【感想・ネタバレ】満月の道―流転の海 第七部―(新潮文庫)のレビュー

あらすじ

昭和三十六年。東京五輪へ向け復興は進み、大阪行きの集団就職列車が満員となった時代。六十五歳を目前にした熊吾は中古車販売業を軌道に乗せ、往時の覇気が甦りつつある。息子・伸仁は絵画を愛する少年に成長し、妻・房江はアルコールから抜け出せずにいたが、確かに一家に未来は拓きかけていた。熊吾が博美と再会するまでは。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

前巻から、打って変わっての空気感。
人生何が起こるかわからない。変転、流転は、常のものか。
その中でも、変わらぬ己の特質がもたらす陥穽。

行というものの大切さなども、物語の伏流の中で描かれる。
銀行の空気や、ふとした瞬間に熊吾が思い出す、戦死した戦友たちへの申し訳ないという思いなど、今の時代に失われた日本の文化や教えというかなんというか、知恵?なのかを、うっすらと、されどさり気なく、伝えてくれる。

伸仁の成長と、熊吾の衰え、そして暗雲立ち込める展開。
最晩年にでも、破滅的な転落が起こりそうな予感。

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2023年10月01日

Posted by ブクログ

ネタバレ

何度同じ失敗をするのか、熊吾は。
太っ腹で人情家でもあるけれど、最後の詰めがいつも甘い。
若いうちはまだやり直しもできた。
だけどもう65歳。
体力も、残り時間も、そんなに残されていないのだ。

伸仁のために生きる、と決めていたんじゃないの?
なのに、糖尿病についても、すぐ油断する。

房江もそうだ。
通信教育でペン字を最後まで習いきったのはえらいと思うが、家族に隠れて飲む酒がどうしてもやめられない。
あんなに伸仁が嫌がって、酒をやめてほしがっているのを知っているのに。

だけど、房江は麻衣子と交流を深めることで、新しい道が開けていくような気がする。
心を開いて話ができる人がいるというのは、いいことだ。
この先房江は城崎で暮らすつもりなのだろうか?

伸仁が毎日練習していた柔道の目的が判明。
思春期で、母親に対してぶっきらぼうではあるものの、伸仁は母に優しいと思う。

森井博美は西条あけみだったころと別人のようである。
もっと毅然とした生き様を見せていたと思うのだけど、熊吾にすがるしかない今は情けない。
もし今の姿を伸仁に見られたら、ちゃんと挨拶できる?

熊吾は会社を、家庭を守り切ることができるのか?

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2021年09月02日

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