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シートン動物記
シートン(1860~1946)は動物文学の作家として、アメリカが世界に誇る存在である。英国生まれだが彼が六歳のとき一家をあげてカナダに移住し、トロントの大学と、ロンドンのローヤル・アカデミーで教育を受けた。父の意向もあり、画家として身をたてたが、幼いときから大自然へ興味をもち、好きな野生動物の観察と研究に打ちこみ、ついにはその結果を文としてまとめるようになった。この動物記は、シートンの代表作を全4巻にまとめた決定版である。本巻には「狼王ロボ」、「銀の星」(烏)、「ぎざ耳小僧」(兎)、「街の吟遊詩人」(雀)、「スプリングフィールドの狐」、「怪物コウモリ」、「少年と大山猫」、「大灰色熊の伝記」の8編を収めた。動物たちへの愛情あふれる記述とともに、生きることの真の厳しさと、人間社会との深い関わりが浮き彫りになっている点が大きな特徴である。 -
かみそりの刃
モーム晩年の70歳の作。1944年、米国滞在中に書かれ、第二次大戦中だったため、主人公ラリーの生き方に共感した米国の青年たちに歓迎され、熱狂的に読まれた。物語はモームによって語られる。モームはたまたま立ち寄ったアメリカで旧友エリオットから、姪のイザベルと彼女の婚約者ラリーを紹介される。ラリーは第一次大戦で親友を失い、途方にくれ、道を求めてヨーロッパを放浪する。当然ながら婚約者イザベルはついてゆけず別の男に嫁した。ラリーはさまざまな体験を経て、最後にはインドで自分の人生の目的を悟る。この本筋のなかに、エリオット、シュザンヌ、ソフィらを巡る数々の物語が組み込まれ、全体は周到なエンターテイメントになっている。 -
夜はやさし
スイスの診療所に入院していたアメリカの富豪の娘ニコルは、若いアメリカ人の医師ディックを恋し、やがて二人は結婚する。だが、ニコルには暗い過去があり、精神を病んでいた。ディックも夫と付添医師という二重の役目を負わされる。二人の子にも恵まれた平穏の暮らしのなかへ、ハリウッドの新進スター、18歳のローズマリーがあらわれ、ディックはその誘惑に抗しきれなくなる。深酒にふける彼のモラルの崩壊はこのときから始まる。だが、夫の愛情が冷めてゆくにつれて、ニコルは精神の健康をとり戻し、以前から秘かに彼女への思慕をつづけてきたトミー・バーバンへ走る。…「ジャズ時代」の申し子であった作者の野心作であり、すぐれたドキュメンタリーな作品ともいえる。 -
犯罪文学傑作選
ほとんどすべての世界的に有名な作家は犯罪文学に貢献してきたのであります。この選集の目的は、「純文学」畑で名をあげた作家たちによって書かれた、ミステリと殺人、犯罪と探偵を扱った、粒よりの物語を読者に提供することにあります。それはディケンズ、マーク・トウェイン、ウィラ・キャザー、R・L・スティーヴンスン、リング・ラードナー、ジョン・スタインベック、ウィリアム・フォークナー、パール・バック、オールダス・ハックスリー、ウォルター・デ・ラ・メア、H・G・ウェルズ、モーパッサンなど、天分のある物語作家や練達の技巧家たちの手になったものばかりであります。そうです、だれか著名な作家を、「当代えりぬきの巨匠」を、だれでもいいから一人あげてごらんなさい。きっと、あなたはミステリ作家を名ざすことになります。そしてそのことを26回も繰り返して証明するために、わたしたちはこの短編の宝庫をあなたにささげるしだいです。これこそまさしく「犯罪の粋(クレーム・ド・クライム)」、読者大衆へのキャヴィアと申すべきでしょう…エラリー・クイーン。 -
魔術師
モームは、アレスター・クロウリーという特異な人物とパリでめぐりあった経験をもとに、オリヴァ・ハドゥーなる悪魔的怪紳士を創作し、それにふさわしい怪奇な筋をもつ一編の怪奇小説、恐怖小説を造りあげた。それが本書である。「常識」と「迷信」との対決という主題を掘り下げたのであるが、こうしたプロットを効果的に運ぶためには、作者は自身の経験にもなく、知識もなかった《魔術》という奇怪なカルトが、現実のヨーロッパ社会に存在していることについて、同じく無知な読者に納得させなくてはならない。すなわちこの小説は、小説としての意匠から必然的に、魔術とは何か? という問いに対する解明と考察とを含む一種の思想小説、文明批評小説として仕立てあげられることになった。