あらすじ
昭和38年、松坂熊吾は会社の金を横領され金策に奔走していた。大阪中古車センターのオープンにこぎ着けるのだが、別れたはずの女との関係を復活させてしまう。それは房江の知るところとなり、彼女は烈しく憤り、深く傷つく。伸仁は熊吾と距離を置き、老犬ムクは車にはねられて死ぬ。房江はある決意を胸に秘め城崎へと向かった……。宿運の軸は茫洋たる暗闇へと大きく急速に傾斜していく。
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Posted by ブクログ
何とも言えぬ。何をしてるのやら。
時代のせいにして、運のせいにして。
偶然のせいにして。
何に出会うか、何が起こるかは、時代や偶然、周りの環境、出会う人々、自分の特質により大きく変わるが、最終的に何を選ぶのかは自分の意思。
腋の甘さ。
房江回復と自分の本質の出現。落ちていく熊吾。
未だ許してもらえると思っていた熊吾のアホさ加減。
最後のシーンで骨身に沁みたようだが、果たして次の最終巻ではどうなるのか。。
伸仁はどうこの事態を捉えたのか。その内面の動きは読み取れず。
どこに向かうのか、どこに辿り着くのか。今また、混沌に放り出された感覚。
Posted by ブクログ
老いらくの恋ではなかったのか。
一時の気の迷いで家族と距離を置かれてしまう、67歳松坂熊吾。
それはそれで切ないなあ。
仕事も、他人の世話を焼いているうちはいいのだが、自分の商売となるといつも足元をすくわれて左前になってしまう。
愚かだと言えば愚かだ。
毎度同じ過ちを繰り返す。
それが性分だとしても、学習しなさすぎる。
ただ、この時代の男として松坂熊吾が卓越しているのは、家族の危機には必ずその場に立ち会っていることだ。
身体が弱くて何故か怪我しがちな伸仁の、命にかかわるとき。
学校で伸仁が教師に理不尽な目にあわされていた時。
熊吾は頼れる父としてその場に居合わせた。
今回は房江。自らが蒔いた種とはいえ、房江が酔っ払って線路で動けなくなった顚末、城崎で死のうとした結果、自らの力で生きていこうと多幸ホテルで働き帰途に就く姿を、熊吾はしっかりと目を逸らさずに見届けた。
これができない男に限って「いざという時に出ていけばいい」なんてうそぶくけれども、常日頃を見ようとしない人が、一体いつ「いざ」がわかるの?
熊吾は仕事で忙しくしていても、女遊びをしていても、常に家族のことはちゃんと見ていた。
けれど、仕事は逆にいつも抜けてるんだなあ。
「こいつに任せておけばいい」と思うとチェックが甘くなる。
とすると、熊吾にとって一番大切なのはやっぱり家族であって、だとするとこの展開は切ないのぉ。
自業自得だけれど。
Posted by ブクログ
関西中古車事業連合会を再興し板金塗装会社を東尾に売り渡して大阪中古車センターの商売に専念しようとしたが、東尾の商売の失敗による失踪でまたもや窮地に立たされる熊吾。
さらに森井博美との愛人関係を断ち切れぬまま房子にばれてしまい、自暴自棄になった房子は自殺未遂を図る。
これまで幾多の幸不幸、喜び悲しみが繰り広げられてきたが第八巻にして最悪の展開に。しかしそんな中でも伸仁はしっかり自我を確立したくましく成長し、房江は本来の自分を取り戻す。熊吾は反省しながらも相変わらず自分の生き方を貫く。
いよいよ最終巻を迎える物語。明るい結末を願いたい。