あらすじ
電子版は本文中の写真を多数カラー写真に差し替えて掲載。
アッシリアは、イスラエルの民を虜囚にし、敵対民族を残酷に処刑したとして、『旧約聖書』では悪役に描かれる。
だがその実像はバビロニアの先進文明に学び、長きにわたって栄えた個性的な国だ。
紀元前2000年に誕生した小さな都市国家が他国に隷従しつつも、シャルマネセル3世、サルゴン2世らの治世に勢力を拡大、世界帝国となるが、急速に衰微し、前609年に瓦解する。
その盛衰を軍事・宗教・交易など多角的に描く。
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Posted by ブクログ
1400年に及ぶアッシリアの歴史を、
豊富な史料と多くの画像、図絵、地図等を添えて、
文化や軍事、交易、それに帝国へ至り滅亡するまでを、
多角的に解説し、解き明かしてゆく。
・カラー口絵4ページ ・はじめに
・アッシリア王名一覧表 ・本書関連略年表
序章 アッシリア学事始め
第一章 「アッシリア」の三角と「ハブル三角」
第二章 アナトリアへおもむいたアッシュル商人
第三章 シャムシ・アダド一世無双
第四章 属国にされたアッシリア王国
第五章 領域国家アッシリア王国への転換
第六章 アッシュル・ナツィルバル二世カルフ市に都す
第七章 強制移住政策を推進したティグラト・ピレセル三世
第八章 センナケリブ、エサルハドン、
およびアッシュル・バニパル三代
終章 アッシリア帝国の滅亡とその後
・あとがき 主要参考文献 ・図版引用文献一覧
・アッシリア史略年表 ・索引
発掘された多くの碑文・石板・粘土板の文書・
印章・壁画等に遺るアッシリアの歴史。
それらの史料から、その歴史の変遷を辿る。
古アッシリア時代の都市国家アッシュル市。
川と地の利による豊かな農業国。加えて重要な鉱物資源。
交易に必要な交通の要衝。活動拠点にカーレムを設け、
交易を行うアッシュル商人たち。商業立国としての姿も。
シュメル・アッカド王朝の支配下だったが、エラム王国の
攻撃でアッカド王朝は滅亡。アッシュルは独立。
王権簒奪者シャムシ・アダド一世の行政と軍事の手腕で、
上メソポタミア王国と成る。が、彼の死後の混乱で崩壊。
バビロンのハンムラビ王によりアッシュル市は属国に。
中アッシリア時代は様々な国の属国となるが、
ミタンニ王国の滅亡から独立を回復、領域国家アッシリア王国に。
中興の祖アッシュル・ウバリト一世やトゥクルティ・ニヌルタ
一世などの手腕により上メソポタミア王国での地を回復し、
更なる軍事侵攻で支配権を拡大する。
だが王の暗殺での混乱により弱体化。再度版図の拡大あれど、
アラム人の侵入や大飢饉で衰退する。
鉄器時代に入った新アッシリア時代はアッシリア帝国の道。
アッシュル・ナツィルバル二世、ティグラト・ピレセル三世、
サルゴン二世などの軍事侵攻と国制強化で版図の拡大。
そしてエジプト全土を占領するまでに。
大規模な文書収集を行ったアッシュル・バニパルの世は、
帝国の最盛期となったが、その末期からは彼の死が
不明なほどに内情は混乱し、新バビロニア王国とメディア王国の
攻撃を受け、数十年後にはアッシリアは滅亡する。
歴史の変遷の流れの中に、アッシリアの王政、行政と行政州、
法制、外交、交易、軍事、水利事業、建築、文化、
信仰と儀礼などが簡潔に分かり易く説明されてもいます。
更にアッシリアの発掘や滅亡後までが書かれているのも良い。
しかしまだ、アッシュル市など、未発掘な場所があること。
これからも多くの発見があるかもしれません。
願わくば、古代から戦乱に巻き込まれてきた地に平穏が
訪れて、発掘調査ができますように。
Posted by ブクログ
紀元前2000年に誕生した小さな都市国家がバビロニアなどの他国に隷従しつつ、先進文明を学び、シャルマネセル3世やサルゴン2世らの治世で勢力を拡大。世界帝国となるが、急速に衰微し、前609年に瓦解する。
最近はメソポタミアの国々の歴史の本が割と出版されていて嬉しい。ただ地域が安定せずに発掘が進まなかったり、略奪されたりするのが悲しい。もっと色んな事がわかるようになれば良いのに。