月谷真紀の作品一覧
「月谷真紀」の「わかりあえない他者と生きる 差異と分断を乗り越える哲学」「カオスの帝王―惨事から巨万の利益を生み出すウォール街の覇者たち」ほか、ユーザーレビューをお届けします!
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Posted by ブクログ
ストーリーが世界を滅ぼす
――物語があなたの脳を操作する
序 章 物語の語り手を絶対に信用するな。だが私たちは信用してしまう
第1章 「ストーリーテラーが世界を支配する」
第2章 ストーリーテリングという闇の芸術
第3章 ストーリーランド大戦
第4章 「ニュース」などない。あるのは「ドラマ」のみである
第5章 悪魔は「他者」ではない。悪魔は「私たち」だ
第6章 「現実」対「虚構」
終 章 私たちを分断する物語の中で生きぬく
なかなか衝撃的な本でした。物語が人の認知に与える影響は強力で、人に印象付けるためには物語の形式が最も優れていることは知っていましたが、本書で物語はそれ以上の威力があることを再認識しました。
物語は人の進化の過程で人を団結させるために脳に組み込まれてきたわけですが、団結するということは団結の輪の外の人たちを作るということ。そして、物語は常に輪の外の人たちを邪悪な敵、別の人たちに仕立て上げてそれを攻撃したり排斥したりすることによって団結を保つために使われてきたし、それを脳が逃れることは非常に難しいことを理解できました。
SNSは大小さまざまな物語を通して、輪の内と外に分断する道具として大きな役割を果たすことによって、今見る分断を世界中に広めています。
アメリカの某大統領の話が書かれていますが、彼は物語を通して偉大なアメリカを再びというスローガンで保守層を団結させ、その威力は左派が提示するファクトをことごとく粉砕してきたのは周知の事実だと思われます。
物語への対抗手段として理性と科学があるが、理性は感情に容易に屈してしまうし、科学は科学者のリベラル化により保守層からは信じてもらえなくなりつつある。
そんな状況の中でAIによる画像やテキストの合成により、フェイクは形を与えられ、ファクトは瀕死の状況となっていくという予想は当たらずとも遠からずの印象があります。
はて、さて、物語好きの竹蔵としては困った状況ですが、自分が物語を読んでいることを意識の片隅に置くことで、少しは狂信的になるリスクは避けられると願っています。
小説を読んだり映画を見たりするのは楽しいですから・・・
竹蔵
Posted by ブクログ
タイトルからは、コロナ禍での金融マーケットの混乱から大きな利益をもたらしたファンドについてのドキュメンタリー、ちょうど「マネー・ショート」のような、をイメージしていたのだが、いい意味でこの予想は裏切られた。
本作は金融マーケットだけではなく、世の中の様々なところに存在している「発生タイミングが予測不可能だが、一度発生すると破壊的な影響をもたらす」ことに焦点を当てたノンフィクションだ。この考え方は、今ではブラックスワンと呼ばれるのが一般的だが、クラッシュスワンの考え方を提唱したニコラス・タレブの本作で取り上げる主要な人物の一人である。
こういったブラックスワンは、金融マーケットにおいて有名になった考え方だが、本書によれば、ブラックスワンが発生するのは、金融マーケットだけではなく、地球温暖化やコロナのようなパンデミック、あるいは遺伝子組み換え作物などにも考え方が当てはまると言う。
一度発生すると、破壊的な影響をもたらすようなこのような事態に対して、本書が予防原則と言う考え方を提示して、危機に備える人たちを取り上げる。
といっても、本書は非常にバランスが取れており、例えば地球温暖化のような極めて政治的に取り扱いが難しいテーマであったとしても、スタンスを取るような事はしない。本書が伝えたいこと。、そしておそらく著者のスコット・パタースンが伝えたい事は、そういったブラックスワンが発生する可能性があるのであれば、予防原則と言う考え方を取り得ることが有効な対策方法の1つであると言うことだ。
本書が、いかにもアメリカ的だと思うのは、この社会的な分析に対して、金融商品を開発し、そして大儲けをする人間が主役の1人になってると言うことだ。法律的にリスクとリターンをバランスを取る金融取引においては、破壊的なリスクが存在するのであれば、破壊的なリターンにより相殺することができると言うのが、本書の強いメッセージの1つだと思う。
とは言え、この2025年の夏のように信じられない暑さが続く現実を見ると、本書が言うような予防原則の考え方が、適応できる時期は既に終わってしまったのではないかと言う不安を持たざるを得ない。