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ユイたちの家族には、だれにもしられてはならない重大な秘密がある。それは、じつはママの正体がキツネだということ。人間のパパとキツネのママ、そしてキツネと人間の血をひく三人の子どもたち。親類のキツネたちは、不吉な予言をつげるのが趣味の大おばさんや、ちゃらんぽらんで大うそつきのおじさんなど、みんな変わり者ぞろい。まよいこんできた竜はお風呂場にすみつくし、弟の背中にはウロコがはえてくるし、信田家の毎日は事件の連続!
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Posted by ブクログ
ただ今、富安陽子さんの作品を読み続けて、不思議な物語の魅力を知りたい期間中です。
本書は「シノダ!」シリーズの一作目(2003年)で、そのタイトルは富安さんのあとがきによると、『信田妻』の物語を元にして生まれたからとのことで、一匹の雌狐が人間の男の妻となって、子どもをもうけるが、やがて正体を知られ、家族の元を去っていく、という内容に、私は切ないものを先に感じたのだが、そこを富安さんは、『狐の母と人間の父、そしてそのあいだに生まれ、ふしぎな能力をさずけられた子ども』という部分に魅力を感じ、物語を書きたいと思われて、あれこれと空想を楽しんできたそうで、そうした前向きな印象が、そのまま本書の物語によく表れていることにも肯けるものがあったのだ。
ということで本書は、人間のパパとキツネのママ、キツネの血をひく三人の子どもたちを中心とした「信田家」の物語で、正体を知られないようにあれこれと苦心したり、癖の強い変わりものぞろいのキツネ一族に振り回されたりと、信田家には災難が付きまとうのだが、それでも大庭賢哉さんのポップな絵や、五人の家族それぞれの個性に感じられた親しみやすさが、そうした辛さを上回ることによって、明るくコミカルなドタバタ劇でありながら家族の絆にほろりとする部分もあってと、様々な感情を呼び起こしてくれる王道の物語となったのだと思う。
中でも印象的なのが、登場人物紹介に書かれた、一つの家系図にまとめることのできる十人のキャラクターの個性であり、上記の五人の他にも、テレビが見たいときだけ信田家に現れる、時代劇好きの「鬼丸おじいちゃん」(ママの父)や、不吉な予言を告げるときだけ現れる「ホギおばさん」(ママの母の妹)、冒険好きで話は面白いけれども、周りに迷惑をかけて評判の悪い「夜叉丸おじさん」(ママの兄)に、化け術の名人だが性格には難がある「スーちゃん」(ママの妹)と、多彩な癖の強さがある中、イツキおばあちゃん(ママの母)に至っては、ママの結婚に大反対だったことから未だに孫たちにも会わない状況にいてと、暗雲立ち込める要素も感じられそうだが、基本的には悪気の無い様が憎めない、キツネ一族の面々である。
そんな彼らの影響もあって様々な災難に巻き込まれる信田家の五人は、理由あって自宅の風呂場で暮らすようになった「チビ竜」に対して、両親は雲竜の子どもということもあって警戒するものの、そこは好奇心の塊である長男の「タクミ」(小学三年生)が、すぐに打ち解けて仲良くなったことで、普段は家の秘密を守るために頑張るしっかり者の長女「ユイ」(小学五年生)も、一緒になって盛り上がり、次女のモエ(三歳)は、チビ竜の件は秘密なのに幼稚園に連れて行きたいと言う無垢さが愛らしい、そんな特別な家庭に於いても他の家庭と変わらないような子どもらしさを見られるのは、物事にこだわらない大らかなパパと、常に周りを明るく愉快な雰囲気にさせてくれるママの支えが大きい。
それでも、時には壁にぶつかることもあり、ユイは身内に翻弄されて、タクミは男子ならではの繊細さを覗かせる一方で、普段、皆から守られることの多いモエは思わぬ場面で活躍したりと、キツネの血をひいた能力の開花と共に成長していく三人の子どもたちの姿も、このシリーズの魅力の一つなのではないかと思われる中、その道を照らすのは人間との愛を選んだママの、ちょっとやそっとでは消えそうもない、強く輝く意志の宿った光だ。
それは、『災難をのりこえられないことは不幸だけど、災難をのりこえていくことは、人生のたのしみの一つなんだから』や、『お日さまにむかっていれば、影は、じぶんのうしろにかくれる』のような、物語の子どもたちだけではなく読み手にとっても励まされる言葉たちに、何よりもよく表れているのだと感じられた、そこには『信田妻』の物語を元に想像を膨らませて、このようなユーモアと力強さとが同居する現代的な家族の希望の物語を書き上げた、富安さんの小説家としての素晴らしさも感じられたのである。
もちろん、富安さんならではの興味深い不思議な楽しさは本書でも健在で、それは稲妻をある姿に例えたことや、水の精霊と大地の精霊が結ばれて生まれた子どもの話と、それらに感じられたロマンには、人間と自然や動物たちとが結びあった絆の賜物とも思われて、また富安さんから素敵なことを教えてもらったと実感したことで、『見えないもの』の魅力はより増してゆく一方なのであった。
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