユーモア小説。森繁久弥主演で映画化された。観た人は多いことだろう。駅前旅館「柊元(くきもと)旅館」の番頭、生野次平を中心に、ライバルで親友の高沢(「水無瀬ホテル」番頭)はじめ駅前にあるいくつかの旅館の番頭たち、添乗員の中央大学学生、万年さん、吉原の引手茶屋で豆女中をしていて、後に長野の芸妓、紡績会社の寮長となった於菊(おきく)、小料理屋「辰巳屋」の女将らが、楽しくもリアルさを持った物語を展開する。映画で上記を演じたのは、森繁久弥、伴淳三郎、フランキー堺、淡路恵子、淡島千景・・・
文庫の表紙カバーの表4(裏表紙)に書かれた粗筋(「うらすじ」と言うらしい。タモリ倶楽部命名?)は下記。内容を端的に表現している。
「昭和30年代初頭、東京は上野駅前の団体旅館。子供のころから女中部屋で寝起きし、長じて番頭に納まった主人公が語る宿屋稼業の舞台裏。業界の符牒に始まり、お国による客の性質の違い、呼び込みの手練手管・・・・・・。美人おかみの飲み屋に集まる番頭仲間の奇妙な生態や、修学旅行の学生らが巻き起こす珍騒動を交えつつ、時代の波に飲み込まれていく老舗旅館の番頭たちの哀歓を描いた傑作ユーモア小説」
業界の裏話として、番頭の給与体系が出てくる。給料は2万円と安い。しかし、成果給(呼び込みなど)のようなものがあり、客からの心付けもある。翌日に泊まる別地区の旅館を団体客に紹介すれば、その旅館から謝礼をもらえる。さらに、まだ売春防止法施行前、客を吉原などに案内すれば、自分も遊べるし、遊んだふりして返金を受け、懐に入れられる。
ある日、生野は吉原の引手茶屋で豆女中をする於菊が、懐中時計を盗ったのではと疑われる。生野は時計を見つけ出し、疑いを晴らす。於菊は淡い恋心を持つ。彼女は長野で芸妓となり、客とともに4人で東京に旅行、生野の旅館に泊まる。生野が風呂に入っていると、4人が入って来て、そのうちの1人の女につねられた。於菊だと気が付かなかった。
中央大学の学生だが、東京で添乗員をしている万年さんがいる。当時、日本に添乗員という仕事はなじみがなかったのか、こまごまとその仕事や裏事情を書いている。客を国鉄に乗せるより、バスに乗せる。しかも、乗り換えさせる。添乗員にはバス会社からリベートが入る。山道を行くコースだと3%、市中なら10%、バンガロー行が10%、お土産屋からは5%、観光券のクーポンで5%、などと具体的。
また、板前は労働大臣の許可を取っている斡旋所が各旅館に斡旋するシステムもできあがっている。〝正社員〟である板長と斡旋された板前とのやりとりも。今日の非正規労働のはしりなのかもしれない。成長経済を前にいろんな職業が誕生し、システムを確立していった時期なのだろう。 -
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「井伏鱒二」の傑作ユーモア小説『駅前旅館』を読みました。
『黒い雨』に続き「井伏鱒二」作品です。
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日本映画史上に輝く人情喜劇『駅前シリーズ』第1作原作!
抱腹絶倒傑作ユーモア小説。
昭和30年代初頭、東京は上野駅前の団体旅館。
子供のころから女中部屋で寝起きし、長じて番頭に納まった主人公が語る宿屋稼業の舞台裏。
業界の符牒に始まり、お国による客の性質の違い、呼込みの手練手管……。
美人おかみの飲み屋に集まる番頭仲間の奇妙な生態や、修学旅行の学生らが巻き起こす珍騒動を交えつつ、時代の波に飲み込まれていく老舗旅館の番頭たちの哀歓を描いた傑作ユーモア小説。
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雑誌『新潮』で1956年(昭和31年)9月号より翌年9月号まで連載された作品、、、
現在ではビジネスホテルやシティホテルに駆逐され、ほとんど見かけなくなった懐かしい駅前旅館… そういった旅館の番頭「生野次平」を主人公に据えて、彼の独白体で描かれた物語です。
いい加減で助平で昔ながらの抜け目ない番頭気質を持っていて義理堅い「次平」の性格がイイ雰囲気を醸し出しているし… ライバル旅館「水無瀬(みなせ)ホテル」の番頭「高沢」等の番頭仲間やアルバイトの旅行社社員「万年さん」と織り成す人間模様が愉しく描かれていますね、、、
そして、ちょっとした色濃い沙汰… 行きつけの小料理屋「辰巳屋」の女将や以前吉原で豆女中をしていた「於菊(おきく)」、甲府湯村の温泉旅館の「ジュコさん」とのちょっとしたロマンス等々が、昭和の匂いが漂う情景とともに活き活きと描かれていました。
劇的でドラマティックな展開はないものの、男女関係に起因するちょっとしたドラマやトラブル、珍騒動が散りばめられており、懐かしさを感じつつ、心地良い気持ちで読めた作品… 読んでいると郷愁と共感を覚えずにはいられませんね、、、
1958年(昭和33年)に「森繁久彌」が主人公の「次平」を演じて映画化されているようです… 一度、観てみたいですね。
本作品は、「井伏鱒二」作品の中では『本日休診』、『珍品堂主人』と並び、昭和の風俗小説の三大作品とも言える作品らしいです、、、
機会があれば『本日休診』、『珍品堂主人』も読んでみたいですね。 -
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オシツオサレツをアフリカに帰してやるための航海中に奴隷船に行き遇い人助けをしたドリトル先生たちは、助けた人の住むファンティポ王国では王様の肖像を使った切手を発行しているものの肝心の配達機能がなっていないことを知り(その為に親類に出した助けを求める手紙が届けられず奴隷として売られてしまった)、行きがかり上、一肌脱いで渡り鳥たちのネットワークを使って郵政改革(!)に乗り出します。やっているうちに世界中から困った動物から相談事が届くようになったり、動物向けの月刊誌を発行したり、どんどん発展してゆき、しまいには天候の予測まで出来るようになったのでした。記憶にあった長生きの泥亀も出てきました。
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9歳の息子用に借りた本。息子はここ1年半くらいは漫画や流行りの本しか読まなくなっていたが、「面白いかも」と読み始め、あっという間に読んで続きも読みたいと言っていました。
原書は約100年前の出版、井伏鱒二さんが最初に翻訳したのが80年前。そんな昔の本を現代っ子が「面白い」と言うので、私も読んでみることに。
話は冒険ファンタジーで、子供向けの内容(もともと作者が自分の子供のために作ったお話)。でもキャラクターと文章が良くて最後まで飽きずに読めた。
あとがきを読むと、ドリトル先生は原書では「DR. DoLittle」で、井伏鱒二さんがドリトルと訳したとのこと。他の訳者が違う呼び方で訳したこともあるそうだが、結局ドリトル先生で定着。物語に出てくる架空の動物のオシツオサレツは、原書では「pushmi-pullyu」。そのままといえばそのままだけれど、うまいこと訳しているなぁと感心。物語はもちろん、きっと訳が素晴らしいから今でも面白いと言われる作品なんだろうと思った。
一部差別的な内容もあるが、当時差別が正当化されていたイギリスで育った作者が書いていると言うことを考えれば、嫌悪する内容ではなく、そう言う面も含めて子供が考えることのできる作品だと思う。 -
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昭和三十年ごろの、上野駅前の旅館の番頭の一人語り。
ユーモア小説か、と言われると、もはやそうは読めない。
むしろ、当時の雰囲気を味わうところに価値がある気がする。
柊元(くきもと)旅館の番頭、生野次平。
なさぬ仲の母に連れられ、上野の旅館の女中部屋で育ったという人物。
十代で母に死に別れ、その後ずっと旅館で働く。
当時の日本有数の旅館激戦地だった江の島での修行、修学旅行生や引率教師のあしらい方など、その業界の裏話が興味深い。
履物、持ち物でどこから来たか分かる、泊まるお客を一目で見抜き、遠くからお辞儀一つで、糸をかけたようにして客を吊り上げる。
こういう番頭の技は、今はもう絶えてしまったのだろう。
一方では、今でも接客業の人は、これとは違う、いろんな手管を持っていそうだ。
そういった業界の裏話とともに、番頭仲間の遊びの様子も語られる。
女性関係に疎くはなさそうな次平だが、結局結婚も、特定の女性と深い中になるわけでもない。
誘う水あらば、という風情なのに。
番頭仲間の杉田屋の高沢の愛人が引き起こす騒動やら、学生の客の松山さんの騒動やらに巻き込まれてばかりいる。
プロットがない小説。
ラノベに慣れた人だと、堪えられないかも? -
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子どもの時に読んでなかったので、まとめて読んでみようかなと。でも何でスルーしてたのかな、当時はもっとファンタジーっぽいのが好きで、ナルニアとか指輪物語に忙しかったからかな。
この、シリーズ第1作は1920年にアメリカで刊行された。日本では石井桃子が井伏鱒二に翻訳を依頼し、昭和16年(1941年)に石井桃子が始めた出版社から出版されたが、戦後に岩波書店から全集として改めて出版された。という時代背景を知っておいた方が良いというのは、アフリカの王子バンポのエピソードにやっぱりちょっとギョッとしてしまうから。この岩波少年文庫版には1978年に石井桃子によるそうした時代背景についてのコメントが末尾に付記され、また、2002年に岩波書店編集部によるコメントがさらに追記されている。今年のBLMで映画「風と共に去りぬ」冒頭に注釈が付いたとか聞いたが、ドリトル先生も最初に記した方がいいのではないかとちょっと思った。子どもの方が無邪気に、残酷になれるのだから。
ドリトル先生がどうぶつの言葉がわかるって設定はとても素敵で、言葉もわからないのによく診察できるな獣医はって改めて思う。もちろん、素晴らしい獣医さんのお話もこれまたたくさんあるけど、みんな本当はドリトル先生みたいになりたいんだろうな。言葉がわかるから動物たちの信頼厚く、ドリトル先生の名前は世界中の動物界に知れ渡り、アフリカや大海原でもいろいろな動物が先生一行の苦難を救ってくれる。いちばん好きなエピソードは犬のジップが嗅ぎタバコのにおいから船乗りを発見するところ。東西南北の風の向きを辛抱強く待って、とうとう発見したとき、その栄誉を称えて褒賞されたとき、賢い犬の自尊心とそれを押し殺す感じが何とも「犬」らしいなと。