【感想・ネタバレ】危機と克服──ローマ人の物語[電子版]VIIIのレビュー

あらすじ

紀元68年、ネロを最後に神君アウグストゥスの血統が絶え、ローマは大混乱に陥った。1年あまりのうちに3人の軍人が帝位に就くも、次々に殺されるか、失脚した。血で血を洗う内乱が繰り広げられるローマ帝国。これが同じローマ人なのか? 未曾有の危機からローマを救い、さらなる繁栄へと向かわせたのは、出自にも輝ける才能にも恵まれなかったヴェスパシアヌスとその息子たちだった。危機を糧として発展を続けるローマ帝国の神髄が描かれた一書。 ※当電子版は単行本第VIII巻(新潮文庫第21、22、23巻)と同じ内容です。

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危機管理

一部ご紹介します。
・人間には、自らが生きた時代の危機を、他のどの時代よりも厳しいと感じてしまう傾向がある。ただし、興隆途上の危機とその克服は、さらなる繁栄に繋がるが、衰退期に入ると、危機は克服できても、それは最早さらなる繁栄に繋がらなくなってしまう。
・平時にも活躍できるタイプの人材でなければ、真の意味で戦時にも有益になり得ない。なぜなら、リーダーの第一条件が、彼に従う人々に対しての統率力であるからだ。
・「見たいと思う現実しか見ない」傾向は、人を不幸にする。異なる宗教、異なる生活様式、異なる人種であっても、共に生きていかなければならないのが人間社会の現実だ。玉砕は後世を感動させることはあっても、所詮は自己満足に過ぎない。
・純粋を至上の生き方と信ずる人々にとって、不純ほど許せないものはない。純粋であればあるほど、少しの不純も許せなくなり、より急進化してしまう。
・労働よりも略奪で生活の糧を得ようと考える者がいる限り、防衛の必要が消えることはない。
・防衛の結果が、話し合いよりも腕力で決する機会が多いのは、双方の持つ「考え方」「価値観」の違いによる。
・「考え方」を共有しない人々との関係では、心配は尽きることがない。
・民族間の衝突が「考え方」の違いによるとしてもよいのが現実である以上、敗者になりたくなければ防衛を忘れるわけにはいかない。
・施政者の二大責務は、安全と食を保証することだ。そして「食」の保証とは、「安全」を保証できてはじめて成就可能な目標でもあるのだ。
・国家の運営が任務の国政と、体力を競うのが目的のリレー競争。ローマの歴史が、リレー競争に似ているのは、現に権力を持っている者が、自分に代わり得る者を積極的に登用し育成したことにある。

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2022年09月30日

Posted by ブクログ

ネタバレ

ネロが凄腕のシリア総督コルブロに自死を命じて、元老院に国家の敵とされて自死してから、目まぐるしく、皇帝がガルバ→オトー→ヴィテリウス→ヴェスパシアヌスって変わる。
ヴェスパシアヌスは世襲制で皇帝の座を承継できるように整えて、死後、長男のティトゥスが皇帝になるんだけど、立て続けに起こった2度の天災の対応に忙殺されて、ティトゥスが亡くなっちゃう。民衆からも人気あってバランス取れた良い統治をする人だったらしい。
で、次男で弟のドミティアヌスが跡を継いで帝位に就くんだけど、この人は公共施設の改修工事やら新設やら、色々評価されることをした一方で、奥さんと姪との闇深そうな関係の拗れとか終身財務官に就任して元老院に警戒されたりだとか、まあ好かれない施策も多々打ち出したせいで、暗殺されてしかも記録抹殺刑に処されて、歴史上からいろんなことが消された。
そのあとはネルヴァっておじいちゃんが少しの期間皇帝になって、スペイン出身のトライアヌスが初めて属州出身の皇帝になった、ってところまでが書かれてる。

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2024年12月16日

Posted by ブクログ

ネタバレ

1年1冊のシリーズも西暦69年のネロ自死というローマの危機に始まり、軍人皇帝たちそしてヴェスチニアヌスによるフラビウス王朝の開始になりました。あまり知らなかった時代ですが、ボンベイの滅亡、ユダヤの反乱(マサダの砦)などで親しみのある時代でもあります。塩野さんの詳細な研究にはいつも圧倒されます。

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2013年08月24日

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