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Posted by ブクログ
草原をほぼ統一したが、それは国なのか。統一すれば、国ということになるのか。
部族というものを、捨てた。それが草原を小さく区分し、人の争いを生んでいると思ったからだ。
はじめは、百人隊を新しく編成することで、それをやった。嫌がって参集を拒む者もいて、兵力を増やすという意味では、ずいぶんと遅れた。今では、モンゴル軍では当たり前のことになっている。
「国の姿を、見つけなければならん」
自分で言い、かつて聞いた言葉だ、とチンギスは思った。
言ったのは、沙州楡柳館の宣凱で、梁山泊頭領、楊令の言葉だったのだという。玄翁の父親で、血統だけを辿れば、チンギスの祖父ということになる。(144p)
最早誰もテムジンとは呼ばない。チンギス・カン(王)はしかし、ひと時も1箇所にいつかず、常に何か考えている。周りには、西夏があり、金国があり、西陵があり、他小さな国々、そして西方にはイスラム教の国ホラズム・シャー国がある。人材のみは、チンギスの周りに星芒の如く集まる。騎馬隊だけでは戦えずに、歩兵部隊と工兵部隊を編成した。側近のボオルチェのみは、チンギスの孤独の闇に気がついているのである。
ホエルン
チンギス御母堂
落産時見子掌中
握血塊示英傑証
今カン贈母赤花
母逝辺贈子言葉
虹根元発見否哉
其遺言動国未来
Posted by ブクログ
・チンギスは、ボレウやナルスといった新たな人材を登用し、戦の形を変え始めている。それは間違いなく大陸の大国・金国との戦を見据えたものだった。また、息子と兄弟に土地を与え統治する形を取り始めたが、軍の規模があまりに大きくなったことで、将軍達の心をどう掌握するかがリーダーとして問われると感じた。特にチンギスは心の内を部下に語るタイプでは無い。その場合、圧倒的なカリスマ性や実力・結果が伴わないと、すぐに部下に見限られると思う。チンギスはその強さを持つと描かれているが、もし今後部下の離反という展開があるなら、それはチンギスがカンとして足りない部分を見つめ直し、さらに強くなるきっかけになりそう。
・北方先生すごいのは、旧時代の主要人物を効果的に新時代に散りばめて描く能力だと思う。10巻はホルムズシャー国の登場があり、明らかに新章開幕の雰囲気。その中でも全く面白さが変わらないのは、前章の主要人物を切り捨てず新章に連れてきてくれているからだと思った。これは本当にすごい。
・メルキト族のアインガがついにチンギスの軍門に降りた。いよいよ草原はひとつになったという事だろう。
・タルグダイは相変わらずラシャーンと共に南で暮らしている。交易に力を入れ商人として暮らす様子が描かれており、今後交易に力を入れるモンゴル国との接点が描かれる予感。
・元ケレイト王国の将軍だったジャカガンボも、本格的に再登場の予感。流浪の末に、沙州ゆりゆうかんの元締め的な存在であるショウコウゴの要人、アサンと出会った。その彼の希望で、交易に力を入れるチンギスとの仲立ちを依頼されていた。チンギスが、友だったジャカガンボを殺さずに生かした事が、巡り巡って帰ってきそうだと思った。
・ジャムカの息子マルガーシの成長もかなり熱い。ジャムカと同じく黒貂の帽子をかぶる彼は、10巻から登場したホルムズシャー国のジャラールッディーンと出会い、ホルムズシャー国へ向かった。ホルムズシャー国はモンゴルの西のライバルになる気配があり、ここにジャムカとの戦いが継承されそう。ここでも北方先生がすごいのは、
ジャムカの息子であり継承者のマルガーシがホルムズシャー国と接点を持つ過程を、これでもかと丁寧に描く点にある。じっくり時をかけて他陣営に入ることで、違和感なく新たな相関図を受け入れられていると思う。
・10巻でいちばん良かったのは、ジャカガンボが語ったセリフ。彼はジランとジャムカについて話す時、「草原の男はみんな、彼が好きだったさ」と言った。胸を打たれた。このセリフは全読者の心の声でもあると思う。ジャムカを失った悲しみは、僕はまだ癒えてない。その中でのこのセリフはほんとに泣きそうになったし、読者の救済のセリフだと思った。
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