あらすじ
【ソーシャルセクターで注目を集める「コレクティブ・インパクト」初の実践書。】
その“解決策”が、実は問題を“悪化”させている?
いくら支援しても、ホームレスになる人が増え続ける。
厳しく取り締まっても、犯罪はなくならない。
よかれと思う行為が逆の結果を生むとき、何が起こっているのか?
20年以上の実践から生まれた、複雑な問題の本質に迫るアプローチ。
・著者が関わった豊富な事例をもとに、実務的なプロセスをわかりやすく解説。参加者が現実に向き合い、新しい方向性を見出す様子がリアルに描かれる。
・システム思考の専門家の小田理一郎氏が監訳・解説を執筆。解説では「実践上の10のコツ」を紹介。
・ソーシャルイノベーションの専門家の井上英之氏による日本語版まえがきでは、コレクティブ・インパクトの潮流とシステム思考との関係を丁寧に説明。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
個人的には、システム思考の本では、現時点でのベストと思える。具体的で、実践的なんだけど、その下にほんとしっかりした思想というか、経験と知恵がある感じ。
(とはいえ、これを最初に読むのは難しそうなので、「なぜあの人の解決策はいつもうまくいくのか?」、「世界はシステムで動く」を読んでからこの本に進むといいかな?)
内容的には、センゲの「学習する組織」「フィールドブック 5つの能力」で紹介されたシステム思考の方法の詳しい説明という感じ。
つまり、変数をリストアップしてその関係をゼロからループ図にしていくというアプローチではなくて、「システム原型」を使いながら対話をおこなっていくことを中心としたアプローチ。
また、システム思考だけでなくて、フリッツの緊張構造を全体のフレームとして使っていたり、通常、現状分析で使われることが多いシステム思考をありたい姿に向かっていくところでも使ったり、必要に応じて、アプリシエイティブ・インクワイアリーなども統合的使っている。
なんだろう、センゲの言っているシステム思考の全貌が、やっと具体的な形で浮かび上がって来たという印象。
システム思考は難しいという人は多い。もちろん、それはループ図を書くのが難しかったりとか、レバレッジポイントを探すのが難しかったりというところがあると思う。が、それだけではなく、具体的に実務としてどう進めるか、それがどう展開していくか、というのがイメージできない、というのもあったのではないかと思う。
その辺のモヤモヤがかなり晴れてきた気がした。
監訳者の小田さんの解説もすばらしい。本書の内容のわかりやすい解説にあわせ、システム思考のコツとか、変革理論との関係とか、アダム・カヘンの新著「敵とのコラボレーション」との関係も説明してある。この解説を読むことで、アダム・カヘンの新著の意味というか、位置付けがやっとわかったような感じがした。
Posted by ブクログ
社会問題や公共部門の施策の失敗などについて、善意はあるのになぜ問題は解決されないのだろう?と言う俯瞰的な視点で問題が引き起こされ解決策が機能しない構造を捉える方法を提示する本。
現状と問題が生まれるのはシステムによるものであるとし、システムの利害関係者の関わりによって問題を解決しようとする。問題は同じ次元のアプローチでは解決されない。
Posted by ブクログ
2020.41
・慢性的かつ複雑な社会問題への対処は、システム思考が必要。
・レバレッジがある。
・コレクティブインパクトのためにシステム思考は有効。
Posted by ブクログ
システム思考というより、今現在、少し気になっているキーワード「コレクティブ・インパクト」について学びたくて購入した1冊。
「コレクティブ・インパクト」自体はDHBR2月号でも特集が組まれていたように、社会課題に対して行政、企業、NPO団体など、さまざまな立場からの協働によって解決していくことです。
本書では複雑な要素がからむ社会課題のとらえ方として「システム思考」を提案しています。
システム思考に対比されるのは「線形思考」なのだけれど、こちらはシンプルな因果関係A→B のこと。
社会課題に対しておこなっている施策が「焼け石に水」、またはむしろ問題を悪化させる結果になってしまうのは、線形思考に基づいて局所的に良いと考える施策が様々な立場から行われているためだというのが本書の指摘です。
それを回避して悪循環を止められるレバレッジポイントを探すためには、問題の発生機序を俯瞰してみることが大切であり、それができるのがシステム思考だということです。
それでシステム思考とは何かということなのですが、複数の因果関係の組み合わさった図を書くのがポイントらしく・・・
このシステム思考の考え方・書き方は根来先生の「因果連鎖の網の目構造」に似ているかも。少し違う点としては、このシステム思考では課題を自己強化、または維持してしまうフィードバックループが存在しているという強い前提に立っているところでしょうか。悪循環のループを止めることを意識しているため、自然、書かれる図は必ずループ構造をもっています。研究のために大きな因果関係を意識して書く(網の目構造は枝葉が多い線形)のとは、目的が違うのが、図の全体の構成の違いに表れているのかなとも思いました。
意外に方法論的な側面もあって、IT業界におなじみのUML2.0の表記法を思い出しました。
この本、本編も学びはあるのだけど、日本語前書きと監訳者解説が充実。
「正確な図を書くのではなく、(議論のたたきや課題発見の)役に立つ図を書く」割り切りを主張しているのが実務的に含蓄があって良いです。
キーワード
・システム思考←→線形思考
システム思考は複雑な因果連鎖を想定
線形思考は局所的、確実な因果関係を想定する
・システム思考で課題をとらえると、10パターンほどの「システム原型」が表れてくる
(ただ、この「原型」の名づけはあまりうまくないような・・・)
うまくいかない解決策、問題のすりかわり、成長の限界、強者はますます強く、予期せぬ敵対者、目標のなし崩し、バラバラの目標、エスカレート、共有地の悲劇、成長/投資不足
Posted by ブクログ
活動は意図しない結果を必ず伴います。「意図しない」ものにどうやって気づくのか?システム思考はその手助けになる気がしました。実際に手を動かしてループ図を作ってみて何か発見しないと、読んだだけでは決して納得感は得られない感じです。