最高すぎた。どの短編も読み応えすごい。宇宙に行きっぱなしじゃなくて、その前提があると人類はどんな社会になるか?どんな国際的な決定やルールが敷かれるか?科学はどうなるか?のifの設定が素晴らしいし、そこに登場する農村とかに住む普通の一般人視点が入ってくるかた読者を置いていかない。
流浪地球
太陽が膨張しはじめて、地球ごと太陽系から脱出しようとする話。
自転止めたりスケールがすごい。
太陽系からの脱出間際に、デマが回って科学者や献身的に人類の存続のために働いた人たちが殺されるのが悲しいけど人間らしくてリアル。
ミクロ紀元
大きいものが優れているとは限らない。
生き抜くための遺伝子操作を繰り返した結果、わずかな資源で生き延びれるよう人類が細菌サイズになった話。爆発とかより細菌戦争の方がグロい気がする。
呑食者
恐竜が実は白亜紀の絶滅前に氷河期から免れようと一部だけ宇宙空間に逃げてたかもしれない話。人間の狡猾さ、ずる賢さが宇宙上でも一級品ってことがわかる。最後奇跡的に残った数人の人間がとった選択にめちゃくちゃ痺れた。進化をもう一度蟻の時代からはじめるために、自分たち人間ができることを、こんなに迷いなく決められるかな。
呪い5.0
AIとIoTへの超皮肉ホラーコメディ。
インターネット黎明期に失恋した天才プログラマーが作ったウイルス「呪い1.0」が現代で街を一個滅ぼす話。劉慈欣先生本人が売れないSF作家として登場して世界を破滅に導いてしまうイタズラを酔っ払ってやってしまうのが面白い。機械に全てを任せる世界の怖さもあるけどとにかくめちゃくちゃギャグセンス高くて面白かった。
中国太陽
一番好きな短編。貧しい田舎から炭鉱、都会へと出稼ぎに行く少年が高層ビルの仕事について、そのまま人工太陽の清掃員になる話。物事は高いところから見ないと本当のことに気づけないは心理だと思う。人工太陽で異常気象や過酷な地域の天候を改善させる世界で、清掃員が自分の故郷の上に人工太陽が来た時その箇所を丁寧に掃除するっていうのが素敵だった。
山
設定が天才的で拍手すぎる。地球は外側に宇宙空間が広がっているけど、逆に固形の宇宙に暮らしてた知的生命が空間宇宙を見つける話。地球が属する空間宇宙ももしかしたら最果ては壁になっててその向こうは固形宇宙かもしれない。常識を疑う設定の思いつき方はさすが劉慈欣先生と崇めるばかりです。山があったら登りたくなっちゃう主人公もいいキャラクターだった。もし世界の前提が今と違ったらっていう思考実験をした時の細かさが本当にすごい。
(引用)
いまは人類にとって歴史上もっとも忙しい時代で、すべての人間がやってもやっても終わらないくらい仕事がある。おもしろいのは、地球上のあらゆる宗教が一夜にして影もかたちもなくなってしまったことだ。
人々はついに悟ったのだ。たとえ神さまがいたとしても、そいつはどうしようもないろくでなしだということに。(「流浪地球」)
「ええ、帰ってこられません、妻や子どもがいて、あたたかい家がある生活に満足し、俗世間以外のことは自分に関係ないと思っている人もいれば、たとえ命とひきかえにしても、人類がいままで見たことのないものを見てみたいという人もいます。わたしは、どちらの人の人生も経験しました。人にはそれぞれ、自分の人生を自分で選択する権利があるはずです。十数光年というはるか遠い宇宙鏡に乗って放浪する人生を選んでもいいでしょう」
(「中国太陽」)