あらすじ
万次と喜八は、浅草界隈を牛耳っている香具師・丑蔵の子分。親分の信頼も篤いふたりが、理由あって、やくざ稼業から足抜けをすべく、集金した銭を持って江戸から逃げることに。だが、丑蔵が放った刺客たちに追い詰められ、ふたりは高輪の大親分・禄兵衛の元に決死の思いで逃げ込んだ。禄兵衛は、銭さえ払えば必ず逃がしてくれる男を紹介すると言うが──涙あり、笑いあり、手に汗を握るシーンあり、大きく深い感動ありのノンストップエンターテインメント時代小説、ここに開幕!(解説 吉田伸子)
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Posted by ブクログ
2023/12/28
ぼろ鳶があんまりおもしろくて逆にほかのシリーズに手を出すの怖くなってたけど出してみたら杞憂であった。
こちらもハラハラドキドキおもしろい。
キャラも立っててすぐ好きになった。
過去の因縁とか悪の組織っぽいのがまだまだ隠されてる。
続きも楽しみ。
「くらまし屋稼業」を読んで
堤平九郎は浅草雷門近くに飴細工の露店を出している。飴の商いは仮のものでありもう一つの別の稼業が「くらまし屋」といって、この江戸を逃れてよそ地で暮らしたいという者の望みを叶えるという商売である。 浅草界隈のヤクザの元締め、丑蔵の第一、第二の子分、万次と喜八は、予てよりヤクザの暮らしに嫌気が差して抜け出したいと願っていた。 万次には、日本橋の飲み屋で手伝いをするお利根という女がいる。万次はヤクザ家業の足を洗い大阪で店を出し、お利根と二人で暮らす願いがある。 喜八は故郷、小諸に病いの妻と娘がいる。その治療代を稼ぐために江戸に出て治療代を送っていたのだった。そして更に娘が流行病に罹り、せめて家に戻って欲しいとの妻からの連絡があった。 いよいよ江戸脱出の日、月末に親分の信頼が厚い二人が集金して廻って集めた二日分の金を持って決行する。 しかし、異変に気付いた丑蔵は手下など多数の人数を出して各街道筋を見張らせ、万次と喜八はやむを得ず高輪の香具師禄兵衛親分の下で匿って貰った。
平九郎に、万次と喜八を江戸から逃すという仕事が入った。平九郎は、丑蔵に負けじと大掛かりな手立てを考え、仲間の七瀬と赤也を手伝わせて、八十丁の駕籠を用意させ、二人を中山道の板橋から逃がす事に成功した。
時は江戸時代中頃の宝暦、地方では不作が続き、飢饉や一揆が多く出た時代だった。 物語は読み始めからゾクゾクさせれる。あるいは異質な世界の物語でもあり、凄みがあって、読んでいる自分も最後は殺されるのではと思うほどの恐怖心を抱いた。太平の世が続いてはいるが、つまる所、二本差しの侍が社会の中心を為している。未だどこかに事件が起こっては血生臭さがしばしば漂う江戸市中が舞台だ。 万次と喜八は、いずれにせよ無事に板橋宿から江戸を抜けて浦和、蕨宿に至る中山道を逃げた。
しかし、ここでもう一波乱ある。 中山道は喜八の郷里まで真直ぐ1本道である。万次が甲州街道を逃げるのをわざわざそれに付き合うのだが、喜八は平九郎の懐の大金目当てについて来たのである。平九郎は、止む無く喜八を斬り殺す。平九郎にとって悔やまれる事態になり商売は失敗だった。喜八は平九郎との面談では嘘をついていないが・・・武士の傲慢あるいは身勝手さだろうか。或いは喜八の理性を狂わせてしまったのは、邪心に似た惑いが生じたからかもしれない。
物語はもう一波乱あるが、それは省いても非常に読み応えのある。