あらすじ
材木商伊勢屋の主人・忠兵衛からの「世話をしたい」という度重なる申し出に、心揺れる深川芸者のお文。一方、恋人の伊三次は、本業の髪結いの傍ら同心の小者として、頻発する幼女殺しに忙殺される日々。2人の心の隙間は広がってゆく(表題作)。そんな時、小間物問屋の大旦那・惣兵衛殺しの嫌疑が伊三次にかかり……(「菜の花の戦ぐ岸辺」)。他、お文の女中・おみつが行方不明になる「摩利支天横丁の月」など波瀾にとむ全5篇。人の痛みを描く人気捕物帖シリーズ第2弾!
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Posted by ブクログ
2017/11/23
そりゃダメだよ、不破様。謝って。
いや時代的にも謝らんでもいいけどめっちゃ申し訳なさそうに反省してて。
カブキブでも思ったけど信頼ゆえの仲違いって萌える…
期せずして続いた。
お金ないのって侘しいよね~荒むよね~わかりすぎる。
でも伊佐治のように矜恃を持って私もがんばろう。
Posted by ブクログ
シリーズ二冊目にして濃密な巻でした。
表題作『紫紺のつぱめ』では早くもお文との別れ?と思ったし、『ひで』は惚れた女のために板前から大工になり体調を崩して…という哀れと思える話でした。『菜の花の戦ぐ岸辺』では伊三次がご隠居殺しの下手人としてひっぱられるという衝撃的な展開でハラハラしました。その事件で自分を信じてくれなかった同心不破のだんなと決別し、彼の手先もやめた伊三次でしたが、不破の妻女いなみの仇討事件に巻き込まれてしまう『鳥瞰図』。そしてお文の女中おみつのかどわかし事件『摩利支天横丁の月』。
次から次へと事が起こり、読者を引っ張っていく力はすごいです。伊三次は結局不破の元に戻ることになるのだろうなぁと思いますが、伊三次の意地も分かるし、不破には不破の言い分があるだろうし、どういう風に落ち着くのでしょう。もしかして『摩利支天~』の件でなんとなく戻っていることになっている、ということはあるのでしょうか(苦笑)。
それにしても宇江佐さんは人間の喜怒哀楽、特に“哀”の部分を上手に表現する作家さんだと思いました。
忙しい
心を寄せるお文との仲違い、人殺しに間違えられそうになる、幼なじみの急死、同心の妻の敵討ちを止め、下っ引の恋の取り持ちをし、なんて忙しい伊三次….….読んでいる方も、忙しい。
Posted by ブクログ
目次
・紫紺のつばめ
・ひで
・菜の花の戦(そよ)ぐ岸辺
・鳥瞰図
・摩利支天横丁の月
作者によると、このシリーズの狙いは「変化」にあるのだそうだ。
なるほどこの巻だけでも、伊三次はお文と別れ、幼馴染みに先立たれ、同心の小者であることをやめる。
誰かが悪いというわけではない。
それぞれが、それぞれの立場で考え、行動した結果、気持ちがすれ違ってしまうのだ。
読者からするとどちらの気持ちも分かるので、余計にもどかしい。
けれど、シリーズ名が「捕物余話」と言っているのだから、まあ、そのうち戻るのだろう。
人の気持ちは簡単に変われないのならば、ゆっくりじっくり捻じれが解けるのを待つことにしよう。
Posted by ブクログ
伊三次が、行き違いで文吉と仲違いをする。
そんな折、幼い女の子のいたずら目的のかどわかしが続いた。伊勢忠の娘の手を引き桜見物をして居た文吉の所の女中おみちの気がそれたところ、かどわかされた。
事件は直ぐに解決し犯人も捕らえられた。
長く修行した板前の仕事を、大工にならなきゃ娘はやれぬ、と言う一言で幼馴染が慣れない大工の修行も半ば、死んでしまう。
糸惣の隠居した旦那惣兵衛が殺された。
息をひきとる時に伊三次の名前を言ったと言う女中の証言で、殺人犯として捕らえられる。
最後まで信じ庇ってくれなかったことに腹を立てて、不破の小者をやめた。
ヤクザにならずに済んだ恩義がある不破の女房の、仇討ち未遂をとめることに。
だが、文吉の女中おみちのかどわかし事件にあい、捜査に加わる。。。。
次々と事件が起こるが、ホロリとくる人情の機微がなんとも素敵な読みごこち。
Posted by ブクログ
2年以上前に読んだシリーズの続き。
他の芸者と衣装を比べられてかっとなり、
思わず援助の申し込みを受けてしまう文吉姐さん。
まだまだ若いね。
人殺しの疑いがかかった伊三次のために文吉が必死になり、
最後にはよりを戻すあたりはありがちかもしれないが、
伊三次が小物をやめる話になるとは思わなかった。
しっとりとした大人の江戸物なのは相変わらずで良かった。
Posted by ブクログ
伊三次とお文の恋愛模様と伊三次と不破の信頼関係が中核をなす。
捕物としての要素は『幻の声』より薄らいでいるが、捕物自体が江戸時代という背景からそうそうあるものではないし、岡引以下の手下なので、そう前面にでるはずもないので、丁度いい感じ。お文との別れ、手下の辞退など色々な要素があって面白い。
Posted by ブクログ
髪結い伊三次シリーズ、その2。
こつこつと貯めてきた金を盗られ、力を落としていた伊三次に、思わぬ殺しの疑いが。
詮議が甘くならぬよう、伊三次を同僚の緑川に委ねた不破。
嫌疑は晴れたものの傷ついた信頼は戻らず、伊三次は不破の手下として働くことも、髪結い仕事も断ってしまう。
また一方、芸は一流ながら、財力のある旦那がいないために芸者として見劣りしていると伊勢屋に看破され、傷つく文吉。
下心なしに世話をするという伊勢屋の言葉に、援助を受ける。
それを知った伊三次は、お文にも裏切られたと思い、別れを告げる…
本作は、傷ついた信頼と裏切り、自らがまねいた孤独に苛まれる伊三次とお文。
ううう〜〜、早く次作を読むしかない!