あらすじ
作戦の転換が功を奏して、旅順は陥落した。だが兵力の消耗は日々深刻であった。北で警鐘が鳴る。満州の野でかろうじて持ちこたえ冬ごもりしている日本軍に対し、凍てつく大地をとどろかせ、ロシアの攻勢が始まった。左翼を守備する秋山好古支隊に巨大な圧力がのしかかった。やせ細った防御陣地は蹂躙され、壊滅の危機が迫った。
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Posted by ブクログ
ロシアに戦力で劣る日本は、海軍も陸軍も、機敏で連携の取れた動きと奇策で戦った。
しかも大勝を収めるというのではなく、和平交渉でギリギリ勝ちに持ち込むという狙い。
そのために策を巡らし、資源や訓練を集中する場面がこの巻ではみられる。
小さいものが大きな相手に勝とうと思うと、結局はそれしかないのかもしれない。
そして日本人はそんな話が好きだ。
少ない兵が死力を尽くして忠義を守る的な話。
また、この巻ではロシアの組織としての脆さも際立った。
大きな組織にあるあるな、独裁的な権力を持つリーダーや派閥争い、指揮系統の乱れ。
そんな一つ一つが、真剣にやれば楽勝に思える戦力差のある日本に追い詰められていく原因になる。
相手を侮ってはいけないということだ。
私の会社でも、最近では現場と本部との乖離を感じるようになってきた。
上場しているわけでもない中小企業だが、どうも大企業のような建前を整える作業ばかりに終われ、肝心の事業の方が疎かになり、売上も利益も落ち続けている。
ビジネスと戦争は似ている面があるとこうした本を読むと思う。
資源は集中した方が強いし、政治的な建前で人事を行なって現場を振り回すと碌なことにならない。
資源が限られる小さな企業なら尚更、多方面に中途半端に手を出してはいけないのだ。
新規事業は、やるなら本気で集中してやり切らないといけないし、資源を集中的に投下することも考えないといけない。
小説から学ぶことも多い。
Posted by ブクログ
本筋の満州での会戦。陸軍のダメダメなところは旅順だけじゃなかったのね。極寒の地で薄氷を踏むような戦い。好古に同情する。サイドストーリーのヨーロッパ諜報戦、インド洋のバルチック艦隊奮闘記も佳境で次の巻に続く。
Posted by ブクログ
ついに最後の巻を読むに至った。いい調子で読んでいたけれど、やっぱりこの話の脱線ぶりというか余談ぶりには全く閉口する。沖縄の漁師がバルチック艦隊を発見してそれを軍部に報告するまでの過程にくだくだと紙面を割くことの悠長さは腹さえ立ってくる。この本を手に取る読者のほとんどの人が読みたいのは日露戦争のドラマ、大筋であってそんなちまちましたことまで読みたいと思うのだろうか。ある意味そういった部分も場合によっては興味深くないこともないが、この膨大な小説が膨大にならざるを得なかったのはそういった余談話をちりばめすぎるからではないか。その分を戦闘シーンに割けばいいではないか。また昔の日本人の名前の漢字は読むのが難しい。なのに、簡単な漢字の「信濃丸」なんてのにルビが振ってあるのはなんなのだ?と、どんどん司馬さんと文芸春秋社を嫌いになりながらこの巻を読んでいる。
もひとつ。読む側の私の意識にも大いに問題があります。貸してもらっていたのを長らく放置していて、もういい加減返さなくてはとの思い。読むのに旬ではなかったのです。ですから文句を言うほうが間違っているとも言えます。すみません。
読み終えました。もう何も言うまい。でも一言、“ホッ”としております。
Posted by ブクログ
明石元二郎の諜報活動にページが割かれているのだけども、これが面白い!
人物も魅力的であるし、真正面からの戦いだけでなくロシア内部から切り崩すためにどのようなストーリーがあったのかが詳しく描かれます。
歴史は、結果でしか捉えることしかできないから割と無機質な印象を持ちがちだったけど、小説を読むことで人柄が結果を左右してたんだなぁと人間味を感じることができるのがよい。