あらすじ
組織に働く者の使命と役割、その実際的な仕事の方法を具体的に著し、ドラッカーがマネジメントの父と仰がれることになった現代マネジメントの金字塔。
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Posted by ブクログ
ドラッカーが1954年に出版した古典的経営書である。これが60年前に書かれたものかと思うほど、違和感がない。ドラッカーは企業の目的は社会にあり(企業は社会の機関)、「顧客の創造」であるとする。それはマーケティングとイノベーションを通じて行われる。
昔から経済学では企業の目的は利潤の極大化だとするのが当たり前だし、常識的にもそのように考えられていると思うが、ドラッカーの興味深いところは利益については最大にするのではなく、あくまで損失の回避であり、企業が変化を起こそうとする中でのリスクに備えるための余剰の源泉として位置付けているところだ。
またドラッカーが挙げている、事業において目標を設定すべき8つの領域として、マーケティング、イノベーション、生産性、資金と資源、利益、マネジメント能力、人的資源に加え、社会的責任を加えている。現代でこそ、企業のCSR等が問われているが、この時代に社会的責任を強調しているところがすごい。最後の3つを軽視すれば結局のところ前半の5つにおける損失となって現れ、事業そのものの衰退として現れる、ということである。
後半では経営管理者のマネジメントが論じられている。冒頭でヘンリーフォードが昔、技術者とワンマン社長のみの組織を目指し、経営管理者を排除しようとして大失敗した例を引き合いに出しているが、非常に興味深い。
管理の限界(スパンオブコントロール)という考え方がよく人事で引用されるが、きちんと業績で評価されるのであれば、部下に指示し報告させるという管理業務は不要であり、経営管理者のマネジメントの責任範囲はそれよりも大きくなるとする。つまり部下は管理する対象ではなく、助けたり教えたりする必要のある部下の数になる。
このようにいまだにドラッカーの考え方は非常に新鮮であり、考えさせられる。