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ある日ふっと現れて、まじめくさった学校をひととき不思議空間に変えては、また去ってゆく謎の「菜の子先生」。ひとたび先生が登場すれば、ウサギの飼育当番は地の底の大冒険に、水泳記録会は雲とたわむれる空中遊泳授業に早変わり。理科の実験では、教室に大草原や大海原、満天の星座までが出てきてしまいます。子どもたちはラッキー・ハッピー・大パニック。あなたも、運さえよければ、丸眼鏡に白衣の菜の子先生に会えるかも!?
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Posted by ブクログ
「学校じゅうのどこにもいないけど、がっこうのどこかにいるという。だれでも会うことはできないけど、運がよければ会えることがあるという」山田菜の子先生。サバサバした語り口が最高!
ただ今、富安陽子さんの作品を読み続けて、不思議な物語の魅力を知りたい期間中です。 本書は「菜の子先生」シリーズの一作目(2003年)となり、これまで読んできた富安さんの児童文学が全て長編だったのに対して、初の短編集となるのだが、いわゆる各話の内容が繋がった連作集ではなく、舞台となる小学校や登...続きを読む場する子どもたちも違っている中、唯一の共通点は菜の子先生が必ず登場することで、そうした構成から感じられたことは、『どこの小学校でも菜の子先生に会える可能性がある』ということであり、それは見方を変えてみれば、子どもたちは菜の子先生のような、ありそうで無い立ち位置にいる方を、実は必要としていて求めている、ということなのではないだろうかと思った点に、このシリーズならではの素晴らしさがあるのではないかと思う。 山田菜の子先生は、左右にくるっとカールした髪型と丸い眼鏡に白衣を着た小柄な見た目が特徴的で、それはYUJIさんのシュールさと可愛らしさとが同居した絵からも感じられたのだが、中でも他の先生にはできない菜の子先生ならではの素敵な個性(?)として、楽しくて大切なことにも気付かされる、不思議な世界へと連れて行ってくれることがある。 例えば本書で読む最初の物語、いわゆる読み手にとっても菜の子先生との初対面となるシーンでは、校庭の周りには誰もいないのに「しずかに しなさい!」と桜並木の下で叫んでいる菜の子先生がいて、ちょっと驚いてしまうのだが、そこには『気分がウキウキしてくると、つい、はめをはずしたくなるのでしょうね』と、春の陽気につい楽しさを覚えるのは子どもたちだけではないことを、さり気なく教えてくれて、それは子どもによっては『自分が上靴になったところを想像するのは、おそろしくむずかしい』と思いながらも、想像してみることの楽しさが、やがては相手の気持ちを知ることへと繋がることの大切さでもあることに気付かせてくれた、そこには本書のキーワードでもある、『目には見えないものがあるのだということを知る素晴らしさ』でもあった上に、それは『教室を吹きぬける風のように』、決して絵空事の話だけではないのである。 時には冷静沈着さが厳しい印象を与えることもあるものの、良いところも手放しで誉めてくれるため、最後には、どの子どもも「またいつかどこかで会えませんか?」と聞きたくなる、そんな魅力が菜の子先生にはあって、それは初対面なのに、何故か出会う子どもたちの名前を知っている菜の子先生の不思議なところも、おそらく子どもたちにとっては自分のことを見てくれているという安心感を与えてくれるのだろう。 そんな菜の子先生が繰り広げる不思議な世界の楽しさは他の物語も同様で、それは飼育委員をやりたくないと思っていた女の子が、思いも寄らぬ冒険に巻き込まれたことによって(富安さんらしく、おとぎ話の要素もあり)、その気持ちが180度変化したことや、菜の子先生の見た目の印象そのままとも思われた理科室での不思議実験は、狭く閉じられた箱庭の世界から生まれ無限に広がる永遠とも思えそうな素敵な内容と、「何が見えても、ひと言も口をきいてはいけません」と、子どもたちにとって無理難題とも思えそうな前振りでスリルのある楽しい展開にさせつつも、最後にはそれを達成させてみせる点に、教師としての説得力も感じさせる素晴らしさがあったのだ。 中でも特に印象深かった物語は、終始優しい雰囲気のまま(これはとても珍しい)菜の子先生が接する女の子の話で、その繊細なやり取りがずっと続いたのは、彼女が水泳を苦手なことで悩んでいたからなのだが、ここでは彼女のネガティブながら共感できる子どもも多いのではと思われる願い事が、思いもかけないほど良い方向へと好転していく、そんなマイナスの発想がプラスへと転換されていくような不思議でありながらも優しくて温かい展開には、現実でも起こり得る可能性の素晴らしさと共に、物語としての面白さもしっかりと確立しており、そういったところにきっと、富安さんの物語の素晴らしさも垣間見えるのだろうと思う。 そして、放課後に忘れ物を取りに行くことになった男の子の、逢魔が時のドキドキ感となぞなぞを解く面白さとが合わさった物語は、『あとがきにかえて』の富安さん自身の小学生の頃のエピソードと共に、そこに隠されたメッセージを探す楽しさも重なるものがあったことから、菜の子先生というキャラクターは富安さん自身の願いから誕生したのかもしれないと思い、それは菜の子先生の言葉『運が良ければ、また、会いましょう』と、『私は、どこにも行きません』という、一見相対した意味合いと思われながらも、そこにこそ世界には見えないものがあるということの素晴らしさを実感させられて、そうした素晴らしさを富安さんは物語という形で、ずっと伝え続けたいのだろうなと私は思うのだ。
富安さんらしいファンタジー。 山田菜の子先生があちらこちらの小学校に現れて不思議な授業をしたりする。
短編で読みやすいし、私は好きなんですが、子どもたちはなかなか手にとってくれなかった本です。すすめかたが悪かったのかな…
講演会に行ってきて、サインして握手してもらいました! お話を聞いたあとには、本当にいろんな見方や思いをいだきながら本を読むことをできました。菜の子先生は不思議だなと思った。
創作物語。 短編集。 舞台は学校。少し困った思いをしている子どものところに白衣を着た山田菜の子先生があらわれ、子どもを手助けして問題を解決します。舞台になる小学校はそれぞれ別の学校。 「春休みのかくれんぼ」南小学校。 春休み中に引っ越してきた研人は、小学校を下見に行きます。 「飼育当番の冒険」桜台小...続きを読む学校。 飼育当番の茜は、いうことをきかない兎にいつも手を焼いています。 「忘れ物の迷宮」細川小学校。 3日連続して計算ドリルを学校に忘れてきた喬はお母さんに学校へ取りに行くように言われます。 「水泳記録会の奇跡」森が丘小学校。 智子はプールが大嫌い。今日も友達の後をとぼとぼ歩いてプールに向かっていると。 「理科実験の魔法」中山小学校。 担任の先生がおやすみだった三年三組は1日自習でした。3時間目に皆が教室に戻ってみると。
目次 ・春休みのかくれんぼ ・飼育当番の冒険 ・忘れ物の迷宮 ・水泳記録会の奇跡 ・理科実験の魔法 小柄でやせっぽちで丸眼鏡に白衣の菜の子先生。 困っている子どもの前に現れても直接問題を解決したりはしない。 先生は道を教えて背中を押してくれるだけ。 問題は本人が解決しないと意味がないから。 最初...続きを読むは渋々、またはこわごわ先生に従う子どもたちだけど、最後は必ず「先生、また会えるの?」と聞いてしまう。 答えはいつも「運がよければ、また、会いましょう」なのだけど。 「だって先生は、いつも、どこにもいないでしょ?学校のどこにも、いないでしょ?」 「私は、どこにも行きません。 昼間の空の星のように。今から生まれる雲のように。教室を吹き抜ける風のように…、足しかにそこにあっても、目には見えないものがあるのだということを、ようく覚えておいてくださいね」 運の悪い子だった私は、菜の子先生に会うことなく大人になってしまった。 理科実験、体験したかったなあ。
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