あらすじ
1974年、ドラッカーは本書において、独自の経営論を体系化し、ドラッカー経営学というべき大著に仕上げた。本書では、マネジメントが成し遂げるべきミッションと実際の仕事の方法、そして組織が果たすべき社会的責任の本質を述べる。
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ドラッカー名著集 13
マネジメント 上
課題、責任、実践
著:ピーター・F・ドラッカー
訳:上田 惇生
出版社:ダイヤモンド社
3巻3部、60章を超える大作です。
ドラッカーのマネジメント論の集大成でしょうか。15巻の名著集の中の最後の3巻に置かれています
マネジメントは体系である
マネジメントは、課題である、体系である、そして人である
マネジメントは、実践である、その本質は、知ることではなく、行うことにある
つまり、ドラッカーは、おれの、マネジメントの体系を理解して実践しろといっているのです
本書の動機と目的は、今日と明日のマネジメントをして、成果をあげさせることにある
ドラッカーのすごいところは、仕事のプロセスや考え方もそうだが、人間の内面の心理に踏み込んだ上で、マネジメントを内側からも見ているところだとおもいます。そういう意味でマネジメントは、人であるといっていると思いました。
<上巻>マネジメントの役割で、気になったのは、以下です。
・マネジメントの本質は、富でも地位でもなく、責任である
・マネジメントスキルの1つが、コミュニケーションである
・マネジメントとは、科学ではなく、実践である
・プロフェッショナルとしてのマネジメントの必要性を世界で最初に理解したのが、渋沢栄一であった
・マネジメントの基礎となったコンセプトは7つ
①科学的管理法
②連邦分権組織
③人事管理
④マネジメント教育
⑤管理会計
⑥マーケティング
⑦プランニング
・マネジメントの最大の課題は、知識の生産性を高めることである
・社会と経済の発展をもたらすものは、マネジメントである
・企業は、働く者に仕事を与え、株主に配当を与えるために存在するのではない。
消費者に対し、財とサービスを供給するために存在する
・企業の目的の定義は1つしかない。それは顧客の創造である
・そもそも、利益とは目的ではなく、結果である
・「われわれの事業は何か」を問うことは、トップマネジメントの責任である
・「顧客はだれか」との問いこそ、最初に考えるべき最も重要な問いである
・市場において目指すべき地位は、最大ではなく、最適である
・働く者にとってより重要なのは、利益の配分ではなく、雇用の安定である
・仕事を生産的なものにするには、仕事が客観的な存在である、スキルや知識は、仕事側ではなく労働側の問題であることを認識しておかねばならない
・人をして成果をあげさせるための第一歩は、仕事を生産的なものにすることである
仕事を生産的なものにするには、4つのものが必要である
①仕事の分析
②プロセスの統合
③管理
④ツール
仕事を生産的なものにするためには、仕事のアウトプットから考えることである
インプットからスタートしてはいけない
・仕事のプロセスを管理することは、仕事を管理するということであって、働く人を管理することではない
・マネジメントたる者は、人を知らなければならない、少なくとも、人が人として行動することを知らなればならない
・仕事のうえでの人間関係は、尊敬を基礎におかなければならない
・日本では、若い者の面倒を見、育てることが、マネジメントの第一の責任とされている
・自分自身の仕事をマネジメントせよ
・働く者が仕事に誇りをもつようになったことが、最大の収穫だった
・働く者に責任をもたせるには、権限を明確にしておくことである
・人のマネジメントとは、人の強みを発揮させることである
・マネジメントは召使である、主人は、彼がマネジメントする組織である
・プロフェッショナルの最大の責任、「知りながら害をなすな」
ISBN:9784478004333
出版社:ダイヤモンド社
判型:4-6
ページ数:480ページ
定価:2400円(本体)
2008年12月11日 第1刷発行
目次
<上巻>
まえがき——専制に代わるもの
謝辞
序 論 マネジメント──ブームから成果へ
第1章 マネジメントの登場
第2章 マネジメント・ブームの教訓
第3章 マネジメントへの挑戦
第1部 マネジメントの役割
第4章 マネジメントの役割
企業の成果
第5章 事業のマネジメント——シアーズ物語
第6章 企業とは何か
第7章 目的とミッション
第8章 目標——マークス&スペンサー物語
第9章 目標の設定とその実行
第10章 企業家的スキルとしての戦略計画
公的サービス機関の成果
第11章 多元社会の到来
第12章 的サービス機関の不振の原因
第13章 例外的存在とその教訓
第14章 公的サービス機関の成功の条件
仕事を生産的なものにし、人に成果をあげさせる
第15章 新しい現実
第16章 仕事と働くことと働く人たち
第17章 仕事を生産的なものにする——仕事の分析とプロセスへの統合
第18章 仕事を生産的なものにする——管理手段とツール
第19章 働く人と働くことのマネジメント
第20章 成功物語
第21章 仕事への責任
第22章 雇用と所得
第23章 人こそ最大の資産
社会に与えるインパクトの処理と社会への貢献
第24章 マネジメントと社会
第25章 社会に与えるインパクトの処理と社会への貢献
第26章 社会的責任の限界
第27章 企業と政府の関係
第28章 プロフェッショナルの倫理——知りながら害をなすな
上巻への訳者あとがき
索引
<中巻>
第2部 マネジメントの方法
第29章 マネジメントの必要性
マネジメントの仕事
第30章 マネジメントとは何か
第31章 マネジメントの仕事
第32章 マネジメントの仕事の設計
第33章 マネジメント教育
第34章 自己目標管理
第35章 ミドルマネジメント
第36章 成果中心の精神
マネジメントのスキル
第37章 意思決定
第38章 コミュニケーション
第39章 管理手段
第40章 マネジメント・サイエンス
マネジメントの組織
第41章 組織についての新しいニーズ
第42章 組織の基本単位
第43章 組織の基本単位の位置づけ
第44章 組織の設計原理と組織の仕様
第45章 仕事中心の組織——職能別組織とチーム型組織
第46章 成果中心の組織——連邦分権組織と擬似分権組織
第47章 関係中心の組織——システム型組織
第48章 組織構造についての結論
中巻への訳者あとがき
索引
<下巻>
第3部 マネジメントの戦略
第49章 ドイツ銀行物語
トップマネジメントの仕事と組織
第50章 トップマネジメントの仕事
第51章 トップマネジメントの構造
第52章 取締役会
戦略と構造
第53章 規模の適切さ
第54章 小企業のマネジメント、中企業のマネジメント、大企業のマネジメント
第55章 規模のマネジメント
第56章 多角化への誘因
第57章 多角化の核
第58章 多角化のマネジメント
第59章 グローバル化のマネジメント
第60章 成長のマネジメント
第61章 イノベーションのマネジメント
結論 マネジメントの正統性
下巻への訳者あとがき
参考文献
索引
Posted by ブクログ
本書はマネジメント書の中でもバイブル級に位置づけられるが、これまであえて積読状態にしていた。しかし、自分の中でようやく読むべき時がきたのを感じたので、手に取ってみた。まだ上巻を読んだだけだが、考えさせられる点が多々ある。以前にエッセンシャル版を読んでいたが、やはり原典の重みは違う。
ドラッカーの他の著作を読んでいるので既視感の高い章も多かったが、この本ならではの記述として印象に残ったのは第18章「仕事を生産的なものにする-管理手段とツール」と第25章「社会に与えるインパクトの処理と社会への貢献」だ。第18章はITが発達して様々なツールがビジネスに利用される中で、管理・ツールとはどうあるべきかを改めて考えさせられた。おそらく多くの企業で現場の生産性を落としている管理やツールが横行していると思われるが、もう一度、ドラッカーの言葉に立ち返る価値がある。また、第25章はSDGsがブームとなりつつある現代で企業が本当に何をすべきか、何をすべきでないのかを考える視点を提供している。
ドラッカーは日本についてもよく研究しているため、本書には日本の事例も多数紹介されている。その中には現代では失われてしまった旧き良きマネジメント慣行も多い。原著は1973年に出版されたものであるが、古臭いと思わずに温故知新ととらえて、組織のマネージャークラス以上の方には是非、読んでいただきたい。
Posted by ブクログ
多くの人に読まれているだけあって、非常に示唆に富んだ本。抽象的な内容であるため、どうとでも解釈ができ、わかった気になる度合いは非常に高いので、注意が必要。
特に印象に残ったのは、マネジメントの意義のうち、
・マネジメントは人を使って成果を上げさせるもの
・組織に社会貢献させるためにマネジメントがある
という考え方。
マネジメントを担う人間に対する示唆はもちろんのこと、現代の社会における組織の中でどう振る舞うか、という個人の問題としても捉えられる。
Posted by ブクログ
この本は何度も読み返して頭の中に叩き込むしかないだろうと思う。圧巻。時々、こんな事まで予見、あるいは事実として捕らえているのか・・・と感心して、感心の涙を流すこともあるくらい素晴らしい。
Posted by ブクログ
この本を教科書にした勉強会に参加して、1ヶ月に1章ずつ読み進めていたが、細切れ過ぎてあまり深く読めていなかった。
このたび、5日間の出張に携行してやっと読み切ることができた。
企業の目的とは、利潤追求ではなく、「顧客の創造」であるというところに感銘を受けた。
Posted by ブクログ
ドラッカー名著シリーズ、氏が63歳のときのマネジメント集大成!
上中下巻と、上巻だけでも400頁強とかなりのボリュームですが、読み応えがあって、40年近くも前に書かれたとは思えない文章には、いつも新たな気付きをもらえます。ではマネジメントって一体何?数100?はあったと思われる表現の中から、今回腹落ち感があったのは、次のフレーズ。
「われわれの次の世代の課題は、個人、コミュニティ、社会のために組織を役立たせることである。それがマネジメントの役割である。」今、本当に必要なことは、マネジメントという原則に立ち返ることなのではないでしょうか。
Posted by ブクログ
マネジメント 課題・責任・実践
の上巻。
上巻は第Ⅰ部、マネジメントの役割について。
マネジメントの役割とは
1.自らの組織に特有の目的とミッションを果たす。
2.仕事を生産的なものとし、働く者に成果をあげさせる。
3.自らが社会に与えるインパクトを処理するとともに、社会的な貢献を行う。
この3つについて、企業および公共サービス機関での
適用について論じている。
具体的な方法についての言及は少なく、
マネジメントに必要とされることを中心に書いてある。
読む人の仕事や立場によって、よくわかる部分、よくわからない部分、
役に立つ部分、すぐには役に立たない部分が違うと思う。
しかしながら、本書の内容は
組織に属する人全てに必要な知識、実践すべき活動であると思う。
顧客は誰か、事業は何か、自らの仕事は生産的か・・・
自らに、また自らの属する組織に問い続けるべき課題の提言が数多い。
Posted by ブクログ
前書きで専制に対抗するものとしてマネジメントを位置づけるあたりからして気合が違う。1970年代前半という時代背景もあろうが。マネジメントの技術よりも、何をなすべきかを中心に置くとも。「組織の構造は戦略に従う」。
全体的にきわめて明晰な書きぶりで、内容も説得力に富む。箴言の連発。
ある意味、オーソドックスというか当たり前に感じるところも。それも、いかにドラッカーの言説に後の世代が影響を受けているかの現われかも。
今後の課題として予想されている、イノベーションのマネジメントや、知識労働者のマネジメントは今もって課題だ。生産性の測定が大事と言っても、マクロ指標ではいまだ生産性は残余概念でしかない。さらにイノベーションに関しては、この本以後の目ぼしいイノベーションであるITでは、大きな部分がガレージから興ったことを考えると、イノベーションに関してはマネジメントの旗色は悪いか。
顧客あっての企業。よってマーケティングが重要。販売とマーケティングは違う。販売を不要にするのがマーケ。プラス、イノベーションが第二の企業家的機能。
事業の目的とミッションについての明確な定義→目標→実行
「われわれの事業は何か」の問いは、しばしばマネジメント間での根本的なことでの考えの違いを明るみに出す。だからこそミッションの問いかけは大事。
「われわれの事業は何になるか」は、別個の問いとしてある。イノベーションの領分。そのためには新規分野だけでなく、既存の事業の廃棄も必要。
目標は複数あるべき。目標間のトレードオフを意識する。短期と長期など。
戦略計画。予測でもなければ、未来の意思決定を計画することでもない。明日のために現在の意思決定を行うことである。
企業内サービス部門(俺らか!)も公的サービス機関と同じく、顧客から得る利益ではなく、予算からコストを賄っている。これらの抱える最大の問題は効率性ではない。予算から支払を受けるために適切な方向づけがされないことに問題がある。おのれの事業を定義して成果志向にマネジメントしなければならない。
→ドラッカーによる問題点の指摘はもっとも。しかし、解決策のほうは、成功している公的サービス機関の例を挙げたりするが、企業編での切れ味に比べるとどうにもボンヤリしている。
公的サービス機関においては非生産的な仕事をやめることが、企業に比べてはるかに難しい。それだけ意識的にやらないといけない。
公的サービス機関の種類&マネジメント手法
1.自然独占・・・民間にやらせて規制の下に置くのがベター。電力などか。
→ドラッカーは企業内研究所をこの自然独占にグルーピングしているが、2番目の類型の方が当てはまりそう。複数組織による競争が有効。アメリカの宇宙開発は意図してかどうかは知らぬが、この時代にはまだ複数競争の形になっていた気がする。
2.予算から支払を受けて事業を行う公的サービス機関(学校、病院)・・・複数のサービス機関による競争が有効。
消費財のマーケティングを事業と定義している会社の事例が興味深い。本社にマーケティング支援専門部隊がいるが、それを使うかどうかは事業部の裁量。外部リソースを使っても、自前で抱え込んでも良い。各部の業績と、内外のマーケティング専門化利用状況とには相関を見出せないそう。
3.伝統的な政府活動(司法、国防)・・・独立した機関による監査
仕事は客観的なものであって、物と同じアプローチで対処できる。しかし、働くのは人間であり、仕事の論理とはことなる労働の力学がある。
アメとムチは機能しなくなった。働く人間に仕事への責任を持たせること。
→日本企業褒め、しかし労働力の移動が困難なのは欠点だと。ラインでの流れ作業の困難を指摘し、セル生産を思わせる箇所も。
社会的責任も主体的にやらないと痛い目にあうと。しかしできもしない責任を取ろうとするのはまずい。
規制について、抜け駆けの防止として、企業にとってもありがたいものだと。
Posted by ブクログ
エッセンシャル版と違い、3冊の分かれているものの1冊目。マネジメントの焦点は成果にあるべきで、何をやるかにあるべき。事業の目的は何かが究極的に大切である。仕事を生産的なものとして、ヒトに成果を上げさせるようにするのがマネジメントである。これは、企業に留まらず、公的機関も同様である。
Posted by ブクログ
マネジメントとは何か。
マネジメントは組織のための機関である。組織がなければマネジメントはありえない。その組織は社会のための機関である。機関とは何を行うかによって定義されるものではない。何を貢献するかによって定義される。
マネジメントには3つのポイントがある。
自らの組織に特有の目的とミッションを果たす
仕事を生産的なものとし、働く人達に成果をあげさせる。
仕事が社会に与えるインパクトを処理するとともに、社会的な貢献を与える。
大事な事は
顧客は誰か
顧客にとっての価値は何かを常に考えること。
戦略計画の重要性についても触れている。
戦略計画は予測ではない。予測は可能性の範囲内、戦略は可能性を変えること。
昨日を廃棄し何をいつ行うか、それが戦略計画である。
20110604