システム思考というより、今現在、少し気になっているキーワード「コレクティブ・インパクト」について学びたくて購入した1冊。
「コレクティブ・インパクト」自体はDHBR2月号でも特集が組まれていたように、社会課題に対して行政、企業、NPO団体など、さまざまな立場からの協働によって解決していくことです。
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本書では複雑な要素がからむ社会課題のとらえ方として「システム思考」を提案しています。
システム思考に対比されるのは「線形思考」なのだけれど、こちらはシンプルな因果関係A→B のこと。
社会課題に対しておこなっている施策が「焼け石に水」、またはむしろ問題を悪化させる結果になってしまうのは、線形思考に基づいて局所的に良いと考える施策が様々な立場から行われているためだというのが本書の指摘です。
それを回避して悪循環を止められるレバレッジポイントを探すためには、問題の発生機序を俯瞰してみることが大切であり、それができるのがシステム思考だということです。
それでシステム思考とは何かということなのですが、複数の因果関係の組み合わさった図を書くのがポイントらしく・・・
このシステム思考の考え方・書き方は根来先生の「因果連鎖の網の目構造」に似ているかも。少し違う点としては、このシステム思考では課題を自己強化、または維持してしまうフィードバックループが存在しているという強い前提に立っているところでしょうか。悪循環のループを止めることを意識しているため、自然、書かれる図は必ずループ構造をもっています。研究のために大きな因果関係を意識して書く(網の目構造は枝葉が多い線形)のとは、目的が違うのが、図の全体の構成の違いに表れているのかなとも思いました。
意外に方法論的な側面もあって、IT業界におなじみのUML2.0の表記法を思い出しました。
この本、本編も学びはあるのだけど、日本語前書きと監訳者解説が充実。
「正確な図を書くのではなく、(議論のたたきや課題発見の)役に立つ図を書く」割り切りを主張しているのが実務的に含蓄があって良いです。
キーワード
・システム思考←→線形思考
システム思考は複雑な因果連鎖を想定
線形思考は局所的、確実な因果関係を想定する
・システム思考で課題をとらえると、10パターンほどの「システム原型」が表れてくる
(ただ、この「原型」の名づけはあまりうまくないような・・・)
うまくいかない解決策、問題のすりかわり、成長の限界、強者はますます強く、予期せぬ敵対者、目標のなし崩し、バラバラの目標、エスカレート、共有地の悲劇、成長/投資不足