学習する組織
システム思考で未来を創造する
著:ピーター・M・センゲ
他訳:枝廣 淳子
他訳:小田 理一郎
出版社:英治出版
ナレッジ・トランスファーとしての組織学習かと思いましたが、モチベーション理論といった意味合いが強いとおもいます。
今こそ「学習する組織」が強く求められている時代はない
そして、私たちはかつてないほどの「相互依存」の時代に生きている とある
相互依存をしているからこそ、個人の学習だけではなく、組織としての学習が必要である、という主張である
複雑に激しく変化する時代には、しなやかさや多様性を強化することにより、長期的な効率の最適化を図る。
長期的視野に立つからこそ、知識やツール、それらを使いこなすスキルだけではなく、根底にあるそれぞれの人の基本姿勢や、あり方が重要であると説く。
ディシプリンという、見慣れぬ言葉がでてきて、まず、そこで違和感を覚える。辞書には訓練、しつけ、規律、などとある。
5つのディシプリン
①自己マスタリー
②メンタル・モデル
③共有ビジョン
④チーム学習
⑤システム思考
なので、ディシプリン=規律かな、などと考えてしまう
しかも、本書のテーマである、第5のディシプリンがいきなり、冒頭からでてきて、ほかの4つはどこに?となりました。不親切!
そして、3つの中核的学習能力
①志の育成
②内省的な会話の原則
③複雑性の理解
を伸ばすアプローチとある
スキルの習得と実践ではなく重要なのは、人格育成であり、上司と部下との関係は、教師と生徒の関係に等し
マイスター制度化と思うばかり、マルクス時代からは考えられない、職業教育のアプローチが基礎になっている。
これまでの組織設計や教育体系を病気として、その治癒の方法として7つの学習障害の認識というがでてくる
①私の仕事は〇〇だから
②悪いのはあちら
③先制攻撃の幻想
④出来事への執着
⑤ゆでガエルの寓話
⑥経験から学ぶという妄想
⑦経営陣の神話
全体系としてシステム全体を捕らえよ、一人一人はその系の部品そのものであるため、その部品だけが悪いというわけではない。悪いとしたら、全体が悪い
学習する組織というのは、フィードバックシステムとして捉えたシステム系である。
システムの原型というものがあり、典型的なパターンを付録で紹介している
①遅れを伴うバランス型プロセス
②成長の限界
③問題のすり替わり
④介入者への問題のすり替わり
⑤目標のなし崩し
⑥エスカレート
⑦強者はますますつよく
⑧共有地の悲劇
⑨うまくいかない解決策
⑩成長と投資不足
まあ、スケルトンというか、フレームワークというか、問題をモデル化する際の既製服である
目についたのは
・二つの複雑性、種類による静的な複雑性、ダイナミック(動的)な複雑性がある
・フィードバック・プロセスには、増殖型と、平衡型とがあり、その組み合わせになる
・フィードバックプロセスには、遅れを伴うことがあり、徐々に行動の結果をもたらす
・相互依存しながら変化する系には、分析と総合の考え方はそぐわない(問題を細分化しても効果が少ない)
・木を見て、森もみよ
・個人の学習なくして、組織の学習もなし
・自己マスタリーとは、ビジョンに絶えず焦点を当てて、新たに焦点を立て直し続けるプロセスである
・失敗しなければ、上達はない。
そのためには、失敗できる環境を整え、成功と失敗のフィードバックを回し続ける
・裸の王様、プラトンの洞窟の比喩。人間の目に映るのは真実ではなく、自分が思っている影である。
3つのリーダシップ
①学習システムの設計者としてのリーダシップ
②組織学習のための教師としてのリーダシップ
③全体系を最適化にするために、縁の下に力もちに徹する、執事としてのリーダシップ
リーダは、全体を見よ、そして全体にとって良きことをせよといっています。
目次
日本語版 訳者まえがき
改訂版によせて
第1部 いかに私たち自身の行動が私たちの現実を生み出すか
そして私たちはいかにそれを変えられるか
第1章 「われに支点を与えよ。さらば片手で世界を動かさん」
第2章 あなたの組織は学習障害を抱えていないか?
第3章 システムの呪縛か、私たち自身の考え方の呪縛か?
第2部 システム思考―「学習する組織」の要
第4章 システム思考の法則
第5章 意識の変容
第6章 「自然」の型―出来事を制御する型を特定する
第7章 自己限定的な成長か、自律的な成長か
第3部 核となるディシプリン―「学習する組織」の構築
第8章 自己マスタリー
第9章 メンタル・モデル
第10章 共有ビジョン
第11章 チーム学習
第4部 実践からの振り返り
第12章 基盤
第13章 推進力
第14章 戦略
第15章 リーダーの新しい仕事
第16章 システム市民
第17章 「学習する組織」の最前線)
第5部 結び
第18章 分かたれることのない全体
付録①学習のディシプリン
付録②システム原型
付録③Uプロセス
原注
ISBN:9784862761019
出版社:英治出版
判型:A5
ページ数:584ページ
定価:3500円(本体)
2011年06月30日第1版第1刷
2014年06月30日第1版第8刷