小林登志子のレビュー一覧
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最古の文明にしてその後の人類史の縮図となっているシュメル文明。シュメールではなくシュメルなのは、天皇=「すめらみこと」がシュメルのみこと、だとか、高天原はバビロニアにあったといった俗説が戦時中に横行し、学者がわざと音引きを入れたためらしく、アッカド語の原音にも正しくはシュメルだからとのこと。
シュメル文明はティグリス・ユーフラテスの賜物だが、当時から鉱物どころか石も木材もなく、泥と灌漑農業ばかりの世界。不毛だからこそ農業が必須で、家畜も取り入れた高度な文明だった。泥は無限にあるため粘土板はいくらでもあり、パピルスや羊皮紙と違って戦火で焼けても保存されるため、大量に記録が残っている点が興味深い。シュメル人自体は語族/民族も謎だが、セム語系のアッカド人とは古くから共存していた模様。
紀元前5000年ほどから様々な文化が現れ、前2900年で王朝時代が始まる。それからは戦争と交易の世界史定番のパターンが繰り返される。シュメル文明はギリシアのように都市国家同士の勢力争いと、グティ人、エラム人、アラム人など、セム語族の外敵との闘いが歴史の流れとなり、最終的には塩害による生産性への大打撃が決定的な模様。記録の必要性から文字が生まれたのは直感的にも想起させるが、文字の前にトークンと呼ばれる粘土の絵文字から始まったのが印象的だった。楔形文字も実際に葦のペンを見ると書き方が想像できて面白い。楔形文字は漢字のように表意文字で、古代オリエントで長く使われた。ただ漢字は五万もあり、楔形文字は600で済んだようだ。表音文字がネイティブな欧米の学者に対して、日本人の学者が貢献できた点も納得いく。漢字からカタカナも同様で、表語文字→表音文字→単音文字というのが万国共通のようだ。
同害復讐法のハムラビ法典が有名だが、もっと古いウル・ナンム法典では神明裁判や慰謝料などが制定されていたのが興味深い。 アッカド・サルゴン王の常備軍は5400人だったという。その他、戦争の記録から当時の武力衝突の規模感がイメージできる。
まさに法の起源、文字の起源、外交の起源…あらゆる文明の起源がここにあり、旧約聖書への影響も膨大で今なおシュメル文明は生きていると実感した。諺もたくさんあって当時の生活をリアルに感じさせる、非常に魅力的な文明。学園ものの文学まですでにあったとは驚きだ。 -
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時は今から5000年前、場所はメソポタミア。ここにこんなにも豊かな都市国家があるなんて、この本を読むまで知らなかった。
麦が豊かに実る大地で家族もあり、文字の読み書きもしていた。知的、精神的レベルは現代人と何ら変わらないだろう。
もちろん今の時代と比較すると不便だとは思う。が、そこには楽園を思わせる雰囲気がある。気候もさぞ暮らしに適していたのではなかろうか。
これが、1000年前ではなく、5000年前なんだ。
因みに日本でざっくり1000年前というと、源氏物語の時代。5000年前と言うと…
5000年前のメソポタミアの地は人類のパラダイスというと言い過ぎかもしれないが、憧れてしまう。
わずかな時間ではあったが、古代オリエントの世界を堪能できた。楽しいひとときだ。
ところで、レバノンの国旗にもなっているレバノン杉。実は高さ30メートル、幹の直径2メートル以上ある大木。神聖、不滅の象徴のようだ。てっきり杉の木だと思っていたが、実はマツ科の木らしい。 -
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文明歴史の最初の主役、シュメル。
彼らの生活が鮮やかに甦っていた。シュメルといえば、メソポタミア文明の創立者であり、ウルク、ウルの都市文明で栄華を極めていた知識はあった。アニメでもギルガメッシュやイシュタルが取り上げられたりしている。
ウルク、ウルだけが、この文明の主役ではなく、ラガシュ、ニップル、ウンマ等、多くの都市が王を中心に攻防を続けていた。シュメルは言語民族としては不明だが、サルゴンのセム語族アッカドとは関係が良好で、グティ人にアッカドが滅ぼされた後、ウル第三王朝をたてている。その後、エラムの進行でシュメルとしては歴史から消えていくが、この本は古バビロニア、新アッシリアまで網羅している。楔形文字、最古のハンコ、円筒印章にも多くのページをさいていて最後まで飽きさせない。 -
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小林登志子氏による、古代メソポタミアの歴史解説。冒頭、高校生や一般向け、と述べているが、中々どうして細かいところまで触れている(と思う)。同じ筆者の古代オリエント全史と重複するところが多いが、メソポタミア(正しくはバビロニアとアッシリア、今のアラビア半島北部)を舞台に勃興した各文明と民族を紹介している。ローマ帝国の支配以降、土地に根付いた文化/民族はなくなり、イスラムの支配下へと食い込まれていくが、諸行無常の感がある。
読み物としては、氏が知っていることを一生懸命伝えようとしているのが伝わってくるが、伝えよう感が強すぎるきらいもある。しかし、逆に、着飾らずに知っていること、今わかっていることを伝えようという氏の情熱は文章から強く伝わってくる。 知識を得ると同時に、氏の人柄を感じさせる書だと思う。 -
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現在、シュメール文化研究の第一人者(と言っていいと思う)、小林登志子氏による、古代オリエントの歴史解説。歴史を丹念に追っている一方、語り口が読みやすく、また最新の研究の観点から、様々な学説に対しての解説も十分揃っており、入門編としては十分だと思う。
氏も書かれているが、我々日本人がオリエントについて知っているのは、大半がエジプトとギリシャの歴史書に基づくものである。四大文明発祥の地なのに、斯くも知識が浅い。
ペルシア戦争など、ヘロドトスの歴史に基づくギリシャ史観によると悪の帝国の侵略となってしまうが、ペルシャ側からすれば辺境の反乱を誘発する外国への懲罰的示威行為となる。事実、ペルシャ帝国にとってはペルシア戦争は局地戦に過ぎず、その後のペロポネソス戦争でも大きな影響力を有している。
中々知ることの少ない古代オリエントについて学べると同時に、歴史の多面的な見方の重要性を再確認させてくれる名著。