小林登志子のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
最古の文明にしてその後の人類史の縮図となっているシュメル文明。シュメールではなくシュメルなのは、天皇=「すめらみこと」がシュメルのみこと、だとか、高天原はバビロニアにあったといった俗説が戦時中に横行し、学者がわざと音引きを入れたためらしく、アッカド語の原音にも正しくはシュメルだからとのこと。
シュメル文明はティグリス・ユーフラテスの賜物だが、当時から鉱物どころか石も木材もなく、泥と灌漑農業ばかりの世界。不毛だからこそ農業が必須で、家畜も取り入れた高度な文明だった。泥は無限にあるため粘土板はいくらでもあり、パピルスや羊皮紙と違って戦火で焼けても保存されるため、大量に記録が残っている点が興味深い。 -
Posted by ブクログ
時は今から5000年前、場所はメソポタミア。ここにこんなにも豊かな都市国家があるなんて、この本を読むまで知らなかった。
麦が豊かに実る大地で家族もあり、文字の読み書きもしていた。知的、精神的レベルは現代人と何ら変わらないだろう。
もちろん今の時代と比較すると不便だとは思う。が、そこには楽園を思わせる雰囲気がある。気候もさぞ暮らしに適していたのではなかろうか。
これが、1000年前ではなく、5000年前なんだ。
因みに日本でざっくり1000年前というと、源氏物語の時代。5000年前と言うと…
5000年前のメソポタミアの地は人類のパラダイスというと言い過ぎかもしれないが、憧れてしまう。
わずかな -
Posted by ブクログ
文明歴史の最初の主役、シュメル。
彼らの生活が鮮やかに甦っていた。シュメルといえば、メソポタミア文明の創立者であり、ウルク、ウルの都市文明で栄華を極めていた知識はあった。アニメでもギルガメッシュやイシュタルが取り上げられたりしている。
ウルク、ウルだけが、この文明の主役ではなく、ラガシュ、ニップル、ウンマ等、多くの都市が王を中心に攻防を続けていた。シュメルは言語民族としては不明だが、サルゴンのセム語族アッカドとは関係が良好で、グティ人にアッカドが滅ぼされた後、ウル第三王朝をたてている。その後、エラムの進行でシュメルとしては歴史から消えていくが、この本は古バビロニア、新アッシリアまで網羅している -
Posted by ブクログ
小林登志子氏による、古代メソポタミアの歴史解説。冒頭、高校生や一般向け、と述べているが、中々どうして細かいところまで触れている(と思う)。同じ筆者の古代オリエント全史と重複するところが多いが、メソポタミア(正しくはバビロニアとアッシリア、今のアラビア半島北部)を舞台に勃興した各文明と民族を紹介している。ローマ帝国の支配以降、土地に根付いた文化/民族はなくなり、イスラムの支配下へと食い込まれていくが、諸行無常の感がある。
読み物としては、氏が知っていることを一生懸命伝えようとしているのが伝わってくるが、伝えよう感が強すぎるきらいもある。しかし、逆に、着飾らずに知っていること、今わかっていること -
Posted by ブクログ
現在、シュメール文化研究の第一人者(と言っていいと思う)、小林登志子氏による、古代オリエントの歴史解説。歴史を丹念に追っている一方、語り口が読みやすく、また最新の研究の観点から、様々な学説に対しての解説も十分揃っており、入門編としては十分だと思う。
氏も書かれているが、我々日本人がオリエントについて知っているのは、大半がエジプトとギリシャの歴史書に基づくものである。四大文明発祥の地なのに、斯くも知識が浅い。
ペルシア戦争など、ヘロドトスの歴史に基づくギリシャ史観によると悪の帝国の侵略となってしまうが、ペルシャ側からすれば辺境の反乱を誘発する外国への懲罰的示威行為となる。事実、ペルシャ帝国に -
Posted by ブクログ
相関図を別に書き出さないと記憶に残らないほど多くのオリエントの神々がでてくる。
印象に残ったのは復活するドゥムジ神がイエスの話に影響を与えたこと。復活するドゥムジを嫌った旧約聖書とは違い、戦争で夫や息子を亡くした多くの女性が信じたキリストの新約聖書に生き返りを綴ったことは普及に意味を残したのでは。
さらにウトゥ神などの太陽神、ナンナなどの月神、エレシュギガルやギルガメッシュなどの冥界神。これは日本のアマテラス、スサノウ、ツキヨミの三柱に似てないか。一説には彫りの深い縄文人はメソポタミアから流れ着いたと。彼らがオリエントの神々を日本に当てはめたのかもしれない。
世界中の神々は相互に影響しあって変 -
Posted by ブクログ
今もなお有名なものとして「ギルガメッシュ叙事詩」や「大洪水伝説」があるが,シュメル神話は他にもたくさんあり,この時代から既にここまでの物語の豊穣を成していたとなると驚きである。
本書はシュメル神話の研究と解説の本であり,ギルガメッシュ叙事詩のみならず幅広くシュメルを知りたい人にちょうどいい。
主な神話:
「エンキ神とニンマフ女神」ー創造神話
「大洪水伝説」
「エンキ神とニンフルサグ女神」ー楽園神話
「イナンナ女神とエンキ神」ーメの争奪
「エンリル神とニンリル女神」ー豊穣儀礼
「イナンナ女神の冥界下り」
「エンメルカルとアラッタの君主」
「ルガルバンダ叙事詩」
「ギルガメッシュ叙事詩」ー古代オ