小林登志子のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
相関図を別に書き出さないと記憶に残らないほど多くのオリエントの神々がでてくる。
印象に残ったのは復活するドゥムジ神がイエスの話に影響を与えたこと。復活するドゥムジを嫌った旧約聖書とは違い、戦争で夫や息子を亡くした多くの女性が信じたキリストの新約聖書に生き返りを綴ったことは普及に意味を残したのでは。
さらにウトゥ神などの太陽神、ナンナなどの月神、エレシュギガルやギルガメッシュなどの冥界神。これは日本のアマテラス、スサノウ、ツキヨミの三柱に似てないか。一説には彫りの深い縄文人はメソポタミアから流れ着いたと。彼らがオリエントの神々を日本に当てはめたのかもしれない。
世界中の神々は相互に影響しあって変化をしてきたようだ。 -
Posted by ブクログ
今もなお有名なものとして「ギルガメッシュ叙事詩」や「大洪水伝説」があるが,シュメル神話は他にもたくさんあり,この時代から既にここまでの物語の豊穣を成していたとなると驚きである。
本書はシュメル神話の研究と解説の本であり,ギルガメッシュ叙事詩のみならず幅広くシュメルを知りたい人にちょうどいい。
主な神話:
「エンキ神とニンマフ女神」ー創造神話
「大洪水伝説」
「エンキ神とニンフルサグ女神」ー楽園神話
「イナンナ女神とエンキ神」ーメの争奪
「エンリル神とニンリル女神」ー豊穣儀礼
「イナンナ女神の冥界下り」
「エンメルカルとアラッタの君主」
「ルガルバンダ叙事詩」
「ギルガメッシュ叙事詩」ー古代オリエント最古の文学作品
「ルガル神話」
「シュメルとウルの滅亡哀歌」 -
Posted by ブクログ
旧約聖書の源流にもなっているシュメル神話についての本。
例えば「ノアの方舟」では大洪水が起こるが、エルサレム周辺で大洪水があったとは考えにくい。
これは、チグリス川・ユーフラテス川周辺のメソポタミア文明の地域で頻繁に起こった洪水がシュメル神話に含まれ、それが西のエルサレム方面に伝わり旧約聖書に影響を与えたという。
「ある人間が神からメッセージを受け取って船を作り、それにより洪水から生き残った」という部分まで一致しているらしい。
シュメル神話はこの大洪水の物語を境に、それ以前が伝説的、以降が史実的なものと捉えられるそうだ。
また、人類初の文字である楔型文字は粘土板に書かれ、土は非常に重要なものであった。
それもあってかシュメル神話では人間は土から作られるが、旧約聖書のアダムとイブも土から作られている。
では、なぜシュメルの神々は人間を作ったかというと「神の代わりに働かせるため」だという。
一神教のキユダヤ教やキリスト教と異なり、多神教のシュメルの神々は、ギリシアの神々と同様の怠惰さを持っている。
なお、旧約聖書ではエデンが楽園とされるが、メソポタミア文明地域にエディンという地名が実在するらしい。
ただしエディンの意味は「原っぱ、平原」といったところだという。
旧約聖書との関係だけでもこれだけの内容があるが、これはごく一部で、大量の出土品や解読された物語が翻訳され、解説されている。 -
Posted by ブクログ
ネタバレシュメル人の存在を初めて知った。古代を研究する人たちの、人類の歴史を知りたい、という気持ちが伝わってくる熱い本だった。
今から約5千年前、初めての文字や文明だと考えられているシュメル人の歴史が書かれている。ロマンを感じるところとしては、それが人類で初めてだ、ということと、そして発掘されたものの資料から当時の人たちの気持ちを自由に想像することができる点だろう。
古代の絵は、世界史で見たかな、くらいだったけれど、こういうことをしている人です、と解説を受けると、なんだか可愛らしく思えてくる。
コロコロ転がす判子も面白かった。当時の職人たちは、きっとふつうに彫っているだけだと楽しくなくなってきて、だんだん凝っていったんだろう、なんかそれは今に通じるところがあるように思えた。
王朝の栄枯盛衰とかの歴史の部分は、少し難しかった。カタカナの固有名詞の羅列に圧倒されてしまった。でも史料も少ない大昔のことなんだから、それだけを解読するまでにもきっと膨大な手間がかかっているんだろう。
大昔のことを知りたい、私たちがどこから来たのか知りたい、という気持ちは、自分たちのことを覚えていて欲しい、という気持ちとも通じる。
知った私たちも、いずれは消えてしまう。
では、なぜ、なんのために歴史を知っておく必要があるのか。
知ってしまったらそれを役立てなければいけない、と思うのが人間の性だと思う。知らないよりも、知っている人はそこから教訓を得ようとするものである。歴史そのものよりも、その事実を私は知っている、ということが大切なのかもしれない。 -
Posted by ブクログ
チグリス川とユーフラテス川に挟まれたメソポタミアの南部。
世界最古の文明の地は歴史の教科書でもおなじみだ。
その文明に一大変革を与えたのがシュメルである。本書は発掘
された遺跡や遺物からシュメルの文化・社会制度・宗教などを
読み解き、解説している。
時代を遡ること5000年から3000年前に文字を持ち、通商を行い、
法典を作り、戦争をして、奴隷を持ち、神々を崇めて、学校では
読み書きのできる書記を育てていたんだよな。
しかも、日本の判子に通じる円筒印章まで作成している。
この時代に既にビールが飲まれていたことも興味深かったが、
何故、これほど時代が経っても情報が残っているかだった。
粘土板なんだよね。この時代に紙はない。情報を記すのは粘土板
のみ。それが乾燥した土地であったことや、火災にあっても紙の
ように焼失しなかったことが大きい。
持ち歩いたりするには不便だが、保存という観点で考えたのなら
粘土板は紙よりも優れているような気になった。
ただし、保管するには場所を必要とするけれどね。
古代文明は教科書で習ったことくらいしか知らないし、ともすると
オカルトネタになってしまうのだが、本書は出土品の解説が多く、
「へぇ、こんな文化を持った人たちがいたのか」と面白く読めた。
尚、文字を書くのに使用されたのは葦だそうだが、メソポタミアの
葦は日本の葦と違い太くて丈夫なのだそうだ。その葦のペンの
使い方のコラムが楽しかった。私も書いてみたいけど、葦が手に
入らないよね。
イラク戦争の際に、貴重な出土品が博物館から盗まれてしまった
のは哀しい。戻って来たものもあるようだが、破損した部分もあった
とか。
遥か昔ではあっても、歴史を刻んだ資料は盗んだり壊したりしない
で欲しいな。 -
Posted by ブクログ
書籍だと、大抵バビロニアに抱き合わせで書かれるシュメールを主眼に据えた本。
(バビロニア関係の記述が皆無ではなく、全体の3,4割くらいにバビロニア関係の記述が見えるけれど、まあ止む無いところはある)
シュメールというのは、文字や農耕技術、車輪などを持ってメソポタミア南部に忽然と現れた文明で、現代に残る技術などの源泉を辿ると、その起源がシュメールへと行きつくことが多い。
シュメール人は民族的な出自が不明で、彼らが果たしてどこからやってきたのか、そしてなぜこれほどまでに多数の高度な技術を他に先駆けて有して歴史上に現れてこれたのか、謎が多い。
通史ではなく、各章においてテーマを定め、それについてシュメールの実際はどうであったのか、粘土板に残るシュメル語の言葉などから解説をしていく。
シュメール人というのは、驚くほど高度な社会システムを持っていた事がわかる。
習俗の中心に宗教があったが、人々は大変に現実的で、直裁に言えば現世的な愉しみ等を理解し、追求してきた人々であったのだなぁ、と感じる。彼らの世界観の中には、例えば「来世での救済」のようなものはない。死後の世界、というのが切り離されて存在していない。神も人も、あくまでも現世的なものとして存在している。
随所に紹介される、シュメール人の書き残したエピソードなどが、非常に興味深く、謎の多い彼らを少し身近に感じさせてくれる。
記述は平易で、テーマに沿った内容を理解し、シュメール人の生活や習俗がどうであったのか、その一端を楽しむくらいなら基礎知識は不要。ただ、メソポタミア史がある程度頭に入っていないと、流れがちょっと理解しにくい面がある。バビロニア史の入門書を手に取ってから、シュメールに興味がある人が手に取ると楽しめる本。
---------------------------
ところで、やっぱり解消しないのだけれど、個人的に、なぜシュメール人やバビロニア人に殉死の習慣があったのか、について長年賦に落ちない。
彼らの死観には、独立した死後の世界、というものはなく、冥界というのは現世世界と重なる、地下にある暗い世界と解されていた。人が死ねばそこに平等に行き着く事になるという(日本で言えば黄泉の国に近いが、もっと密接している)。
死後の救済というものはないし、死後の世界で生前のような生活をすることもない。なのに、王の墓地などには習慣的に殉死していた形跡がある。これはなぜなんだろう?
著者はこれを「忠誠の現れ」として、中国の故事を紐解く。
確かに、古代中国では殉死の習慣があり、例えば秦の穆公(前659年ー前621年頃)の時などは、家臣一七七名が殉死したという記述が史記にある。殉死した彼らはれっきとした貴族で秦は頭脳集団を一瞬で失い、秦は一時、国力の衰微を招いた。
古代中国には祖霊崇拝の習俗があり、従って死後の世界もある。仕えた王が没し、その行く先である死後の世界へと供をするべく、殉死を選ぶ、というのは、「忠誠の現れ」として分からなくはない。国力を傾けるくらいに有力な人物が多数、一瞬で殉死する、というのは大なり小なり、そういう死生観があったのだろう、と思う。
しかし、シュメールにはそういうような気配がない。
死後の世界に夢を馳せる事がほとんどなかった彼らが、殉死の習慣があった、というのがよくわからない。ある特定の王に忠誠を誓っていた人がおり、たまたま殉死を選んだ、というのならわからなくはないのだけれど。
シュメールは宗教国家であり、王は神官王であり基本的には神ではない(神格化した王も一部にいるが)。習慣として行われていたのなら多分それは宗教的な理由だと思うんだけれどな~。 -
Posted by ブクログ
[ 内容 ]
五千年前のイラクの地で、当時すでに文字やハンコ、学校、法律などを創り出していた民族がいる。
それが、今までほとんどその実像が明らかにされてこなかったシュメル民族である。
本書は、シュメル文明の遺物を一つ一つ紹介しながら、その歴史や文化を丹念に解説するものである。
人類最古の文明にして現代社会の礎を築いた彼らの知られざる素顔とは―。
多様かつ膨大な記録から、シュメルの人々の息づかいを今に伝える。
[ 目次 ]
序章 むかしイラクは…―メソポタミアの風土
第1章 文字はシュメルに始まる―楔形文字の誕生
第2章 「ウルク出土の大杯」が表す豊饒の風景―努力の賜物
第3章 元祖「はんこ社会」―目で見るシュメル社会
第4章 シュメル版合戦絵巻―都市国家間の戦争
第5章 「母に子を戻す」―「徳政」と法の起源
第6章 「真の王」サルゴン―最古の国際社会
第7章 最古の文学者エンヘドゥアンナ王女―読み書きと学校
第8章 紹介する神―神々の世界
第9章 「バベルの塔」を修復する王―統一国家形成と滅亡
終章 ペンを携帯した王―シュメル文化の継承
[ POP ]
[ おすすめ度 ]
☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
☆☆☆☆☆☆☆ 文章
☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
共感度(空振り三振・一部・参った!)
読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)
[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ] -
Posted by ブクログ
良書。
これまでシュメール(シュメルの方が原音に近い。なぜ長音を含むようになったかについては、本書「はじめに」で解説されています。)文明と言えば、『ドルアーガの塔』のモチーフになっている『ギルガメシュ叙事詩』の印象しかありませんでしたが、本書では、ギルガメシュ叙事詩は洪水伝説の起源の一つとして紹介されている程度で、ごく僅かなページしか割かれていません。
目次にあるように、各章はそれぞれ、風土、楔形文字、農業、はんこ社会、戦争、徳政と法典、国際社会、読み書きと学校、宗教観、統一国家形成と滅亡という内容になっており、おおよそシュメル文明の全般を網羅した解説になっています。中でも第三章は、はんこといっても記念切手のような内容で、図案と解説を読んでいる内に読み終わってしまった感じです。
塩野七生/海の都の物語が楽しめる人なら、本書も同様に楽しめるのではないでしょうか。 -
Posted by ブクログ
前3000年代頃よりチグリス・ユーフラテス川沿いにメソポタミア文明を築いたシュメル人について書かれた本。歴史をかっちり追っていくような作りではなく、史料をもとにして章ごとに特定の人物に注目しながら文化的な側面を見ていく感じで、肩肘張らずに楽しく読めるようになっている。「記録魔」だったというシュメル人たちの書き記した何千年も前の碑文、粘土板などが今でも残っているというのがすごい。大麦の莫大な生産量など、シュメル人の豊かさがよく伝わってくる。
歴史については細かく分からない部分が多いのに、ビールを飲んだりパンを食べたり、薬で治療を試みたり化粧をしたりといった生活の細部をちょいちょいのぞけるのが面白かった。