あらすじ
昭和27年、大阪へ戻った松坂熊吾一家は、雀荘や中華料理店を始めとして、次々と事業を興していく。しかし義母の失踪に妻房江の心労はつのり、洞爺丸台風の一撃で大損害を被った熊吾も糖尿病の宣告を受ける。そしてたくましく育つ無邪気な小学生伸仁にも、時代の荒波は襲いかかるのだった……。復興期の世情に翻弄される人々の涙と歓びがほとばしる、壮大な人間ドラマ第三部。
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Posted by ブクログ
第三部に入っても、面白さの勢いは止まらない。
なんでだろうなあ。
松坂熊吾の波瀾万丈の人生は確かにおもしろいけれど、ではジェットコースター小説なのかというと、そういうわけでもない。
プロットに落とし込まれた伏線が…というのでもない。
松坂熊吾という人物は確かにおもしろい人物だけれど、キャラクター小説ではない。
短気ゆえの失敗ばかり繰り返すから、成長物語というわけでもない。
だけど、一度読み始めると、読み止めるのが本当に難しい。
なににそんなに引きつけられるのだろうなあ。
大きなストーリーのうねりに身をまかせながら、熊吾の生き様を眺めているのが心地よい。
第一部や第二部に比べて、熊吾の暴力が格段に減ったのは嬉しい。
そして、病弱だった伸仁が、いや今でも弱いけど、意外とはしっこいやんちゃ坊主に育ったのも楽しい。
熊吾は小学校低学年の伸仁に麻雀を教えたり、競馬を教えたり、キャバレーに連れていったりと、親としては相当破天荒なことをしてのけるけれど、嘘をついたり弱いものをいじめたりなどをさせないことは徹底している。
熊吾60歳。
南宇和から大阪に戻ってきて始めた商売は、大成功したと思えば大打撃を受け、結局巻の最後は中華料理屋と雀荘ときんつば屋と立ち食いカレーうどんやの親父。
少し舞台が小さくなったような気がするが、年のせいか?
それともこれからまた巻き返すのか?
小説を読む楽しみを、存分に味わえた一冊。
子どもの頃の読書はいつもこんな感じだったよなあ。